真夏に片足でも突っ込んでるのか、日々、すでに陽射しが強い。
 定期考査も落ち着いたある日の5限目、体育でテニスがあり、コート外で打ち合いの順番を待っているときだった。

「お前……」

 緑のネット越しにコートを見つめて、隣に立った龍生がぼそりと呟いた。

「は?」

 あまりに突然すぎて、聞き間違いか?とそちらに視線を向ける。

「……付き合ったやつと上手くいってんのか?」
「え、龍生、その話、興味あったの?」

 まさか、そんなことを聞かれるとは思ってなくて、俺の中の不良がどっかいった。
 だって、龍生いつもグルチャ既読無視でどうでもいいと思われてるのかと……。

「いや、小さいやつでもモテんのか、って」

 こちらを見ることなく、龍生が冷めた声で言う。
 興味あんのかないのか、どっちなんだよ。

「おい、失礼すぎね? 俺だって……、つか、別に付き合ってねぇから」

 そう言いながら、俺は隣の龍生を軽くどついた。
 龍生からの反応は特にない。
 いや、待てよ?

「あのさ、ちょっと確認させてもらっていいか?」

 急にあることを思い付いて、俺は龍生のほうに身体を向けた。

「確認ってなんだ?」

 怪訝そうな視線が、ちらっとこちらを見る。

「とりあえず、こっち向け」
「はあ? なに確認すんだ?」

 無理矢理、ぐいっと向き合うような形にすると、龍生は眉間に皺を寄せた状態で俺を見下ろしてきた。
 身長でかいのムカつくんだが、まあ、いまはそれで丁度いい。
 間髪入れず、いくべし。

「お前はじっとしてればいいから」

 そう言いながら、さっと両腕を拡げて、龍生の身体に抱きつく。
 俺の行動にビビったのか、ビクッと龍生の身体が小さく跳ねた。

「なに、してんだ、お前?」

 顔は見えねぇけど、なんか龍生がカタカタしゃべってる。
 でも、拒否しねぇってことはまだ確認してていいってことだよな。

 ――デカいし、感じも似てんだけどなぁ……。

「んー、やっぱ、なんか違うな。次、ちょっと後ろからこうやってさ……」

 身体を離して、龍生の腕を掴んだ瞬間だった。

「え、コタに告白したのって、龍生だったの?」

 いつの間にか、女子用コートから出てきていた美香と日和が俺たちを見ていた。
 一瞬、ん? となって、龍生と視線がぶつかる。

「違ぇよ!」
「違ぇから!」

 爆発したみてぇに俺と龍生は否定した。
 ありえねぇって、マジで。

「ふーん、仲良しー」
「ねー」
「りゅ、龍生、コート空いたから打ち合いしようぜ」
「……おう」

 美香と日和にニヤニヤされながら、ばつが悪くなって、俺はそそくさと龍生に声を掛けてコートに移動した。

 ――なんか違うんだよな……。