午前十一時、強い陽射しの下で見にくいスマホの画面に視線を落とす。
『なあ、日曜なにがあんだよ?』
俺が送ったメッセージの横に表示された『既読』の文字。
だがその下に続く返事はない。
――瑛二のやつ、一丁前に既読無視かよ。
ムカッとしながらも再び歩き出す。
それと同時に、ほんと俺もどうかしてるよな、と思った。
いくら瑛二に言われたからといって、行かない、という選択肢もあった。
それなのに、俺はわざわざ休日に電車まで乗って、ここに来た。
室香の総合センター……。
貸し教室とか、体育館、グラウンド、公園、いろいろな施設が一つになった場所で、文化、スポーツ、を積極的にサポートする場である。
『着いたんだけど?』
センターに入って、施設のサポート窓口の前で俺は瑛二にメッセージを送った。
呼んだからにはすぐに返事が来るだろう、と思ったが既読すらつかない。
しばらく待ってもつかない。
「あいつぅ……」
思わず、憎しみを込めてつぶやいた。
――呼んでおいて放置ってどういうことだよ?
わざわざ来たのだからこのまま帰るのもムシャクシャする。
俺は窓口を通り過ぎて、グラウンドに出た。
広いグラウンドはいくつかの区分で分けられていて、陸上競技をするためのトラック、野球をするための球場、テニスコート、そして、緑の芝が目立つサッカー場。
「あ……」
サッカー場を見た瞬間、俺はある一点に視線を奪われた。
この前、室香駅に居た理由ってこれだったのか……。
陽に焼けても赤くなるだけなのか、肌が白いから、ぜんぜんスポーツとかやってるイメージがなかった。
俺の視線の先、青色のユニフォームを着て、アイマスクと頭にサポーターを着けた瑛二がピッチ内を駆けていた。
ピッチの両サイドに立てられたフェンス、そこにぶつかったサッカーのボールより少し小さいボールを上手く足で拾って、ゴールのほうに向かっていく。
そういう掛け声をかけるのがルールなのか、「ボイ!」と言って近付いてくる敵選手。
「瑛二!! 頑張れ!!」
恨み辛みなんて、どっかに吹っ飛んでいて、気付いたら、俺は叫んでいた。
見ている観客はみんな静かで俺の声だけが響く。
バシュッという音と共に相手のゴールに勢い良く収まるボール。
一斉に歓声が周りから上がった。
「すげぇ……」
人って、視覚使わずにあんなに動けるのかよ……。
そう思って呆然としていると、誰かが俺の隣に立った気配がした。
「こらっ虎太郎、試合中はゴールが決まるまで観客は声出しちゃいけないんだよ? 監督とかガイドの声、それとボールのシャカシャカ音が聞こえなくなっちゃうから」
「千早」
注意されてそこではじめて、隣に立ったのが千早だと気付いた。
スマホを構えて、カメラ機能で拡大して試合を見ているようだ。
「ガイドって?」
「相手のゴールの後ろから目が見えてる人が指示出してるんだよ」
少し面倒くさそうにしながらも教えてくれる千早。
俺は視線を相手側のゴールに向けた。
なるほど、じゃあ、相手側のゴール裏にいるあの若い男の人が瑛二側のガイドってことか。
それにしたって、瑛二のあれは全部が見えてるみたいな動きだった。
「瑛二、試合戻れー!」
その声にハッとなる。
監督っぽい男の人の声だ。
瑛二がそう注意された理由、それは……見えていないだろうに「虎太郎!」って俺のほうに手を振っていたから。
「瑛二! 戻れ!」
もう一度、注意されて、ようやく瑛二が前を向く。
――ほんと、あいつ、俺の声、すぐ分かるよな……。
思わず、ふっと笑ってしまった。そんな俺の横で
「瑛二、なんで虎太郎が絡むとIQ下がるんだろう? 明莉《あかり》さんと付き合ってるときはもっと落ち着いてたよ?」
スマホの画面を間近で見つめながら、はぁ……と溜息を吐いて千早が呆れたように言う。
「明莉さんって……」
「大学生のお姉さん」
俺が頭の中で考えながら口にすると、千早がにやっと笑ってこっちを見た。
『なあ、日曜なにがあんだよ?』
俺が送ったメッセージの横に表示された『既読』の文字。
だがその下に続く返事はない。
――瑛二のやつ、一丁前に既読無視かよ。
ムカッとしながらも再び歩き出す。
それと同時に、ほんと俺もどうかしてるよな、と思った。
いくら瑛二に言われたからといって、行かない、という選択肢もあった。
それなのに、俺はわざわざ休日に電車まで乗って、ここに来た。
室香の総合センター……。
貸し教室とか、体育館、グラウンド、公園、いろいろな施設が一つになった場所で、文化、スポーツ、を積極的にサポートする場である。
『着いたんだけど?』
センターに入って、施設のサポート窓口の前で俺は瑛二にメッセージを送った。
呼んだからにはすぐに返事が来るだろう、と思ったが既読すらつかない。
しばらく待ってもつかない。
「あいつぅ……」
思わず、憎しみを込めてつぶやいた。
――呼んでおいて放置ってどういうことだよ?
