たらふくお肉を食べた私たちは、最後にマシュマロを焼いて甘いものは別腹を楽しむ。男性陣は、マシュマロには興味を示さずにお酒を飲んでいた。
「やっぱり最後の〆は、マシュマロだよね!」
七菜香が、回りサクッ中トロっとなっているマシュマロを頬張って幸せそうな顔をしている。
「どうしても、最後は甘いもので〆たくなるのは何でなんだろうね」
蘭も、マシュマロを口に入れて今日一の笑顔がこぼれている。もちろん私も、マシュマロを食べつつさっき自動販売機で買って来た缶コーヒー片手に幸せを噛み締める。
先ほど、幸知と話をしたばかりなので「幸せー」とは呟いてないけど……。油断したら呟いてしまいそうな美味しさだった。
「幸知君は、食べないの? 美味しいのに」
私は、横で缶コーヒーを飲む幸知に尋ねる。幸知は、お酒はあまり飲めないらしく今日は一日ソフトドリンクを飲んでいた。
なので、さっき幸知にもコーヒーを買ってきてあげたのだ。
「いや、さすがにもうお腹一杯です。みんな残ってるの全部俺に食べさせようとしてくるから……」
幸知は、思い出したのかうんざりした顔をする。
「だよね……。一番の若手だからさ、これくらい食べれるでしょ? って感じだったよね。ごめんね」
私も、さっきの光景を思い出して謝る。残すのは勿体ないからと、全部焼いたのはいいけれど食べる人がいなかったのだ。
女性陣はそうそうにギブアップしているし、湊さんたちもお肉よりもお酒のおつまみにシフトしていた。
「本当ですよ。なんでこんなに沢山買ってきたんですかね」
幸知は、自分のお腹をさすっている。
「ごめんごめん、私が調子に乗って買いすぎたんだよね」
私たちの会話を聞いていた、七菜香が口を出してきた。
「七菜香たちも一緒に買いに行ったんだ?」
私は、てっきりいつもみたいに買い物を終わらせた湊さんたちと合流してここに来たのかと思っていた。
「そうなの。いつも全部お願いしてるから、偶には買い物から手伝おうかと思って。蘭もいたんだよ」
七菜香が、蘭の方を見た。
「言っとくけど、私は買いすぎだって言ったんだよ。なのに、湊さんが面白がっていいよってなんでもOK出しちゃったのよ」
蘭が、弁明している。私は、その時の光景を思い浮かべて二人ならありそうだと思った。
「じゃー、七菜香さんに責任もって食べてもらえば良かったですね」
幸知が、七菜香を恨めしそうな顔でみている。
「あはは。バレたのが今で良かったー。では、私は謝罪を兼ねて洗い物行って来まーす。幸知君たちは、ゆっくりしててー」
七菜香は、少しは悪いと思ったのかバーベキューで使ったトングやまな板などをまとめて洗い場に洗いに行った。それを見ていた湊さんは、自然と七菜香の後を追う。
七菜香だけを行かせるのは悪いと思ったので、私も行こうとしたが蘭に止められてしまう。
「咲、いいよ。湊さん行ったから二人にお願いしよう」
「え? そう? でも、なんか悪くない?」
「咲、気づかないの?」
蘭が、洗い場で楽しそうに料理道具を洗う二人を見て言った。私の、心臓にドキンッと大きく衝撃が走る。
(え? 気付かないって……)
私は、改めて二人の姿を垣間見る。そう言われたら、七菜香の湊さんを見る笑顔が違うかもしれない。それに湊さんの七菜香を見る瞳が優しい。
「そうなの? いつから?」
私は、驚いた表情で蘭を見る。
「わからないけど、多分そうだよ」
蘭が、手に持っていた飲み物を見る。何となく、私から視線を逸らしたような気がした。
それからの私は、心ここにあらずだった。普通を装ってはいたけれど、頭の中は嫌な思考で埋め尽くされていた。
別に湊さんのことが好きだと思っていた訳じゃない。そうじゃないとずっと思っていた。なのに、なぜこんなに七菜香と湊さんが付き合っているかも知れないと聞いて、心がざわざわしているのか……。
気が付いたら、私たちが借りたバーベキューの場所は綺麗に片づけられていた。お皿や飲み物、料理で一杯になっていたテーブルの上も綺麗さっぱり何も残っていない。
時間も、午後四時を過ぎている。蘭は、佐々木さんと倉田さんと三人で楽しそうにしゃべっていた。私は、ふと隣に立っていた幸知の顔を仰ぎ見る。
「大丈夫ですか?」
幸知が、私にそう言った。大丈夫ですかって? 何のことだろう? 私は、幸知に何を聞かれているのかわからなかった。
「え? 何が?」
私は、思ったことをそのまま口にする。
「だって、咲さんいきなりしゃべらなくなっちゃったから……」
彼は、突然大人しくなってしまった私の変化に気づいていた。自分では、平常心を取り繕っていたつもりだが上手くいっていなかった。
「ごめん。大丈夫だから。あれ? 七菜香と湊さん、戻って来ないね?」
