「二十歳?! それ大丈夫なの?」
七菜香がびっくりして大きな声を出す。
「声が大きい!」
七菜香の声が店内に響き渡っている。近くの席に座っているお客さんに、チラチラとこちらを気にされた。
「ごめんごめん。だってさ、咲っていっつもダメンズばっかり見つけてくるからさ……」
「なんで男の子なんか拾っちゃったの? そんな勇気どこからくる訳?」
七菜香が失礼なことを言って、蘭が冷静なツッコミを入れる。そう言われたら確かにそうなのだが……。
「わかんないけど、何となく? 真面目そうだったし、危険な感じはなかったし」
私は、あの時の幸知のことを思い出しながら蘭の問いに答えた。
「だからっていきなり自分の家に連れていくかね……」
七菜香が、自分の前に置いてあったグラスを手に持ち呆れている。
「だって、時間遅かったし雨降ってたんだもん。何も持ってなくてかわいそうだったの」
「かわいそうって……結果として何もなかったからいいけど、危ないからね! 今の時代、外見なんて当てにできないんだから……」
蘭が、口調は抑えているが心配して怒ってくれている。
「うん。わかってる」
「本当にわかってんの?」
七菜香が、私の顔を覗き込んできた。
私たち三人は、予定通り十七時にみなとみらい駅で落ち合って予約していたお店に向かった。注文を終えて料理が来るまでの間、この一か月の出来事を報告しあっていた。
二人は、特に大きな出来事はなかったようですぐに話が途切れる。私の番になったので、きっと面白がってくれるだろうと幸知のことを話した。
面白がってくれたのはいいが、思いのほか二人の食いつきがよくてちょっと引いている。
「わかってる。でもさ、本当にいい子なんだってば」
私は、心配する二人に説明した。
「咲のいい人は当てにできない。だって、元カレとかクズだったし」
七菜香は、昔を思い出しているのか顔が怒っている。
「確かに、そんなこともあるけどさ……」
全てを知っている二人には、言い訳が通用しない。
「しょうがないって。咲はさ、男の趣味が悪いんだから。信用なくても仕方ない」
蘭は、相変わらず毒舌が過ぎる。
「否定できないところが辛いんだけど……」
私は、段々と居心地が悪くなってくる。こんなはずじゃなかったのだけど。二人とも面白がってくれるかなと思って話したのに、段々と違う方向に話が進んでいる。
でも、確かに私の男性遍歴を知っている二人としては言いたいのもわからなくはない。
というのも、私の男運は最悪だ。三十歳にもなれば、それなりに男性と付き合った経験がある。だけど、二人が言うようにいい思い出がない。
私は本気で付き合っていたのに、相手にとっては完全に遊びだったり。付き合う前までは、連絡とかマメだったのに、付き合った途端放置で会うのは彼の都合のいい場所ばかり。付き合っているはずなのに、大切にされている感が全くない人だった。
あとは浮気されて、最終的に私が捨てられたパターンなんてのもある。簡単に振り返ってみるだけでもこんな私の恋愛遍歴。男と聞いて心配しない方が無理なのかも……。
でも言い訳をさせてもらえるなら、私は人見知りが激しいのだ。だからコミュニケーションが上手な人を好きになりがちなところがある。
優しくされると、コロッと勘違いしてしまうチョロインなのだ。自分でもそれはわかっている、だけど決してダメンズが好きってわけではない。それはわかって欲しい。
「で、その二十歳くんとは何もなかったの?」
七菜香が、身を乗り出して聞いてくる。
「何かって何よ? あるわけないでしょーが! 連絡先は交換したけれど……」
「しっかり連絡先交換してんじゃんよ」
七菜香が、じとーっとした目で私を見る。
「って言うかさ、そもそもなんで声かけたの? 咲が知らない人に声かけるなんて絶対しないじゃん」
蘭は、なんでそんなことをしたのか疑問だったみたいだ。
「雨降っていたし、長時間そこにいるの気づいちゃったし……。ただ、本当に何となくなんだよね。気になっちゃって……」
