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『夏祭り&お泊まり会のご案内 8月30日 夕方4時佐藤家集合 浴衣とサンダルのレンタルあり 【持ちもの】いつも使ってる日用品、寝間着、千早、その他必要なもの』

 人間的なメッセージを送るのはなんだか気が引けて、こんなご連絡をした。
 返事がなくて、既読無視だったから、来ないと思ったけど、時間前に瑛二は千早を連れて家にやってきた。

 いくらやる気満々といったって、母さんはちゃんとレンタルで浴衣も借りてくれてたし、千早が増えてもすぐ対応して、行動力がすごいと思った。
 着付けもできて、これほど心強いと思ったことはない。

 ただし、一言目のタイミングを見誤ったことによって、俺は瑛二に話し掛けられなかった。
 本当に気まずい。
 瑛二も千早とばかり話していて、俺たちの言葉のボールはどこかに転がっていってしまった。

 なんでこういうときって、素直に謝れないんだろう……。

「まあ、可愛い~、うちの子にしたいくらい」

 俺と瑛二が一言も会話を交わさない間に、千早は着付けを終えて、俺の母親にスマホで写真を撮ってもらっていた。

「ママさん、ごめんなさい。僕には将来、王子様と一緒に暮らすっていう夢があるので」

 キラキラした顔で千早が言う。
 水色の明るめな浴衣がまあ似合っていると思う。
 少し女性物のような気がするが、千早はそれでいいのだろうか。

「あら、残念。でも、いいわねぇ。とっても可愛い!」
「ありがとうございます」

 千早は可愛いと言われることに慣れてるのか、いや、そもそも言われることを喜んでるのか、嬉しそうに一周回ってみせた。
 やっぱり、俺にはその気持ちが分からない。

「さ、あとの二人も浴衣、着てもらうわよ?」

 気持ちが分からないまま、俺たちの夏祭りが始まろうとしていた。