借りていたバーベキュー場の片づけが終了したと、受付に報告に行ったきり戻って来ない。二人が戻って来たら、今日かかった費用を割り勘にして解散することになっていた。
二人が受付に行ってから、だいぶ時間が経っている。
「遅くない? もしかしたら、また口喧嘩してるのかも。私、ちょっと探して来るよ」
私は、いつもの二人を心配して受付の方向に足を向けた。
「咲、もうちょっと待ってみたら?」
蘭に止められたけれど、どうしても気になってしまったので私は足を進めた。受付に到着するも、七菜香と湊さんの姿がない。どこに行ったのだろうと、公園内を探す。
バーベキュー場があるくらいなので、とても広い公園だ。公園としての遊び場と、林に囲まれたバーベキュー場で背の高い木があちらこちらに立っている。
きょろきょろして遠回りしながら、自分がさっきまでいたバーベキュー場まで戻っていた。すると、七菜香らしい声がどこからともなく聞こえた。
「もういい加減戻らないと駄目だよ」
やっと見つけた。私は、七菜香の声だと確信して声の方に向かう。すると、ひと際大きな木の幹に寄りかかっている七菜香を見つけた。
七菜香の前には、距離を縮めた湊さんが立っていた。
「じゃあ、最後にもう一回だけ」
湊さんが、そういうと二人は夕暮れ時の林の中でドラマのワンシーンのようなキスをしている。私の胸は、はち切れそうなほどバクバクと音を立てた。
瞬時に振り返ってもと来た道を戻る。気づいたら全速力で走っていた。
さっきまでは、二人は付き合っているかもしれないと言う疑惑だった。キスをする二人を見たことで、それは確信になる。
胸が、黒くて嫌な気持ちにジワジワと汚染される。
(どうして七菜香なのだろう……)
そう心の中で言葉にしてしまったら、目元にじわじわと熱が上がってきた。心のどこかで、湊さんなら私を選んでくれるかもしれないと淡い期待を抱いていた。
彼が、好意を口にしてくれたら受け入れる準備があった。こんな風に傷つくのが嫌だから、私は彼への好意に蓋をしていたのだ。
(馬鹿だ私は……。泣く資格も怒る資格もある訳無い)
私は、足を緩めて止まった。こんな泣きそうな顔で、蘭や幸知の元に帰る訳に行かない。戻る前に一度トイレに寄って何とか体裁を整える。
貴重品と化粧道具を入れた鞄を持って来ていて良かった。深呼吸をして、さっき見た光景を頭から追い出す。
平常心平常心と心の中で何回も唱える。まだ今日は、幸知を送っていく仕事が残っているのだから。
「やっぱり最後の〆は、マシュマロだよね!」
七菜香が、回りサクッ中トロっとなっているマシュマロを頬張って幸せそうな顔をしている。
「どうしても、最後は甘いもので〆たくなるのは何でなんだろうね」
蘭も、マシュマロを口に入れて今日一の笑顔がこぼれている。もちろん私も、マシュマロを食べつつさっき自動販売機で買って来た缶コーヒー片手に幸せを噛み締める。
先ほど、幸知と話をしたばかりなので「幸せー」とは呟いてないけど……。油断したら呟いてしまいそうな美味しさだった。
「幸知君は、食べないの? 美味しいのに」
私は、横で缶コーヒーを飲む幸知に尋ねる。幸知は、お酒はあまり飲めないらしく今日は一日ソフトドリンクを飲んでいた。
なので、さっき幸知にもコーヒーを買ってきてあげたのだ。
「いや、さすがにもうお腹一杯です。みんな残ってるの全部俺に食べさせようとしてくるから……」
幸知は、思い出したのかうんざりした顔をする。
「だよね……。一番の若手だからさ、これくらい食べれるでしょ? って感じだったよね。ごめんね」
私も、さっきの光景を思い出して謝る。残すのは勿体ないからと、全部焼いたのはいいけれど食べる人がいなかったのだ。
女性陣はそうそうにギブアップしているし、湊さんたちもお肉よりもお酒のおつまみにシフトしていた。
「本当ですよ。なんでこんなに沢山買ってきたんですかね」
幸知は、自分のお腹をさすっている。
「ごめんごめん、私が調子に乗って買いすぎたんだよね」
私たちの会話を聞いていた、七菜香が口を出してきた。
「七菜香たちも一緒に買いに行ったんだ?」
私は、てっきりいつもみたいに買い物を終わらせた湊さんたちと合流してここに来たのかと思っていた。
「そうなの。いつも全部お願いしてるから、偶には買い物から手伝おうかと思って。蘭もいたんだよ」
七菜香が、蘭の方を見た。
「言っとくけど、私は買いすぎだって言ったんだよ。なのに、湊さんが面白がっていいよってなんでもOK出しちゃったのよ」
蘭が、弁明している。私は、その時の光景を思い浮かべて二人ならありそうだと思った。
「じゃー、七菜香さんに責任もって食べてもらえば良かったですね」
幸知が、七菜香を恨めしそうな顔でみている。
