小宇都は、喧騒の中をかき分けて歩いていたが、ふと立ち止まった。
「ねぇ、きみ、優貴はどこにいるか知ってるかい?」
声をかけられた研究員は目を瞬かせ、困惑したかのように声を出す。
「優貴……平野優貴のことですか?」
「そう。」
小宇都はこともなげに頷く。
「優貴がいないと困るんだけど、どれだけコール(通信)しても、繋がらないんだよね。」
「は、はあ。」
「仲が良いきみなら、知らないかと思って。」
曖昧な返事をする研究員には目もくれず、小宇都はつらつらと言葉を紡いだ。
「……おそらく、ですが。平野は、自室で惰眠を貪ってると――」
「――そうか、ありがとう。」
小宇都は素早く踵を返すと、再び喧騒の中に戻った。研究員は唖然としたように固まっていたが、ふと我に返ると、その喧騒の原因となっているもの(高輝度赤色新星)の研究へと戻るのだった。