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 俺たちは祭りが終わる前に家に帰ってきた。
 帰りは行きとは違い、俺を真ん中にして、両側とも上機嫌だったから良かったと思う。
 それと水族館のチケットは「虎太郎が預かってて」と瑛二が言うので、仕方なく財布に仕舞った。

「なあ、千早も瑛二の按摩、実習で受けるんだよな? なんか、その……」
「なに?」

 瑛二が風呂に入っている間に風呂から近いリビングで千早と二人くつろいでいるときだった。
 スマホを見ている千早に話し掛けると怪訝そうな顔をされた。
 俺が言いづらくてもごもごしてるからだと思う。

「だから、なに?」

 トントンとソファに座った膝を叩かれる。

「瑛二にやられて、なんかへんな感じにならなかったか? こう、下半身が……」

 申し訳ないが、これ以上は言えない。
 だが、千早はこれだけですべて分かったようだ。

「あははっ、え、それ、わざとだよ?」

 千早がきゃっきゃと笑う。

「は?」
「授業でやったけど、なんだろ、余談だけど、みたいなので先生がそういうツボ紹介してた」

 笑ったままで面白おかしそうに千早が言った。

「虎太郎、やられたの? まじうけるんだけど」

 ツボってしまったみたいで千早の笑いが止まらない。
 くそう、という気持ちがわき上がってくる。

「お風呂ありがとう、なに千早そんなに笑ってるの?」

 まるで千早の笑い声を頼りにして帰ってきたみたいに、ちょうど瑛二がリビングに戻ってきた。

「瑛二、ちょっとこっち来て、座れ」
「うん、なに?」

 俺は瑛二の手を引いて、カーペットの上に腰を下ろした。
 千早もそばに寄ってくる。

 それから

「いてっ! いててててっ! え? え、なに? 痛っ!」

 勢い良く、瑛二の足の裏のツボを押してやった。
 それはぐりぐり、ぐりぐりと。

「虎太郎、按摩で瑛二にへんなツボ押されて、下半身がね……」
「いや、虎太郎、誤解だって」
「おい、千早バラすな! お前もやるか?」

 恥ずかしいことをバラされて、今度は千早のほうに手を伸ばす俺。

「え、やだやだ、こっち来ないで。瑛二、虎太郎の足だよ!」

 しかし、結託した二人は強かった。

「痛っ! いててっ! おい! そっち、二人はずるいだろ? いてててっ!」

 そんなこんなで騒がしい夜は更けていった。