気付いたら夏休みに突入していた。
 美香と日和はいつのまにか彼氏を作っており、夏休み中はデートをしまくるらしい。
 龍生なら少しは遊んでくれるだろうと思っていたが、「バイト」の一言で終わった。
 まあ、二人切りになっても気まずいんだが、藤白は塾だった。

 数日間、じいちゃんばあちゃんの家には行ったけど、そもそも近くに住んでるからそこまで特別感があるわけでもなく。
 夏休みじゃなくても、いつでも行けるわけで、「可愛い可愛い」言われて帰ってきた。

 家族で旅行とかは父親の仕事が休めないので数年前からほぼない。
 ただ、別に行けなくても「嫌だぁああ! どっか行くのぉぉ!」とか泣いてた幼少期とは違い、まあいいかと思うようになった。

 そして、夏休みの課題は先にやる派で、黙々、黙々やっていたら、夏休みももう半ばという状態になっていた。

 それで……、瑛二はといえば、夏休みの間、ずっとサッカーの練習でもしているのか連絡が来ない。
 瑛二自身が将来パラリンピックを目指しているのかは知らないが、邪魔するわけにもいかねぇし、俺からは連絡しないことにした。

 別に連絡しなくてもお友達の関係が切れたわけでもねぇし、龍生に言ったら「惚気か?」とか嫌な顔されたけど、最近、スキンシップが多くて困ってたし、まあ、この距離感がいいのかもな。

 ――やっぱ好きなやつには触りたくなるもんなのか……?

 課題のノートにシャーペンを走らせていた手を止めて、まじまじと見てみる。

「ちっさ……」

 無意識に死んだ目でぼやいた。
 瑛二の手とは第一関節以上、サイズが違う。

 ――俺、三年になっても、身長伸びねぇのかなぁ……。

 絶望しながら、机に突っ伏したときだった。

 スポンッとスマホにメッセージが届く音が聞こえた。

 突っ伏したまま手探りで机の上のスマホを探し、顔を横にして、画面を確認する。

『買い物行かない?』

 久しぶりの瑛二からのメッセージだった。
 つか、電話じゃねぇの珍しい。
 このままいったら、瑛二の声忘れちまったりしてー、なんて……。
 別に聞きたいとか思ってねぇけど。

『別にいいけど、いつ? どこ行くの?』

 机にぺたりとついたままで返信を返す。

『空いてたら明日午前十時、ファッションストリートに行ってみたい。人が多いところだから、一緒に行ってほしい』

 やっぱりメッセージでくるんだよな。

 たしかにあそこは人が多いし、周り見えてねぇ若いやつもたくさんいるし、店も種類があって、瑛二が一人で行くには面倒くさい場所かもしれない。

 あと、関係ないけど、いま思えばファッションストリートってダサい名前なのに、昔からずっと若いやつに人気なのすごいな。

『分かった。瑛二んとこの駅集合な』
『ありがとう』

 軽く返事を返して、瑛二からのメッセージを受信して、スマホはまた静かになった。
 
「ファッションストリートでなに買うんだろ……」

 伏せたままつぶやいて、回そうとして失敗したシャーペンがどこかに飛んでいった。