わざわざ来たのだからこのまま帰るのもムシャクシャする。
俺は窓口を通り過ぎて、グラウンドに出た。
広いグラウンドはいくつかの区分で分けられていて、陸上競技をするためのトラック、野球をするための球場、テニスコート、そして、緑の芝が目立つサッカー場。
「あ……」
サッカー場を見た瞬間、俺はある一点に視線を奪われた。
この前、室香駅に居た理由ってこれだったのか……。
陽に焼けても赤くなるだけなのか、肌が白いから、ぜんぜんスポーツとかやってるイメージがなかった。
俺の視線の先、青色のユニフォームを着て、アイマスクと頭にサポーターを着けた瑛二がピッチ内を駆けていた。
ピッチの両サイドに立てられたフェンス、そこにぶつかったサッカーのボールより少し小さいボールを上手く足で拾って、ゴールのほうに向かっていく。
そういう掛け声をかけるのがルールなのか、「ボイ!」と言って近付いてくる敵選手。
「瑛二!! 頑張れ!!」
恨み辛みなんて、どっかに吹っ飛んでいて、気付いたら、俺は叫んでいた。
見ている観客はみんな静かで俺の声だけが響く。
バシュッという音と共に相手のゴールに勢い良く収まるボール。
一斉に歓声が周りから上がった。
「すげぇ……」
人って、視覚使わずにあんなに動けるのかよ……。
そう思って呆然としていると、誰かが俺の隣に立った気配がした。
「こらっ虎太郎、試合中はゴールが決まるまで観客は声出しちゃいけないんだよ? 監督とかガイドの声、それとボールのシャカシャカ音が聞こえなくなっちゃうから」
「千早」
注意されてそこではじめて、隣に立ったのが千早だと気付いた。
スマホを構えて、カメラ機能で拡大して試合を見ているようだ。
「ガイドって?」
「相手のゴールの後ろから目が見えてる人が指示出してるんだよ」
少し面倒くさそうにしながらも教えてくれる千早。
俺は視線を相手側のゴールに向けた。
なるほど、じゃあ、相手側のゴール裏にいるあの若い男の人が瑛二側のガイドってことか。
それにしたって、瑛二のあれは全部が見えてるみたいな動きだった。
「瑛二、試合戻れー!」
その声にハッとなる。
監督っぽい男の人の声だ。
瑛二がそう注意された理由、それは……見えていないだろうに「虎太郎!」って俺のほうに手を振っていたから。
「瑛二! 戻れ!」
もう一度、注意されて、ようやく瑛二が前を向く。
――ほんと、あいつ、俺の声、すぐ分かるよな……。
思わず、ふっと笑ってしまった。そんな俺の横で
「瑛二、なんで虎太郎が絡むとIQ下がるんだろう? 明莉《あかり》さんと付き合ってるときはもっと落ち着いてたよ?」
スマホの画面を間近で見つめながら、はぁ……と溜息を吐いて千早が呆れたように言う。
「明莉さんって……」
「大学生のお姉さん」
俺が頭の中で考えながら口にすると、千早がにやっと笑ってこっちを見た。