「隣、座ったけど?」
人が間に一人座れるくらいのスペースを空けて、ベッドに腰掛けると俺は瑛二に尋ねた。
視線が合うことはないが、瑛二が瞼を上げて、俺のほうを見る。
いつ見ても透明感のある綺麗な瞳だ。
「うん、その……、虎太郎に按摩実習の練習手伝ってもらいたいんだけど」
ぼそりとはじまってから、後になるにつれてはっきりとした声になる。
「あんま?」
生まれてこの方、そんな単語は聞いたことがなかった。
まったくの未知の存在に思わず、困惑する。
「そう、まあ、マッサージみたいなので、将来の仕事的にそういうのがあってね、俺たちの学校では実習授業があるんだ」
「へぇ」
説明されてもぱっとイメージ出来ないが、マッサージと言われるとなんだか気持ち良さそうな感じがした。
「ほら、虎太郎、昔、サッカー続けられないようなケガしたって言ってたし、ちょうどいいかなって」
――いや、それは……。
そう思ったが、いまさら恥ずかしい過去の理由は言えない。
へんに黙ってしまう。
「父さんにはもう練習台になってもらったし、実習の相手は千早だし、あと頼めるのは虎太郎しかいなくて、俺上達したいんだよね、頼めないかな?」
困ったような顔をされて、瑛二に子犬感を感じてしまった。
おかしい、犬耳が見える気がする。
「別に、いいけど」
気付いたら、そう答えていた。
イケメンの力、恐ろしい。
「ありがとう。怪我したのはどこ?」
「え? えーと、右の、太もも?」
怪我なんか実際にはしてないから、曖昧な感じで適当に答えてしまった。
足とかサッカー選手が一番致命的そうな部位だろ?
「分かった。最初は上からやっていくからね、まずはうつ伏せになってくれる?」
「おう」
嬉しそうな瑛二の指示に従って、俺は素直にベッドにうつ伏せになった。
――あ、香水の匂い、薄まってる……。
ベッドにうつ伏せになると明莉さんの香水の香りが微かに残っていたが、たしかに消えかかっているのが分かった。
「香水……」
「うん、捨てたんだ」
顔を上げて小さくつぶやくと、ベッドが軋んで、瑛二が俺の横に膝を着いてこちらを見下ろす形になっていた。
人が間に一人座れるくらいのスペースを空けて、ベッドに腰掛けると俺は瑛二に尋ねた。
視線が合うことはないが、瑛二が瞼を上げて、俺のほうを見る。
いつ見ても透明感のある綺麗な瞳だ。
「うん、その……、虎太郎に按摩実習の練習手伝ってもらいたいんだけど」
ぼそりとはじまってから、後になるにつれてはっきりとした声になる。
「あんま?」
生まれてこの方、そんな単語は聞いたことがなかった。
まったくの未知の存在に思わず、困惑する。
「そう、まあ、マッサージみたいなので、将来の仕事的にそういうのがあってね、俺たちの学校では実習授業があるんだ」
「へぇ」
説明されてもぱっとイメージ出来ないが、マッサージと言われるとなんだか気持ち良さそうな感じがした。
「ほら、虎太郎、昔、サッカー続けられないようなケガしたって言ってたし、ちょうどいいかなって」
――いや、それは……。
そう思ったが、いまさら恥ずかしい過去の理由は言えない。
へんに黙ってしまう。
「父さんにはもう練習台になってもらったし、実習の相手は千早だし、あと頼めるのは虎太郎しかいなくて、俺上達したいんだよね、頼めないかな?」
困ったような顔をされて、瑛二に子犬感を感じてしまった。
おかしい、犬耳が見える気がする。
「別に、いいけど」
気付いたら、そう答えていた。
イケメンの力、恐ろしい。
「ありがとう。怪我したのはどこ?」
「え? えーと、右の、太もも?」
怪我なんか実際にはしてないから、曖昧な感じで適当に答えてしまった。
足とかサッカー選手が一番致命的そうな部位だろ?
「分かった。最初は上からやっていくからね、まずはうつ伏せになってくれる?」
「おう」
嬉しそうな瑛二の指示に従って、俺は素直にベッドにうつ伏せになった。
――あ、香水の匂い、薄まってる……。
ベッドにうつ伏せになると明莉さんの香水の香りが微かに残っていたが、たしかに消えかかっているのが分かった。
「香水……」
「うん、捨てたんだ」
顔を上げて小さくつぶやくと、ベッドが軋んで、瑛二が俺の横に膝を着いてこちらを見下ろす形になっていた。