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『コタ、今日の用事ってなんだったの?』
『もしかして、例の告白の彼女?』

 夜、勉強机に向かっていると、いつメンのグループチャットに美香と日和からメッセージがきた。
ちなみに話し掛けられれば答えるが、龍生は基本既読だけして会話に入ってこない。
 
『違うって、普通に家の用事。今度穴埋めすっから』

 そろそろ付き合い悪いとか思われたりすっかな、とか考えながらそうメッセージを送った。

「ほんと、女子って恋バナ好きだよな……」

 アプリを閉じて、呟く。
 画面が真っ暗になった瞬間だった。

「わっ」

 急に着信画面になってビビる。
 画面に表示された名前は『西 瑛二』。

 ――は? 電話? いや、まあ向こうは電話のほうが楽なのか。

 そう思って、緊張しながらも慣れない電話に出る。

「もしもし?」
『もしもし、虎太郎、急にごめん』
「おう」
『電話、迷惑だった?』
「べ、別に」

 瑛二の声を聞きながら、なんとなく落ち着かなくて、部屋の中を歩きまくる俺。
 ここまでで、多分部屋の中一周半くらいはしてる。

『いま、なにしてた?』
「もう寝ようとしてたけど」

 明日の授業の予習も終わったし、ほんとに寝ようとしていた。
 つーか、ぜんぜん会話の続け方が分かんねぇ。

『そっか……、あのさ』
「ん?」
『ほんと、誤解させてごめんね』
「いや、それ言ったらこっちもなんだけど」

 もうほんと、瑛二は謝ってばっかだなと思う。

「つーかさ、今日、外で会ったとき、よく俺の声だってすぐに分かったな」

 瑛二と会ったのはたった二回だったし、名前呼んだだけだったのに、ほんと……。

『うん、俺、虎太郎の声好きだから。すぐ分かるよ』
「なっ、またそういうこと簡単に言う」

 好きって言葉がくすぐったい。
 瑛二は背が高いからか、ちょっと低く掠れるような声をしているし、まじで耳が落ち着かない。

『ふふっ、もう寝るんだよね? 一日の終わりに虎太郎の声が聞けて嬉しかった。おやすみ』
「お、おう、おやすみ」

 電話はあっさりと切れた。
 切れたあとに真っ暗になった画面を見て

「あっま!」

 俺はスマホをベッドに投げた。

 なんだ、これ、付き合いたてのカップルかよ?
え、俺、間違って、昼間に告白とかしてないよな?

 というか、また聞き忘れた。
 なんで俺に一目惚れしたのか。

「痛っ」

 ベッドにダイブして先に居座っていたスマホに額をぶつけた。