「あ……」

 三人で人混みの中をなんとか一緒に歩いていたら、突然、千早の声がした。 
 横を見てみたら、千早の肩を掴んでいたはずの瑛二の姿がない。

 後ろに向かって、一人だけ人の群れに流されていったみたいだ。

「瑛二!」

 さすがに呼ばないわけにはいかなくて、俺は必死に瑛二の名前を呼ぶ。
 でも、周りの人も下駄とかで背が高くなってて、人より出てるはずの瑛二を見つけることが出来なかった。
 ざわざわとしていて、盆踊りの音楽も相まり、まったく声も届かない。

 とりあえず、千早まではぐれてしまうのはまずいので、まずはどうにか一旦人混みから離れて整えたかった。

「ここなら、まだ人少ないな」

 公園の遊具の裏辺りが祭りの屋台も何もなくて人が少ない。
 そこで千早と現状の確認をしようと思ったのだが、俺より先に千早が口を開いた。

「僕、足手纏いになるから、ここに置いていっていいよ」

 諦めみたいな声だ。

「バカか、置いていけるわけねぇだろ! 足手纏いになんかならねぇっての! お前がいないとダメなんだよ、一緒に来てくれ!」

 なんつーこと言うんだ、と思って、俺は少し厳しく言ってしまった。
 なのに、千早は嫌そうな顔をせず、むしろ、なんか照れたような顔をした。

「いま、ちょっとキュンとした。瑛二が虎太郎のこと好きになったの少し分かった気がする」
「なに言ってんだ? 早く手握れ」

 言ってることはよく分からなかったが、俺がそう言いながら手を握ると「うん」と言って千早も握り返してきた。
 ここから、外の人通りが少ないところを回りながら遠巻きからまずは探していきたいと思う。

「瑛二なら、どうすっかな?」
「無駄に動かないか、人に助けを求めるかすると思うけど」

 歩きながら千早と作戦会議をする。
 案内所とかはたぶん意味ねぇよなぁ。

 悩みながら歩いてみたがなかなか瑛二は見つからない。
 焦りがピークに達したときだった。

『夏男コンテスト、エントリーナンバー7番、西 瑛二さん』

 微かにどこからかアナウンスみたいなのが聞こえてきた。

「いま、西 瑛二さんって言ったよね?」
「これ、どこでなにやってんだ?」

 どうやら、どこかにステージを設置してコンテストをやっているようだ。
 だが、広すぎて分からない。

「案内の人にどこでやってるのか聞いてみよう?」

 千早に言われて、案内の腕章をつけてる人を見つけた。
 その後ろのスピーカーから音声が聞こえ続けている。

『こんばんは、爽やかでかっこいいですね。観客席のみなさん手を振られています』
『ありがとうございます』

 瑛二の声がした。

「なにしてんだ、あいつ。じゃなくて、ちょっとすみません、えっと……」

 案内のおじさんを前にして、急に人見知りが出てしまう俺。
 しっかりしろ……!

 そう思っていたら