スーツに着替え金剛田のいるベッドルームへ

「金剛田さん、今回の件、破棄させてください!」

「困った娘《こ》でしゅなぁ〜キミの家族に結納金のしはりゃひ(支払い)も婚姻届もてぇぃしちゅ(提出)済みなんでしゅよ?契約書にしゃえん(サイン)したでしよぇ〜」

金剛田の滑舌の悪さが怒っているからか更に悪くなっていた


「いいえ、無効です。」

澪は金剛田を強い目で見つめた。

「なぜなら…あなたは私と偽装結婚しようとしたからです」

「…」

「正確には偽装(ぎそう)でしょうか…金剛田権造という人間はいない。……あなたは先日、私が会議でお会いした方ではないですか?」


澪の話しを聞いていた金剛田(?)はニヤリと笑った


金剛田権造と名乗った男は特殊メイクやお腹に詰めモノなどを脱ぎ捨てた。

現れたのは澪が見惚れてしまった程の美形だった


「よくわかったな」
「声がとてもお綺麗でしたから」

「ふん。言っておくが俺の正体を見破った事は褒めてやるが、結納金も支払い済み、婚姻届も部下に渡して今頃、受理されている。だから無効にはならない」

「そ、そんな…」
相手の不自然さを指摘すれば偽装結婚として無効だろうと思っていたのに


「だが俺の正体を見破った褒美をやろう。お前の選択肢は二択だ」

「えっ」

「1つ目。俺は金剛田の時に言ったように財閥に産まれた長男として跡継ぎは絶対だ、だからお前は俺の子を産め。もちろん贅沢な暮しも保障してやる。ただし子供が産まれたら一生困らない慰謝料渡してやるから離婚してもらう」

「子供だけ欲しいんですか?」

「ああ。恋愛も結婚生活とやらも俺には不要。妻は子供作るための道具でしかないし子供が出来れば捨てるのみだ」

「そんな…」

男は話しを続ける。

「2つ目。契約書の最後に"契約が破られた時は違約金として3倍の支払いを要求する”と。そして"支払いが困難な場合は財閥監視の下、労働を強制する”とな」

「つまり…」
「結納金…という名の契約金になるが、1億払っているから3億の借金を背負うことになる。金額提示はお前の家族の希望額を出したんだから家族を恨め。さてどちらかを選べ。」