私も、幸知と別れてからそれは考えたけれど辿り着く理由はそれだった。彼氏いない歴三年になろうとしていて、恋じゃなくても刺激が欲しかったのはある。
二十歳と知ってしまった今は、さすがに恋に発展するとは思えないけれど。
「ふーん。イケメンなの?」
蘭が、聞く。
「それ、気になるんだ?」
「そりゃ、そーでしょうよ」
二人とも首を大きく立てに振っている。
「んー。格好いいと思う。礼儀正しいし、モテると思う」
幸知を思い出しながら私は返答する。今日もわざわざ、菓子折り持ってお礼に来てくれたのだ。あの年頃の子にしては、きちんとしている。
「「へー」」
二人が、やれやれと言った顔をしている。きっと二人は、また怪しいのに引っかかっていると呆れているのかも。
「もう、心配するようなことにはならないから大丈夫だよ! それよりも、バーベキューの話しようよ」
私は、二人の視線に耐えられなくて話題を変える。すると丁度、頼んだ料理が運ばれてきた。
私が頼んだのは、本日のパスタ。季節の野菜を使ったパスタでとても美味しそう。ディナーセットになっているので、スープとサラダも付いてくる。
外食の時は、できるだけ野菜の種類を多くとるように心がけている。家だと、面倒臭くて外食で出てくるような何種類も野菜が入ったサラダなんて作れない。
みんなのテーブルの前に料理がそろったので、「いただきます」の挨拶をして各自食べ始める。三人とも、違う料理を頼んだのでテーブルの上は綺麗に盛り付けられたお皿で一杯だ。
「あっ、このパスタ美味しい。当たりだな」
七菜香が、サーモンとほうれん草のパスタをフォークとスプーンを使って食べている。かなり気に入ったのか、顔がほころんでいて幸せそうだ。
「私のやつもなかなか美味しいよ」
蘭が頼んだのは、ナスとひき肉のボロネーゼ。実は、私も迷ったパスタだった。ナスが油と合わさってつやつやしていて美味しそうだ。
そんな二人を見つつ、私も自分のパスタを口に運ぶ。
「美味しいー。幸せ」
アスパラときのこが入ったクリームパスタ。新鮮だからか、アスパラの味が濃くてとても美味しい。美味しいものって、人を簡単に幸せにしてくれる。
「咲は、大げさなんだから」
七菜香は、パスタを食べ進めながらそう言う。
「いいじゃん。幸せーって口に出すと良いって、この前テレビで言ってたもん。」
「咲ってわりと幸せになるのが上手だよね。楽観的って言うのかもだけど。変な男に引っかかっても、立ち直り早いもんね」
蘭が、またしても毒舌を吐く。
「それって褒めているってことでいいんだよね?」
いつものことだから、私はつっかからずスルーする。
「うん。私が咲を尊敬するところだよ」
蘭が、真剣に返してきたのでちょっとびっくりする。蘭って、毒舌吐いたと思うと、フォローしたりバランスが絶秒なのだ。
「それはどうも。あっ、そうだ、さっきの続きだけどバーベキュー蘭は今回彼氏どうするの?」
湊さんたちに誘ってもらうイベントは、最初こそ出会いの場だったのだけど今では普通にお友達になっている。
誰かに彼氏や彼女ができると、本人たちが良ければ普通に一緒に遊ぶ。その方が、彼氏や彼女が安心して遊べるから。
やっぱり、恋人がいたって集団でみんなでワイワイ遊ぶのは別で楽しい。湊さんたちも、うるさく言わないし変に絡んでこないのでとても居心地のいいグループなのだ。
ちなみに湊さんは、私たちよりも年上で三十五歳の独身。今彼女はいないみたいだけど、いつも楽しそうにしている。
「今回は予定が合わないから行かないってさ」
蘭が、答えてくれる。
「ふーん。珍しいね。湊さんたちと遊ぶ時は、必ず来るのに」
七菜香が、不思議そうに聞いてくる。
「もう何回も遊んでるし、なんか個人的に湊さんと仲良くしているみたいで問題ないって思ってくれたのかも。あのグループで遊ぶの楽しいから、良かったよ」
蘭が、嬉しそうに話す。
