――あ、れ……?

 視線が大きなガラス窓のほうに吸い寄せられる。

 瑛二が歩いていたのだ。

 しかも、隣に俺くらいの背の男子がいる。
 可愛い系ってああいうやつのことを言うんじゃないかって感じの男子だ。

 じゃなくて、なんで、俺、なんかもやっとした?
 
 瑛二が仲良さそうに知らないやつと歩いてるから?
 そいつがちょっと俺に似たタイプの人間だから?
 まだ俺に振られて三日しか経ってねぇのに、それっぽい男子と歩いてるから?

「ちょっと俺用事思い出した。足りない分、明日請求してくれ。それも食っていいから」

 ガバッと立ち上がって、俺は千円札をテーブルに置いて鞄を持ち、美香と日和に言った。

「え、なに、突然」
「太っちゃうよう~」

 そう言う二人を置いて、ファミレスを出る。

 そして、ちょっと悪い気もしたが、瑛二と可愛い系男子の後ろから二人の会話を盗み聞きした。

「千早、誰にでも何でもやってもらって当然っていうのはよくないよ」
「いいじゃん、僕だってお姫様になりたいもん」

 腕組みながら、二人で白杖持ってるってことはその隣の千早ってやつも目が見えないってことだよな?

「僕、瑛二大好き。瑛二は優しいし、背も高いし、いつもみんなにかっこいいって言われてるし、ほんとに僕の王子様」

 キャピキャピルンルンという感じでさらに瑛二にぎゅっと近付く千早という男子。
 やっぱり二人は付き合ってるのか?

「はあ?」

 無意識に声がもれていた。

 なんかムカッとする。
 だって、三日だぞ?
 そんな早く相手が見つかるなら、やっぱり俺のこと揶揄ってたってことだよな?
 いや、俺もなに言ってんだって感じだが。

「瑛二!」

 声を掛けずにはいられなかった。