和彦に料理のお手伝いをしてもらっていた。

「和彦さんは聖臣様みたいに外食ばっかなの?」
「オレも外食が多いけど自炊はたまにね」
「へ〜だからかな?包丁の使い方も手慣れるんだね」

笑いながら雑談していると和彦が真剣な顔になる

「ねぇ、澪ちゃん…澪ちゃんはオレに抱きしめたりキスされるの嫌?」
「えっ?」
頭をかきながら申し訳なさそうに語る。

「実はさ…オレたちの母親がかなり酷い人でさ、料理不味くなりそうな話なんだけど…」
和彦は聖臣と和彦が母親にされた虐待の話しをしてくれた。

「オレと兄貴はちょっと年が離れてる分、虐待された年数も長いし小さいオレを庇って慰めて…泣きたくても我慢して兄貴は苦しんでたんだよ。」

「……」

「兄貴が女嫌いなのも母親がトラウマが原因なんだ。…オレは普通なんだけどさ」
和彦自身にも母親の存在がトラウマで愛情や温もりを求めて女性と遊んでいたことは澪に伏せた。


「言い訳とか同情させたいとかじゃなくて、愛情とか上手く表現できなくて澪ちゃんに兄弟共々迷惑かけてるんじゃないかと思ったんだ」

聖臣と和彦も澪同様に愛を知らずに育った。
祖母の存在が兄弟を道を歪ませずに済んでいるんだろう。

澪は和彦をみつめた

「いきなり抱きしめられたりキスされるなんて普通の女の子なら嫌でしょうね…でも私は嫌じゃないよ。こんなこと言ったら私、男好きになっちゃうけど…」

澪もまた愛を知らない。

「そっか…ありがとうな、澪ちゃん愛してるよ」

女性慣れしている和彦の軽いノリだろうと思いつつ、和彦のストレートな言葉にドキドキした

その後の夕飯の時間はずっと和彦が料理を褒めてくれて嬉しかった。家族には作った料理を捨てられたり、罵声を浴びせられ泣きながら作っていて褒めてもらえなかった。

和彦のさりげない言葉は澪を救ってくれた。

兄弟仲は良好のようで今夜は酒を酌み交わすとのことで、澪の今日の仕事は終了だ