「へー、湊さんと仲良くなったんだ。湊さんってさ、凄いよね。誰とでも仲良くなっちゃうんだもん。今だから言うけど、てっきり咲は湊さんのこと好きなのかな? とか思ったもん。でも、特にそんなアクションは起こさなかったから違うのかって。まー、だから今もみんなで仲良く遊べているんだけど」
七菜香が、爆弾発言をする。湊さんたちと出会ったのは、合コンの席だった。だから最初は、恋愛関係に発展するという期待があったのは事実。
でもその合コンのすぐ後に、蘭にも七菜香にも別の出会いで彼氏ができちゃったから、私一人そこに踏み込むことができなかったのだ。
湊さんたちとは、お付合いという形ではなく友達としての付合いが始まっていてそれが楽しくて壊したくなかった。
だから、二人には言わなかったけれど湊さんがいいなと思った時期もある。でも何度もイベントに呼んでもらって仲良くなっても、そういう雰囲気になったことは一度もない。
きっと、湊さんのタイプじゃないのだろうと諦め、いいなと思う気持ちは封印した。でも一緒に遊ぶのは楽しいし、今のところ特に不満はない。湊さんに対して、私のこと好きになって貰えなくて辛いといった状態にもない。
だから私は、これは恋ではないのだと片づけていた。
「湊さんたちとは、お友達の方が楽しいじゃん。それに私って、しょせんモブだからそういう風に見られないじゃん?」
「モブって何よ? そんなことないでしょーが! そのうち、咲にだって素敵な人が現れるよ。その時に咲が逃さないか、私は心配だよ」
蘭が、私が言った言葉に不機嫌になる。卑屈っぽくなってしまったと反省する。
「そうだね。今度いいと思ったら、ちゃんと二人に相談します。ってか、いつも相談しているけどね」
私は笑って答える。
「じゃー、今度のバーベキューは久々にこの三人で参加ってことですね」
七菜香も、笑顔で話す。
「楽しみだねバーベキュー。 お肉とか一杯食べたい」
私がそう言うと、二人とも同じように笑顔にな
七菜香がびっくりして大きな声を出す。
「声が大きい!」
七菜香の声が店内に響き渡っている。近くの席に座っているお客さんに、チラチラとこちらを気にされた。
「ごめんごめん。だってさ、咲っていっつもダメンズばっかり見つけてくるからさ……」
「なんで男の子なんか拾っちゃったの? そんな勇気どこからくる訳?」
七菜香が失礼なことを言って、蘭が冷静なツッコミを入れる。そう言われたら確かにそうなのだが……。
「わかんないけど、何となく? 真面目そうだったし、危険な感じはなかったし」
私は、あの時の幸知のことを思い出しながら蘭の問いに答えた。
「だからっていきなり自分の家に連れていくかね……」
七菜香が、自分の前に置いてあったグラスを手に持ち呆れている。
「だって、時間遅かったし雨降ってたんだもん。何も持ってなくてかわいそうだったの」
「かわいそうって……結果として何もなかったからいいけど、危ないからね! 今の時代、外見なんて当てにできないんだから……」
蘭が、口調は抑えているが心配して怒ってくれている。
「うん。わかってる」
「本当にわかってんの?」
七菜香が、私の顔を覗き込んできた。
私たち三人は、予定通り十七時にみなとみらい駅で落ち合って予約していたお店に向かった。注文を終えて料理が来るまでの間、この一か月の出来事を報告しあっていた。
二人は、特に大きな出来事はなかったようですぐに話が途切れる。私の番になったので、きっと面白がってくれるだろうと幸知のことを話した。
面白がってくれたのはいいが、思いのほか二人の食いつきがよくてちょっと引いている。
「わかってる。でもさ、本当にいい子なんだってば」
私は、心配する二人に説明した。
「咲のいい人は当てにできない。だって、元カレとかクズだったし」
七菜香は、昔を思い出しているのか顔が怒っている。
「確かに、そんなこともあるけどさ……」
全てを知っている二人には、言い訳が通用しない。
