「僕、弱視だから、このくらいの距離で明るければ、ちょっとだけ見えるんだよ。って、うわぁ、がっつり金髪のヤンキー。でも、可愛い顔してる」

「可愛いって言うな」

 別に千早も悪いやつじゃなさそうだけど、思わず、喧嘩腰になってしまう。
まあ、お互いにツンケンしてんだから、仕方ない。
自己紹介もしてない。

「千早、ずるいよ」

 瑛二はどの点に関して言ってんだか分かんないんだが

「なにがずるいだ。俺だって、男なんだから、可愛いとか言われて嬉しいわけないだろ? 瑛二は男が好きなのかよ?」

 俺は文句を言った。
その後ろで「僕は嬉しいけどなぁ」という千早の声が聞こえた。

「いや、特にそういうわけでもなかったんだけど」
「そうだよね。だって、去年まで大学生のお姉さんと付き合ってたし」

 考えるように言う瑛二とそんな瑛二にピトッとくっ付くように言う千早。

 ――ふぁっ! 年上の女の人と経験あり!? 

「おねいさん? そんなんで俺のこと好きとか、よく言えたな!」

 女の人が元々好きで、付き合ったことあって、なんで俺を選んだ?
 もうほんとに訳分かんねぇよ。

「うーん……、虎太郎、ちょっと触っていい?」

 千早がさっきやってたくらいの距離に近付いてきた瑛二が悩んでる感じで俺のほうに手を伸ばす。

「は? またかよ? って、俺、いいって言ってないんだけどっ」

 まだ了承してないのに、頭とか顔とかじゃなくて、瑛二の手が胸とか腹とか腰とかを服の上から触ってきて、くすぐったい。

「ちょ、どこ触ってんだよっ……は?」

 顔を熱くしながら、瑛二の手を止めようとしたら最後にぎゅっと抱きしめられて、俺は固まった。

「うん、大丈夫そう」

 なにもなかったみたいにニコニコ顔で離れていく瑛二。

 ――は? なにを持ってして大丈夫つった?

「それでさ、確認したいんだけど、結局は虎太郎は瑛二のことが好きってこと?」

 ――千早ぁあああああ!

 落ち着いたと思ったら、すごい爆弾ぶっ込んでくるじゃんか千早。

「そういうんじゃねえから」

 落ち着け、俺、断じて違う。

「じゃあ、なんであんなに怒ってたの?」

 そう千早に尋ねられて考える。

 たしかに、なんか浮気されて嫉妬してるやつみたいになってたけど、それは断じて違う。