期末テストの勉強にいそしんでいる頃、珠代の手術が無事に成功したと、兄から一報があった。翔の右肩も、順調に回復に向かっている。
叔母が退院したら、兄夫婦と四人で食事に行こうという話が出ている。照れ臭くはあったが、翔は快く了承した。
期末テスト明けに、嬉しいことがあった。冬馬が、テニス部に入部したのだ。城崎や寺坂は、もちろん大喜びだった。けれども、中学時代、公式戦で冬馬を観たことがある上級生が数人いて、「あの木下が今更入部してくるなんて」という感想を持つ者も、少なからずいた。そんな数名も、道具の手入れや球拾いなどを率先して行う冬馬の姿を見て、態度を改めていった。
帝仁高校寮一号館に、冬馬宛てに荷物が届いた。冬馬の母からだった。開封した冬馬は、愕然としていた。冬馬が使っていたテニス道具一式が入っていたのだ。クッキーの詰め合わせやスナック菓子と一緒に、花柄のメモ用紙が添えられていた。そこに綴られていた文字を読んで、冬馬は相好を崩した。
「お母さん、何て?」
尋ねると、冬馬はメモを見せてくれた。そこには、綺麗な字で、『頑張ってね』と書かれていた。