「しょうがないって。咲はさ、男の趣味が悪いんだから。信用なくても仕方ない」
蘭は、相変わらず毒舌が過ぎる。
「否定できないところが辛いんだけど……」
私は、段々と居心地が悪くなってくる。こんなはずじゃなかったのだけど。二人とも面白がってくれるかなと思って話したのに、段々と違う方向に話が進んでいる。
でも、確かに私の男性遍歴を知っている二人としては言いたいのもわからなくはない。
というのも、私の男運は最悪だ。三十歳にもなれば、それなりに男性と付き合った経験がある。だけど、二人が言うようにいい思い出がない。
私は本気で付き合っていたのに、相手にとっては完全に遊びだったり。付き合う前までは、連絡とかマメだったのに、付き合った途端放置で会うのは彼の都合のいい場所ばかり。付き合っているはずなのに、大切にされている感が全くない人だった。
あとは浮気されて、最終的に私が捨てられたパターンなんてのもある。簡単に振り返ってみるだけでもこんな私の恋愛遍歴。男と聞いて心配しない方が無理なのかも……。
でも言い訳をさせてもらえるなら、私は人見知りが激しいのだ。だからコミュニケーションが上手な人を好きになりがちなところがある。
優しくされると、コロッと勘違いしてしまうチョロインなのだ。自分でもそれはわかっている、だけど決してダメンズが好きってわけではない。それはわかって欲しい。
「で、その二十歳くんとは何もなかったの?」
七菜香が、身を乗り出して聞いてくる。
「何かって何よ? あるわけないでしょーが! 連絡先は交換したけれど……」
「しっかり連絡先交換してんじゃんよ」
七菜香が、じとーっとした目で私を見る。
「って言うかさ、そもそもなんで声かけたの? 咲が知らない人に声かけるなんて絶対しないじゃん」
蘭は、なんでそんなことをしたのか疑問だったみたいだ。
「雨降っていたし、長時間そこにいるの気づいちゃったし……。ただ、本当に何となくなんだよね。気になっちゃって……」
私も、幸知と別れてからそれは考えたけれど辿り着く理由はそれだった。彼氏いない歴三年になろうとしていて、恋じゃなくても刺激が欲しかったのはある。
二十歳と知ってしまった今は、さすがに恋に発展するとは思えないけれど。
「ふーん。イケメンなの?」
蘭が、聞く。
「それ、気になるんだ?」
「そりゃ、そーでしょうよ」
二人とも首を大きく立てに振っている。
「んー。格好いいと思う。礼儀正しいし、モテると思う」
幸知を思い出しながら私は返答する。今日もわざわざ、菓子折り持ってお礼に来てくれたのだ。あの年頃の子にしては、きちんとしている。
「「へー」」
二人が、やれやれと言った顔をしている。きっと二人は、また怪しいのに引っかかっていると呆れているのかも。
「もう、心配するようなことにはならないから大丈夫だよ! それよりも、バーベキューの話しようよ」
私は、二人の視線に耐えられなくて話題を変える。すると丁度、頼んだ料理が運ばれてきた。
私が頼んだのは、本日のパスタ。季節の野菜を使ったパスタでとても美味しそう。ディナーセットになっているので、スープとサラダも付いてくる。
外食の時は、できるだけ野菜の種類を多くとるように心がけている。家だと、面倒臭くて外食で出てくるような何種類も野菜が入ったサラダなんて作れない。
みんなのテーブルの前に料理がそろったので、「いただきます」の挨拶をして各自食べ始める。三人とも、違う料理を頼んだのでテーブルの上は綺麗に盛り付けられたお皿で一杯だ。
「あっ、このパスタ美味しい。当たりだな」
七菜香が、サーモンとほうれん草のパスタをフォークとスプーンを使って食べている。かなり気に入ったのか、顔がほころんでいて幸せそうだ。
「私のやつもなかなか美味しいよ」
蘭が頼んだのは、ナスとひき肉のボロネーゼ。実は、私も迷ったパスタだった。ナスが油と合わさってつやつやしていて美味しそうだ。
