◆◆ ◆

「んー…………え? いま何時?」

 目覚めたら辺りが真っ暗になっていて焦った。
 カーテンが開いているから完全に真っ暗って感じじゃないが、夜だってことは分かる。

「ん……、虎太郎……?」
「は? なんで瑛二まで寝てんの?」

 なんか隣でもぞもぞ動いてるなと思ったら、こっちを向くように寝ていた瑛二だった。

「……俺も勉強集中してたら疲れちゃって」

 ぼそりと寝起きの掠れた声が俺の耳をくすぐる。

「でも、虎太郎のおかげですごい集中できたんだよ……」
「ちょ」

 じりじりと距離を詰められて、長い腕が俺の身体に巻き付く。

「すごい落ち着くんだよね、不思議……」
「え? また寝んのか?」

 俺の頭の上から囁くように声が聞こえたと思ったら、瑛二はまた寝始めたようだった。
 そして、気付く。

「お父さん……!?」

 瑛二越しに斜め上に見上げた先、そこに静かに扉を開けてお父さんが立っていた。
 じっと俺と瑛二を見ている。

「お父さん、ちが……、瑛二! 二度寝すんな!」

 人の息子とベッドで一緒に寝てる今日見知ったどこぞのヤンキーという図、実にあやしい。
 俺は焦って、瑛二の身体をバンバンと叩いた。

「んー」

 それ、絶対嘘だろ? って感じで起きない瑛二。
 たぬき寝入りすな、さっき、あっさり起きただろ?

「お父さん、これは……! おい、瑛二!」

 お父さんに違うんです、という視線を向けながら、ひたすら瑛二を起こす俺。

「これは違うんです――!!」

 一際大きな声で否定したときだった。

「夕飯できたけど、食べる?」
「……あ、はい」

 にこっと笑ったお父さんに言われて、俺は静かに答えた。

 このあと、お父さんに「うーん、青春だね」と言われながら、チャーハンを食べた。
 胡椒が効いてて美味かった。
 帰りに「またおいでね」と言われた。