◆ ◆ ◆
「……え?」
次の日の朝、目が覚めて、俺は固まった。
ベッドの上で、壁のほうを向いて寝てると思ったら、そこには瑛二の背中があった。
思わず、寝起きの頭で困惑する。
だって、千早の布団、瑛二の布団、俺のベッドって順番で寝たのに、どうして、俺のベッドの上で壁のほうに詰まるように瑛二が寝てるのか。
しかも俺の手、瑛二の身体の上を通って、瑛二のお腹の方で上から握られてる。
「ん……? 虎太郎、起きた?」
――しかも起きてんのかよ……!
「……なあ、なんで、俺たちこうなってんの?」
千早がまだ寝てるっぽいから、小さな声で尋ねてみる。
「夜にトイレに案内してもらおうと思って、起こしたら、最終的に虎太郎に壁際に詰められたんだよ」
「え、これ、俺が寝ぼけてやったの?」
「そうだよ、俺が寝てる虎太郎の上を越えて、ここに挟まるのは無理でしょ?」
「たしかに」
人にスキンシップがどうのこうのって言って、ぜんぜん人のこと言えないじゃん、俺。
「……んん、瑛二―」
どんなタイミングで起きてくんだか、千早が後ろで目を覚ました。
「……瑛二? あれ? 瑛二?」
バンバンと自分の隣の布団を叩いて手探りで瑛二を探している音がする。
「まずい……、千早が探してる……! 絶対、これ知ったらあいつ怒るから、瑛二、ちょっと静かにしてろ……」
「分かった……」
「いや、手は離せって……!」
わちゃわちゃしながら、解放された俺はベッドからゆっくり降りて、瑛二を起き上がらせた。それから、その手を引き、扉を開ける。
「母さん! ちょっと……」
階段の上から母親を呼び、そこまで言って考える。
ここで、瑛二のこと助けてもらえる? とかお願いしたら瑛二は嫌な気するか?
「なあに? どうしたの?」
階段下から母親の声がする。
「母さん、ちょっとさ、瑛二のこと、甘やかしてもらっていい?」
寝起きから数分後の頭で考えた結論がこれだった。
「分かった。甘やかしとく」
母さんは嬉しそうに階段を上がってきたけど、瑛二は「そこまで気遣わなくていいのに」と笑っていた。
「千早、お前は俺と身支度すんだよ」
布団の上を一人でごろごろと転がって、瑛二がいないことを徹底的に確認していた千早に俺は声を掛けた。
「ふぇ?」と言われたが、容赦なく、一緒に身支度を整えた。
ぐだぐだだった千早をなんとか動かして、身支度を整えて下に降りると、そこには俺の母親によって、髪をセットされた瑛二がソファに座っていた。
――か、かっこいい……。
思わず、心の中で呟いていたが、現状を理解して、また腹が立ってくる。
陸海空が再び瑛二に密集していたのだ。
「散れ! 瑛二から離れろ!」
乱暴にではなく、あくまでも、優しく退かすという感じで猫を瑛二の周りから排除した。
ふん、という顔をして、瑛二の横に座る。
――あ、れ? 俺、いま、猫に群がられる瑛二に嫉妬したんじゃなくて、瑛二に群がる猫たちに嫉妬した……?
「あらあら」
目の前に座った千早はまだ起ききっていない顔をしていたが、母さんはやんわりとあやしい笑みを浮かべていた。
「……え?」
次の日の朝、目が覚めて、俺は固まった。
ベッドの上で、壁のほうを向いて寝てると思ったら、そこには瑛二の背中があった。
思わず、寝起きの頭で困惑する。
だって、千早の布団、瑛二の布団、俺のベッドって順番で寝たのに、どうして、俺のベッドの上で壁のほうに詰まるように瑛二が寝てるのか。
しかも俺の手、瑛二の身体の上を通って、瑛二のお腹の方で上から握られてる。
「ん……? 虎太郎、起きた?」
――しかも起きてんのかよ……!
「……なあ、なんで、俺たちこうなってんの?」
千早がまだ寝てるっぽいから、小さな声で尋ねてみる。
「夜にトイレに案内してもらおうと思って、起こしたら、最終的に虎太郎に壁際に詰められたんだよ」
「え、これ、俺が寝ぼけてやったの?」
「そうだよ、俺が寝てる虎太郎の上を越えて、ここに挟まるのは無理でしょ?」
「たしかに」
人にスキンシップがどうのこうのって言って、ぜんぜん人のこと言えないじゃん、俺。
「……んん、瑛二―」
どんなタイミングで起きてくんだか、千早が後ろで目を覚ました。
「……瑛二? あれ? 瑛二?」
バンバンと自分の隣の布団を叩いて手探りで瑛二を探している音がする。
「まずい……、千早が探してる……! 絶対、これ知ったらあいつ怒るから、瑛二、ちょっと静かにしてろ……」
「分かった……」
「いや、手は離せって……!」
わちゃわちゃしながら、解放された俺はベッドからゆっくり降りて、瑛二を起き上がらせた。それから、その手を引き、扉を開ける。
「母さん! ちょっと……」
階段の上から母親を呼び、そこまで言って考える。
ここで、瑛二のこと助けてもらえる? とかお願いしたら瑛二は嫌な気するか?
「なあに? どうしたの?」
階段下から母親の声がする。
「母さん、ちょっとさ、瑛二のこと、甘やかしてもらっていい?」
寝起きから数分後の頭で考えた結論がこれだった。
「分かった。甘やかしとく」
母さんは嬉しそうに階段を上がってきたけど、瑛二は「そこまで気遣わなくていいのに」と笑っていた。
「千早、お前は俺と身支度すんだよ」
布団の上を一人でごろごろと転がって、瑛二がいないことを徹底的に確認していた千早に俺は声を掛けた。
「ふぇ?」と言われたが、容赦なく、一緒に身支度を整えた。
ぐだぐだだった千早をなんとか動かして、身支度を整えて下に降りると、そこには俺の母親によって、髪をセットされた瑛二がソファに座っていた。
――か、かっこいい……。
思わず、心の中で呟いていたが、現状を理解して、また腹が立ってくる。
陸海空が再び瑛二に密集していたのだ。
「散れ! 瑛二から離れろ!」
乱暴にではなく、あくまでも、優しく退かすという感じで猫を瑛二の周りから排除した。
ふん、という顔をして、瑛二の横に座る。
――あ、れ? 俺、いま、猫に群がられる瑛二に嫉妬したんじゃなくて、瑛二に群がる猫たちに嫉妬した……?
「あらあら」
目の前に座った千早はまだ起ききっていない顔をしていたが、母さんはやんわりとあやしい笑みを浮かべていた。