「マジでなにしてんの?」

 やっと解放されたとき、俺はくったくたになっていた。
 ニンゲンユルサナイ、状態だぞ? マジで。

「ごめん、俺たちお友達なのに、好きが止まらなかった」

 ――こいつ、また好きって……、いや、小動物みたいな感じでってことだよな。

 一瞬、ぶわっとなりかけたが、美香と日和が思ってるのと同じことか、と思ったら落ち着いた。

「ちょっと疲れたからベッド貸して」

 くったくたのところに綺麗に整えられたベッドが視界に入ってきたから、俺は無意識にそう言っていた。

「どうぞ」

 ベッドは聖域だから、とか言うやついるけど、瑛二はそんなこと言わなかった。

「さんきゅー」

 ふらふらと立ち上がり、点字の紙を自分のノートに挟んで、瑛二のベッドに静かに横になる。

 俺、休憩ばっかじゃんって感じだけど、元気吸われた気分。
 家の猫もそう思ってんのかな、俺が吸ったとき。

 そう思いながら、寝返りを打つ。

「なんかいい匂いする」

 言わねぇつもりだったのに、瑛二のベッドからいい匂いがして、つい口走ってしまった。
 これ、瑛二からする甘い香りだ。
 なんかウトウトする。

「あー、元カノにもらった香水の匂い。気になる?」

 少し離れたところから瑛二の声がする。

 これ、元カノが作った瑛二の匂いか……。

「別に……」

 やっぱその彼女に未練とかあんのかな……って、一瞬思ったけど、もう次の瞬間には眠りの世界に落ちていた。