◆ ◆ ◆
「へへーん」
夜、風呂から上がった俺は自分の部屋の扉を上機嫌で開けた。
途端に目に付く少し厚みのある白い紙。この前、瑛二にもらった紙だ。
「なに見てんだよ?」
点字に見てるもなにもないんだが、俺は机の上に立て掛けて飾っていた点字の紙をパサリと伏せた。
その瞬間
「わっ」
見てたのかよ? っていうタイミングでスマホが鳴って、ビクッと身体が跳ねた。
画面に表示された『西 瑛二』の文字をジトっと見つめる。
――出るか?
鳴り続ける瑛二からの電話。
――まあ、一応、久しぶりだから出るか。
俺は悩んでからスマホの応答をタップした。
そして、すぐにこちらから口を開く。
「よ、瑛二」
こっちはいつも通りに出たつもりだった。
調子も声色もいつも通り。
だが、電話の向こうの瑛二は
『虎太郎、なんかご機嫌だね』
と言った。
「へ? 別にそんなことねぇけど?」
もしかして、瑛二は俺の声の些細な違いに気付いてるのか? と心の隅で気にしながら、俺は普通に返答した。いいや、むしろ、ちょっと落ち着いた感じで言えた気がする。
それなのに
『好きな子でもできた?』
瑛二はあっさり正解を導き出した。
いや、正確には【気になってる子】だけど。
「んなわけねぇだろ? ――はっ、なに? 瑛二はどうした? 久しぶりに俺の声が聞きたくなったとか?」
ここのところ瑛二は忙しかったのか、電話がなかった。
だから、俺は誤魔化すようにふざけてそんなことを言った。
『そうだよ、好きだから』
心の準備をする前に、中低音の掠れた声がそう告げる。
「っ……ふざけてないで早く寝ろ! おやすみ!」
ふざけていたのは俺だ。誤魔化すためにふざけて言ったのに、やけに真っ直ぐな声で言われて、思わず、逃げたくなった。
秒で電話を切って
「ぬあっ」
訳分かんねぇ声を出しながらベッドにダイブする。
俺、別に悪いことしてるわけじゃねぇよな?
藤白のことは気になってるけど、瑛二に正直に話す義務もとやかく言われる筋合いもない。
でも
「なんなんだよ、この罪悪感……」
俺の嘆きは枕に虚しく吸収されていった。
「へへーん」
夜、風呂から上がった俺は自分の部屋の扉を上機嫌で開けた。
途端に目に付く少し厚みのある白い紙。この前、瑛二にもらった紙だ。
「なに見てんだよ?」
点字に見てるもなにもないんだが、俺は机の上に立て掛けて飾っていた点字の紙をパサリと伏せた。
その瞬間
「わっ」
見てたのかよ? っていうタイミングでスマホが鳴って、ビクッと身体が跳ねた。
画面に表示された『西 瑛二』の文字をジトっと見つめる。
――出るか?
鳴り続ける瑛二からの電話。
――まあ、一応、久しぶりだから出るか。
俺は悩んでからスマホの応答をタップした。
そして、すぐにこちらから口を開く。
「よ、瑛二」
こっちはいつも通りに出たつもりだった。
調子も声色もいつも通り。
だが、電話の向こうの瑛二は
『虎太郎、なんかご機嫌だね』
と言った。
「へ? 別にそんなことねぇけど?」
もしかして、瑛二は俺の声の些細な違いに気付いてるのか? と心の隅で気にしながら、俺は普通に返答した。いいや、むしろ、ちょっと落ち着いた感じで言えた気がする。
それなのに
『好きな子でもできた?』
瑛二はあっさり正解を導き出した。
いや、正確には【気になってる子】だけど。
「んなわけねぇだろ? ――はっ、なに? 瑛二はどうした? 久しぶりに俺の声が聞きたくなったとか?」
ここのところ瑛二は忙しかったのか、電話がなかった。
だから、俺は誤魔化すようにふざけてそんなことを言った。
『そうだよ、好きだから』
心の準備をする前に、中低音の掠れた声がそう告げる。
「っ……ふざけてないで早く寝ろ! おやすみ!」
ふざけていたのは俺だ。誤魔化すためにふざけて言ったのに、やけに真っ直ぐな声で言われて、思わず、逃げたくなった。
秒で電話を切って
「ぬあっ」
訳分かんねぇ声を出しながらベッドにダイブする。
俺、別に悪いことしてるわけじゃねぇよな?
藤白のことは気になってるけど、瑛二に正直に話す義務もとやかく言われる筋合いもない。
でも
「なんなんだよ、この罪悪感……」
俺の嘆きは枕に虚しく吸収されていった。