◆ ◆ ◆
同じ日の放課後のことだ。
「なんで、俺、お前らの買い物に付き合わされてんの?」
美香と日和に連れられて、同い年くらいのやつらで賑わうファッションストリートなる場所に連れて来られていた。ファッションストリートで言い方合ってるか分かんねぇけど、すげぇ服飾屋が軒を連ねてる。
「だって、今日も龍生バイトなんだもん」
「最近バイト多いよねー」
前を歩く二人がこちらを振り返りながら言う。
あいつも暇だったら付き合わされてたってことか。
「理由になってねぇし」
ぼそりと呟きながら、二人の後を追っているときだった。
「やめてください!」
大通りを逸れた細めの路地で三人のヤンキーに絡まれてる制服姿の女子を発見した。
――あれって、俺らのクラスの藤白じゃ?
「コタ、クレープ食べようよ」
「虎太郎、どうしたの?」
足を止めた俺の後ろから美香と日和が覗き込む。
「え、藤白ちゃんじゃん、どうしよ」
「うちらじゃ無理だよね? 警察?」
藤白の存在に気付いて、二人は焦ったように顔を見合わせた。
「やめて! 触らないで!」
「おうおう、可愛いじゃん」
二人掛かりで藤白の両腕を掴んだところを見て
「ちょっと行ってくる」
俺は足を踏み出した。
「え、コタ?」
「虎太郎?」
後ろから美香と日和の心配するような声が聞こえたが、止まる気はない。
「おい、そいつ離せよ!」
ふん、と気合いを入れて、俺はヤンキー三人組に大きな声で言った。
「んだよ! お前!」
まず、藤白の左腕を掴んでる金髪のヤンキーが叫び
「こいつの知り合いかよ?」
右腕を掴んでる黒髪のやつが顎で藤白を差す。
それから、俺の目の前に長身の赤髪のヤンキーが立った。
「へぇ、お前、男なのに可愛いじゃん。一緒に来いよ」
顔がよく見えるように顎を掴まれて、虫唾が走る。
「触んなよ!」
キッと睨んで、俺は赤髪の手をはたき落とした。
「あ? 調子乗んなよ? こっち来いって!」
イラついた赤髪が俺の右手首を掴む。
――来た……!
「うおっ! 痛でででっ!!」
俺は瞬時に掴まれた手首を翻し、赤髪の腕を捻り上げた。
「おい、てめぇ、なにしてんだよ!?」
「……っ!」
金髪のやつが突っ込んできて、赤髪を盾にしてガードした。
俺の代わりに殴られた赤髪はその場にへたりこみ、金髪はやっちまったみてぇな顔をした。
「も、もう行こうぜ?」
最後に黒髪のやつがビビって、変なステップで走り出し、そのあとを追うように金髪と赤髪が走り去っていった。
「ヤンキー舐めんな!」
根っからのヤンキーに向かってそう言ってしまうほど、実はヤンキーとのケンカに慣れていない俺である。倒すのに使った技は嫌々習得させられた護身術。
小中学生の頃にあまりにも言われ過ぎて「コタくんは小さくて可愛くて危ないから護身術習いましょ」っていう母親の姿がいまでも容易に脳内で再生できる。
ちなみに三人とも俺より身長が高かった。
「コタ、すごいよ!」
「虎太郎、かっこいい! 惚れる~」
後ろからやってきた美香と日和が俺に引っ付く。
だが、俺の視線はそこにじっとしている藤白から外せなかった。
「藤白ちゃん、大丈夫?」
「どっかケガした?」
俺より先に女子二人が声を掛けてくれてよかったかもしれない。
「佐々木さん……、高橋さん……、こわ、こわかった……」
藤白は二人を見て、ボロボロと涙をこぼしはじめた。
どうやらケガはしてないようだが、ぶるぶると震えた指先が助けを求めるように美香と日和に伸ばされる。
「こわかったよね、よしよし」
「もう危ないからさ、とりあえず、一緒に帰ろ」
女子三人でぎゅっとなって、頭撫でたり、うんうん、って……俺、置いてかれたんだが……?