「あはは。バレたのが今で良かったー。では、私は謝罪を兼ねて洗い物行って来まーす。幸知君たちは、ゆっくりしててー」
七菜香は、少しは悪いと思ったのかバーベキューで使ったトングやまな板などをまとめて洗い場に洗いに行った。それを見ていた湊さんは、自然と七菜香の後を追う。
七菜香だけを行かせるのは悪いと思ったので、私も行こうとしたが蘭に止められてしまう。
「咲、いいよ。湊さん行ったから二人にお願いしよう」
「え? そう? でも、なんか悪くない?」
「咲、気づかないの?」
蘭が、洗い場で楽しそうに料理道具を洗う二人を見て言った。私の、心臓にドキンッと大きく衝撃が走る。
(え? 気付かないって……)
私は、改めて二人の姿を垣間見る。そう言われたら、七菜香の湊さんを見る笑顔が違うかもしれない。それに湊さんの七菜香を見る瞳が優しい。
「そうなの? いつから?」
私は、驚いた表情で蘭を見る。
「わからないけど、多分そうだよ」
蘭が、手に持っていた飲み物を見る。何となく、私から視線を逸らしたような気がした。
それからの私は、心ここにあらずだった。普通を装ってはいたけれど、頭の中は嫌な思考で埋め尽くされていた。
別に湊さんのことが好きだと思っていた訳じゃない。そうじゃないとずっと思っていた。なのに、なぜこんなに七菜香と湊さんが付き合っているかも知れないと聞いて、心がざわざわしているのか……。
気が付いたら、私たちが借りたバーベキューの場所は綺麗に片づけられていた。お皿や飲み物、料理で一杯になっていたテーブルの上も綺麗さっぱり何も残っていない。
時間も、午後四時を過ぎている。蘭は、佐々木さんと倉田さんと三人で楽しそうにしゃべっていた。私は、ふと隣に立っていた幸知の顔を仰ぎ見る。
「大丈夫ですか?」
幸知が、私にそう言った。大丈夫ですかって? 何のことだろう? 私は、幸知に何を聞かれているのかわからなかった。
「え? 何が?」
私は、思ったことをそのまま口にする。
「だって、咲さんいきなりしゃべらなくなっちゃったから……」
彼は、突然大人しくなってしまった私の変化に気づいていた。自分では、平常心を取り繕っていたつもりだが上手くいっていなかった。
「ごめん。大丈夫だから。あれ? 七菜香と湊さん、戻って来ないね?」
借りていたバーベキュー場の片づけが終了したと、受付に報告に行ったきり戻って来ない。二人が戻って来たら、今日かかった費用を割り勘にして解散することになっていた。
二人が受付に行ってから、だいぶ時間が経っている。
「遅くない? もしかしたら、また口喧嘩してるのかも。私、ちょっと探して来るよ」
私は、いつもの二人を心配して受付の方向に足を向けた。
「咲、もうちょっと待ってみたら?」
蘭に止められたけれど、どうしても気になってしまったので私は足を進めた。受付に到着するも、七菜香と湊さんの姿がない。どこに行ったのだろうと、公園内を探す。
バーベキュー場があるくらいなので、とても広い公園だ。公園としての遊び場と、林に囲まれたバーベキュー場で背の高い木があちらこちらに立っている。
きょろきょろして遠回りしながら、自分がさっきまでいたバーベキュー場まで戻っていた。すると、七菜香らしい声がどこからともなく聞こえた。
「もういい加減戻らないと駄目だよ」
やっと見つけた。私は、七菜香の声だと確信して声の方に向かう。すると、ひと際大きな木の幹に寄りかかっている七菜香を見つけた。
七菜香の前には、距離を縮めた湊さんが立っていた。
「じゃあ、最後にもう一回だけ」
湊さんが、そういうと二人は夕暮れ時の林の中でドラマのワンシーンのようなキスをしている。私の胸は、はち切れそうなほどバクバクと音を立てた。
瞬時に振り返ってもと来た道を戻る。気づいたら全速力で走っていた。
さっきまでは、二人は付き合っているかもしれないと言う疑惑だった。キスをする二人を見たことで、それは確信になる。
胸が、黒くて嫌な気持ちにジワジワと汚染される。
(どうして七菜香なのだろう……)
そう心の中で言葉にしてしまったら、目元にじわじわと熱が上がってきた。心のどこかで、湊さんなら私を選んでくれるかもしれないと淡い期待を抱いていた。
彼が、好意を口にしてくれたら受け入れる準備があった。こんな風に傷つくのが嫌だから、私は彼への好意に蓋をしていたのだ。
(馬鹿だ私は……。泣く資格も怒る資格もある訳無い)
私は、足を緩めて止まった。こんな泣きそうな顔で、蘭や幸知の元に帰る訳に行かない。戻る前に一度トイレに寄って何とか体裁を整える。
貴重品と化粧道具を入れた鞄を持って来ていて良かった。深呼吸をして、さっき見た光景を頭から追い出す。
平常心平常心と心の中で何回も唱える。まだ今日は、幸知を送っていく仕事が残っているのだから。