「君、名前は?」
「佐藤 虎太郎です……」
「どこの学校に通ってるの?」
「え、っと、仁坂高校っすけど」
「何年生?」
「二年です」
「自分の長所と短所答えて」

 ――え、面接? これ、圧迫面接か?

 面接受けたことねぇのに突然始まる尋問タイム。
 教えてくれる? とかじゃなくて、答えてって……。

「俺、見た目、こんなですけど、意外と真面目――」
「ははっ、冗談だよ。晴眼の子の友達ってめずらしいなって思って」

 ドギマギしながら一生懸命に答えたのに、めっちゃ笑われた。
 すげぇ優しい顔して笑ってる。
 というか

「せいがん?」

 ってなんだ?

「ああ、目が見えてる人のこと。君が瑛二を助けてくれた子だよね。すごい嬉しそうに話してたよ。あいつ、ずっと暗い顔ばっかしてたからさ、ありがとうね」
 
 俺の疑問に優しい眼差しのままで答えてくれるお父さん。
 ずっと暗い顔って、大学生の彼女と別れたときに振られたのが瑛二のほうだったとか? なんて聞けるはずもなく

「いや、俺は別に……」

 と答えるだけ。

「まあ、仲良くしてやって。一対一で話してみたかっただけだから、もう戻っていいよ」

 ニコニコ顔でそう言われて、拍子抜けしながら俺は瑛二の部屋に戻った。

「なに? 大丈夫だった?」

 部屋に入るなり、瑛二に心配された。

「うん、なんか、バイトの面接ってあんな感じなのかなって」

 自分の場所に座って、未だにぼけーっとした感じで答える。

「え、なにそれ?」

 千早からも聞かれた。

「うん、俺もよく分かんない」

 圧迫面接のイメージが強すぎて、思わず、不良が抜けて素直に返事をした。
 このあと、誰もそれに関しては聞いてこなかった。
 俺、将来、面接、大丈夫かな……。