「それでね? 監督が……」
今日の試合のことを話しながら、俺の前を歩く瑛二と明莉さん。
そう、さきほど心配して声を掛けてきてくれた人こそが瑛二の元カノであったのである。
――え? 別れてんだよな? この二人。
一人、一歩後ろを歩きながら、瑛二と明莉さんを交互に見て考える。
後ろから見たら、いまでも仲が良さそうに見えるんだが、瑛二は振られたんじゃないのか?
最近まで、失恋の傷抱えてたんじゃ……。
どうしてこうなったのか、それは、体験を終えて、シャワー室に寄って、さて、どこかに二人で昼飯でも食いにいくかってセンターから出ようとしたときに明莉さんに呼び止められて、三人でご飯行かない? って言われて……。
「ごめんね虎太郎くん後ろ一人で、瑛二くんのサポートしたくて」
ちらっと後ろを振り返って明莉さんが申し訳なさそうに言う。
基本明るくて、良い人そうだ。
「ぜんぜんいいっすけど」
瑛二もあっさりオーケーしたし、俺も別にいっかとも思ったし、一人で歩くくらいなんともない。
ただし、二人の関係が気になる。
ついついチラチラと見てしまう。
「回転寿司にしよ? 私、今日、ご馳走するから」
駅前の大手回転寿司チェーン店の前で明莉さんがパッと目を輝かせて、扉を開けた。
昼の時間と少しずれていたからか、待たずに席に案内され、テーブル席のレーン側に俺と明莉さんが座って、明莉さんの隣に瑛二が座った。
なんで瑛二、そんなに複雑そうな顔してんだ? と思ったが、ご馳走してもらえるなら俺は嬉しく思う。
「あんまり高いのはダメだからね?」
なんて冗談めかした感じで言って、明莉さんがレーンから皿を取る。
イクラ軍艦だ。
「はい、これ瑛二くん好きでしょ?」
自分のかと思ったら瑛二に取ってやったもので、そのあとも瑛二のために何皿も取ってやっていた。
その間、瑛二は礼だけ言ってあとは一言もしゃべらず、黙々とその取ってもらった寿司を食べていた。
なんか違和感を感じるが、なんだ?
疑問に思いながらも俺もいろいろと皿を取って寿司を口に運ぶ。
「瑛二くんはね、あのチームに小学校低学年のときからいるんだよ? いまはこんなに大きくなったけど、最初は誰よりも身長低かったんだよね?」
「うん」
寿司を食いながら、俺に思い出話をしてくれる明莉さん。
瑛二はそれに静かに相づちを打って……。
「瑛二くん、私と二人で自転車乗ったことあるよね? 二人乗りのやつ。で、途中でブレーキが壊れちゃって、転んで、瑛二くんのほうが血出てるのに私のことばっかり心配してくれて……」
明莉さんの声が次第に遠くなる。
――なんだ、それ、俺の知らない話だ。幼なじみってやつ?
最初はへぇと思って聞いていたが、だんだん面白くなくなってきた。
俺と瑛二はお友達だけど、なんか、つまらない。
「ご馳走様でした」
店を出て、俺はすぐに明莉さんにお礼を言った。
外のぬるい空気に包まれる。
「明莉さん、ありがとう」
瑛二もお礼を言ったが、やっぱり、なんか静かだ。
「いーえ。瑛二くん、まっすぐ帰るよね? 私、寄るところがあるから」
明莉さんが明るく言って、じゃあ、俺は瑛二と電車で途中まで帰るか、と思ったのに、突然、すっと横から明莉さんの手が出てきた。
そこにはスマホがあって
『少し大事な話をしたいから一緒に来て』
画面にそう表示されていた。
大事、と言われると緊張しながらも断るわけにいかない。
わざわざスマホで見せてきたってことは、これは瑛二にバレてはいけないんだよな?
