深夜の会議室には、険悪な空気が漂っていた。睨み合う平野と秋山の間で、小宇都は場違いなほどニコニコと笑っている。
「はいはいお二人さん、そろそろいいかい?」
小宇都の声に、二人は無言で首肯した。
「ここにいるのが、プロジェクトチームの日本人メンバーだ。これから来るのは、全員、海外の研究者だからね。英語で頼むよ。」
「言われなくても。」
「わかりました。」
平野、秋山の返事が響く。双子なのに全く性格が違うな、と小宇都は呟いた。
「で、他のメンバーはどこにいるんです?」
「もうすぐ来るはずだよ?……ほら。」
直後にノックの音が響く。小宇都の超人的な感覚に秋山は目をむいたが、もはや見慣れている平野はその彼を冷めた目で見つめていた。
「――Come in.(入って。)
Good evening.(こんばんは。)
挨拶をしながらぞろぞろと入ってきた彼らからは、年齢国籍性別ともに共通点は見いだせない。彼らに関して言えることはたった一つだけ。全員、頭脳明晰――というよりも、超人的な頭脳と知識を持っているという点のみである。
室内には英語が響き始めた。
「初めてお会いしますねぇ。僕はロレンツォ・ヴィスコンティ、電磁気学が専門です。よろしくお願いしま〜す。」
「わたしはソフィア・マクドナルドよ。熱力学を専門としてるわ。今回のプロジェクト、とっても楽しみね!」
その後も物理学、生物学の各分野のスペシャリストたちが続き、挨拶を交わした。
「俺は秋山瑞貴。宇宙物理学が専門だ。」
「僕は平野優貴です。位置天文学を専門としてます。よろしくお願いします。」
「わたしは小宇都飛鳥。専門は天文学全般。このプロジェクトチームのリーダーを務めさせてもらうよ。よろしく。――じゃぁ、早速会議を始めようか。席について。」
全員が席に着き、とうとう会議が始まった。
「まず、このプロジェクトチームについて。このプロジェクトチームのチーム名は、アース(地球)スペース(宇宙)・プロジェクトチーム。チームメンバーは16名。プロジェクトチームの目的は、高輝度赤色新星の爆発の影響によって止まってしまうと予測される、地球の自転を再開させること。ここまでで、何か質問はあるかい?」
誰も発言を求めないことを確認すると、小宇都はプロジェクトの詳細についてへと話題を移したのだった。