一人、ぽつんとそこに残された俺は老人の散歩みてぇにゆっくり帰った。
同じ日の放課後のことだ。
「なんで、俺、お前らの買い物に付き合わされてんの?」
美香と日和に連れられて、同い年くらいのやつらで賑わうファッションストリートなる場所に連れて来られていた。ファッションストリートで言い方合ってるか分かんねぇけど、すげぇ服飾屋が軒を連ねてる。
「だって、今日も龍生バイトなんだもん」
「最近バイト多いよねー」
前を歩く二人がこちらを振り返りながら言う。
あいつも暇だったら付き合わされてたってことか。
「理由になってねぇし」
ぼそりと呟きながら、二人の後を追っているときだった。
「やめてください!」
大通りを逸れた細めの路地で三人のヤンキーに絡まれてる制服姿の女子を発見した。
――あれって、俺らのクラスの藤白じゃ?
「コタ、クレープ食べようよ」
「虎太郎、どうしたの?」
足を止めた俺の後ろから美香と日和が覗き込む。
「え、藤白ちゃんじゃん、どうしよ」
「うちらじゃ無理だよね? 警察?」
藤白の存在に気付いて、二人は焦ったように顔を見合わせた。
「やめて! 触らないで!」
「おうおう、可愛いじゃん」
二人掛かりで藤白の両腕を掴んだところを見て
「ちょっと行ってくる」
俺は足を踏み出した。
「え、コタ?」
「虎太郎?」
後ろから美香と日和の心配するような声が聞こえたが、止まる気はない。
「おい、そいつ離せよ!」
ふん、と気合いを入れて、俺はヤンキー三人組に大きな声で言った。
「んだよ! お前!」
まず、藤白の左腕を掴んでる金髪のヤンキーが叫び
「こいつの知り合いかよ?」
右腕を掴んでる黒髪のやつが顎で藤白を差す。
それから、俺の目の前に長身の赤髪のヤンキーが立った。
「へぇ、お前、男なのに可愛いじゃん。一緒に来いよ」
顔がよく見えるように顎を掴まれて、虫唾が走る。
「触んなよ!」
キッと睨んで、俺は赤髪の手をはたき落とした。
「あ? 調子乗んなよ? こっち来いって!」
イラついた赤髪が俺の右手首を掴む。
――来た……!
「うおっ! 痛でででっ!!」
俺は瞬時に掴まれた手首を翻し、赤髪の腕を捻り上げた。
「おい、てめぇ、なにしてんだよ!?」
「……っ!」
金髪のやつが突っ込んできて、赤髪を盾にしてガードした。
俺の代わりに殴られた赤髪はその場にへたりこみ、金髪はやっちまったみてぇな顔をした。
「も、もう行こうぜ?」
最後に黒髪のやつがビビって、変なステップで走り出し、そのあとを追うように金髪と赤髪が走り去っていった。
「ヤンキー舐めんな!」
根っからのヤンキーに向かってそう言ってしまうほど、実はヤンキーとのケンカに慣れていない俺である。倒すのに使った技は嫌々習得させられた護身術。
小中学生の頃にあまりにも言われ過ぎて「コタくんは小さくて可愛くて危ないから護身術習いましょ」っていう母親の姿がいまでも容易に脳内で再生できる。
ちなみに三人とも俺より身長が高かった。
「コタ、すごいよ!」
「虎太郎、かっこいい! 惚れる~」
後ろからやってきた美香と日和が俺に引っ付く。
だが、俺の視線はそこにじっとしている藤白から外せなかった。
「藤白ちゃん、大丈夫?」
「どっかケガした?」
俺より先に女子二人が声を掛けてくれてよかったかもしれない。
「佐々木さん……、高橋さん……、こわ、こわかった……」
藤白は二人を見て、ボロボロと涙をこぼしはじめた。
どうやらケガはしてないようだが、ぶるぶると震えた指先が助けを求めるように美香と日和に伸ばされる。
「こわかったよね、よしよし」
「もう危ないからさ、とりあえず、一緒に帰ろ」
女子三人でぎゅっとなって、頭撫でたり、うんうん、って……俺、置いてかれたんだが……?
一人、ぽつんとそこに残された俺は老人の散歩みてぇにゆっくり帰った。