「俺も帰りに寄りたいとこあったんだ。だから、瑛二、じゃあな」
「そう、分かった」
できるだけ平常心を装って、俺が言うと、瑛二は静かなままであっさりと駅に向かっていった。その後ろ姿を確認して明莉さんが小さく「行こう」と言った。
今日の試合のことを話しながら、俺の前を歩く瑛二と明莉さん。
そう、さきほど心配して声を掛けてきてくれた人こそが瑛二の元カノであったのである。
――え? 別れてんだよな? この二人。
一人、一歩後ろを歩きながら、瑛二と明莉さんを交互に見て考える。
後ろから見たら、いまでも仲が良さそうに見えるんだが、瑛二は振られたんじゃないのか?
最近まで、失恋の傷抱えてたんじゃ……。
どうしてこうなったのか、それは、体験を終えて、シャワー室に寄って、さて、どこかに二人で昼飯でも食いにいくかってセンターから出ようとしたときに明莉さんに呼び止められて、三人でご飯行かない? って言われて……。
「ごめんね虎太郎くん後ろ一人で、瑛二くんのサポートしたくて」
ちらっと後ろを振り返って明莉さんが申し訳なさそうに言う。
基本明るくて、良い人そうだ。
「ぜんぜんいいっすけど」
瑛二もあっさりオーケーしたし、俺も別にいっかとも思ったし、一人で歩くくらいなんともない。
ただし、二人の関係が気になる。
ついついチラチラと見てしまう。
「回転寿司にしよ? 私、今日、ご馳走するから」
駅前の大手回転寿司チェーン店の前で明莉さんがパッと目を輝かせて、扉を開けた。
昼の時間と少しずれていたからか、待たずに席に案内され、テーブル席のレーン側に俺と明莉さんが座って、明莉さんの隣に瑛二が座った。
なんで瑛二、そんなに複雑そうな顔してんだ? と思ったが、ご馳走してもらえるなら俺は嬉しく思う。
「あんまり高いのはダメだからね?」
なんて冗談めかした感じで言って、明莉さんがレーンから皿を取る。
イクラ軍艦だ。
「はい、これ瑛二くん好きでしょ?」
自分のかと思ったら瑛二に取ってやったもので、そのあとも瑛二のために何皿も取ってやっていた。
その間、瑛二は礼だけ言ってあとは一言もしゃべらず、黙々とその取ってもらった寿司を食べていた。
なんか違和感を感じるが、なんだ?
疑問に思いながらも俺もいろいろと皿を取って寿司を口に運ぶ。
「瑛二くんはね、あのチームに小学校低学年のときからいるんだよ? いまはこんなに大きくなったけど、最初は誰よりも身長低かったんだよね?」
「うん」
寿司を食いながら、俺に思い出話をしてくれる明莉さん。
瑛二はそれに静かに相づちを打って……。
「瑛二くん、私と二人で自転車乗ったことあるよね? 二人乗りのやつ。で、途中でブレーキが壊れちゃって、転んで、瑛二くんのほうが血出てるのに私のことばっかり心配してくれて……」
明莉さんの声が次第に遠くなる。
――なんだ、それ、俺の知らない話だ。幼なじみってやつ?
最初はへぇと思って聞いていたが、だんだん面白くなくなってきた。
俺と瑛二はお友達だけど、なんか、つまらない。
「ご馳走様でした」
店を出て、俺はすぐに明莉さんにお礼を言った。
外のぬるい空気に包まれる。
「明莉さん、ありがとう」
瑛二もお礼を言ったが、やっぱり、なんか静かだ。
「いーえ。瑛二くん、まっすぐ帰るよね? 私、寄るところがあるから」
明莉さんが明るく言って、じゃあ、俺は瑛二と電車で途中まで帰るか、と思ったのに、突然、すっと横から明莉さんの手が出てきた。
そこにはスマホがあって
『少し大事な話をしたいから一緒に来て』
画面にそう表示されていた。
大事、と言われると緊張しながらも断るわけにいかない。
わざわざスマホで見せてきたってことは、これは瑛二にバレてはいけないんだよな?
「俺も帰りに寄りたいとこあったんだ。だから、瑛二、じゃあな」
「そう、分かった」
できるだけ平常心を装って、俺が言うと、瑛二は静かなままであっさりと駅に向かっていった。その後ろ姿を確認して明莉さんが小さく「行こう」と言った。