国際天文研究所日本支部。
突如、支部長室の机が叩かれた。
「高輝度赤色新星!?……それは、誤観測じゃないんだね?」
「はい。僕も信じたくはなかったんですが何度観測しても計算しても、同じ結果しか出ませんでした。」
「そうか……。」
研究員、平野(ひらの)優貴(ゆうき)の言葉に、日本支部長、小宇都(こうつ)飛鳥(あすか)は額に手を当て、天を仰いだ。
「爆発までに残された時間は?」
「概算しかできていませんが、あと……一年ほどです。」
「……は。」
小宇都は目元を手で覆うと、乾いた笑い声を上げた。
「嘘だろう?」
指の間から、小宇都の揺れる瞳が覗く。
「短い。あまりにも短すぎるよ。この世界は、一体どこまで無情にできているんだろうね?」
数秒の静寂が、室内を支配する。それに先に耐えられなくなったのは、小宇都だった。
彼女は、先程机を叩いたはずみに上げていた腰を下ろした。
「さて、優貴。」
小宇都の真剣な顔は、組まれた手の上に置かれている。
「きみなら、どうする?」
小宇都の射抜くような視線と、平野の瞳が交差した瞬間、小宇都は薄く笑んだ。