そんな二人を見つつ、私も自分のパスタを口に運ぶ。
「美味しいー。幸せ」
アスパラときのこが入ったクリームパスタ。新鮮だからか、アスパラの味が濃くてとても美味しい。美味しいものって、人を簡単に幸せにしてくれる。
「咲は、大げさなんだから」
七菜香は、パスタを食べ進めながらそう言う。
「いいじゃん。幸せーって口に出すと良いって、この前テレビで言ってたもん。」
「咲ってわりと幸せになるのが上手だよね。楽観的って言うのかもだけど。変な男に引っかかっても、立ち直り早いもんね」
蘭が、またしても毒舌を吐く。
「それって褒めているってことでいいんだよね?」
いつものことだから、私はつっかからずスルーする。
「うん。私が咲を尊敬するところだよ」
蘭が、真剣に返してきたのでちょっとびっくりする。蘭って、毒舌吐いたと思うと、フォローしたりバランスが絶秒なのだ。
「それはどうも。あっ、そうだ、さっきの続きだけどバーベキュー蘭は今回彼氏どうするの?」
湊さんたちに誘ってもらうイベントは、最初こそ出会いの場だったのだけど今では普通にお友達になっている。
誰かに彼氏や彼女ができると、本人たちが良ければ普通に一緒に遊ぶ。その方が、彼氏や彼女が安心して遊べるから。
やっぱり、恋人がいたって集団でみんなでワイワイ遊ぶのは別で楽しい。湊さんたちも、うるさく言わないし変に絡んでこないのでとても居心地のいいグループなのだ。
ちなみに湊さんは、私たちよりも年上で三十五歳の独身。今彼女はいないみたいだけど、いつも楽しそうにしている。
「今回は予定が合わないから行かないってさ」
蘭が、答えてくれる。
「ふーん。珍しいね。湊さんたちと遊ぶ時は、必ず来るのに」
七菜香が、不思議そうに聞いてくる。
「もう何回も遊んでるし、なんか個人的に湊さんと仲良くしているみたいで問題ないって思ってくれたのかも。あのグループで遊ぶの楽しいから、良かったよ」
蘭が、嬉しそうに話す。
「へー、湊さんと仲良くなったんだ。湊さんってさ、凄いよね。誰とでも仲良くなっちゃうんだもん。今だから言うけど、てっきり咲は湊さんのこと好きなのかな? とか思ったもん。でも、特にそんなアクションは起こさなかったから違うのかって。まー、だから今もみんなで仲良く遊べているんだけど」
七菜香が、爆弾発言をする。湊さんたちと出会ったのは、合コンの席だった。だから最初は、恋愛関係に発展するという期待があったのは事実。
でもその合コンのすぐ後に、蘭にも七菜香にも別の出会いで彼氏ができちゃったから、私一人そこに踏み込むことができなかったのだ。
湊さんたちとは、お付合いという形ではなく友達としての付合いが始まっていてそれが楽しくて壊したくなかった。
だから、二人には言わなかったけれど湊さんがいいなと思った時期もある。でも何度もイベントに呼んでもらって仲良くなっても、そういう雰囲気になったことは一度もない。
きっと、湊さんのタイプじゃないのだろうと諦め、いいなと思う気持ちは封印した。でも一緒に遊ぶのは楽しいし、今のところ特に不満はない。湊さんに対して、私のこと好きになって貰えなくて辛いといった状態にもない。
だから私は、これは恋ではないのだと片づけていた。
「湊さんたちとは、お友達の方が楽しいじゃん。それに私って、しょせんモブだからそういう風に見られないじゃん?」
「モブって何よ? そんなことないでしょーが! そのうち、咲にだって素敵な人が現れるよ。その時に咲が逃さないか、私は心配だよ」
蘭が、私が言った言葉に不機嫌になる。卑屈っぽくなってしまったと反省する。
「そうだね。今度いいと思ったら、ちゃんと二人に相談します。ってか、いつも相談しているけどね」
私は笑って答える。
「じゃー、今度のバーベキューは久々にこの三人で参加ってことですね」
七菜香も、笑顔で話す。
「楽しみだねバーベキュー。 お肉とか一杯食べたい」
私がそう言うと、二人とも同じように笑顔にな