和彦を待たせたくなかったが人気のない場所に移動する。
久しぶりに見た夏姫は変わっていなかった。
日曜日なので遊びに都会に来ていたのだろう。

「無価値がご立派に浮気？」
「…何かご用？」

パシッ

夏姫は澪を鞄で殴る

「生意気なんだよ！和彦はアタシの彼氏になるんだから手出すなってんの！金剛田にチクるぞ！テメェは子供バカスカ産んでアタシら楽にさせる義務あるんだよ！」

「……」

澪は冷たい目で夏姫を見ていた。
昔は毎日、無能だゴミだなどと言われて泣いて就職してからも嫌がらせで一生続くんだと悩み、抵抗すれば身売りされた。見切りを付け、聖臣や和彦から優しさに触れ、強くなった気がした。

だから夏姫を愚かだと感じた。

「…なんだその目は逆らう気じゃねぇよな」

「…」


「澪ちゃん！！」
和彦が慌てて走ってきた。遅い澪を心配してきたんだろう。

駆け寄ろうとすると夏姫が和彦に近づく。
「和彦様ですね！私ィ〜伊澄夏姫です。澪は私の大事なお姉様なんですぅ〜」

「…夏姫？」
和彦の目が少し険しくなる

「澪ちゃん頬と腕が赤くなってる…」

「それはお姉様はそそっかしいからで〜」
夏姫は澪を睨みつけアッチに行けと合図を送るが澪は無視した

「そんな無…お姉様より可愛い私と一緒に遊びませんか？都会って迷っちゃうんですぅ〜」
猫撫で声の夏姫は和彦の腕にしがみつく。

和彦は腕を払い澪の元へ行き、抱きしめる。
夏姫に目を向け、言い放つ

「オレ、女の子大好きだけどお前みたいな勘違い性悪女マジで無理」

「なっ！？」

澪を胸の中に包みこむように強く優しく抱きしめた

「…帰れよ」

和彦は澪が聞いたこともない低い声を出した

「こいつはオレの女だ」


夏姫は去って行った。和彦は怒りの顔を見せたくなくて隠したんだろう。

「大丈夫？」
「うん、ありがとう。ごめんね…せっかくヘアメイクしてくれたのに」

「いいよ。またしてあげるから」





(『こいつはオレの女』か…)