「……っ、にしても、千早も暇だよな。いちいち瑛二の応援なんて来ちゃってさ」

 なんとなくばつが悪くて、誤魔化しながら俺は笑った。
 どうせ、この感じだと来れるときはいつも来てるんだろう。

「あのさあ」

 千早のその声は怒りを含んでいた。
 ぷくっと膨らんだ頬がその感情をたしかなものにする。

「僕、瑛二のこと好きって言ったじゃん。侮らないでよ? 僕は瑛二が虎太郎のこと見向きもしなくなるチャンス、狙ってるんだからね?」

 口を強く結んで、間近に千早の顔が俺に迫った。
 睨まれている。

「はっ、俺は別に瑛二が誰かのほうに行ったって気にしたりしねぇから」

 そんな怒なよ、というふうに笑いを含んだ声で言ってやる。
 千早はそれでも納得していないようだった。

 そもそも、俺と瑛二はお友達なわけだし。
 それ以上はねぇの。俺は自分が揶揄われなきゃ、それでいい。
 ほんと、千早はなに言ってんだか。

 俺が千早の隣で肩をすくめたときだった。

 ピーッ!

 試合終了のホイッスルが鳴り、瑛二のいるチームの勝利で幕が下りた。