「俺だけ……、特別ってこと?」
「なっ……、なんでそういう解釈になるんだよ」
「素直じゃないな……」

低音で突き放したような声音で呟くと、咲良は不安そうな表情になった。そして、意を決したように静かに口を開く。

「……俺、最近おかしいんだ。お前を見てると、もし俺が女だったらどんな風に接してくるのかな…とか、彼女だったら…とか、変なこと考える。だから……、女みたいな格好の巫女姿では会いたくなかった」
「それは……」
「ごめん……もう忘れて……。それも無理だったら友達やめてくれていいから」

射貫くような隼人の視線から逃れようと俯く咲良の顎を、掴んで上を向かせる。

「忘れないし、友達もやめない。どんな格好をしてても、俺は咲良が好きだ」

自然と零れた言葉で、自分の気持ちを自覚した。
自覚したら、もう止めることはできない。

「それ……、どういう意味……っ」

咲良の言葉を最後まで聞かずに、唇を塞ぐ。柔らかく薄い唇を啄むように、優しく口付けた。

「……っ」
「こういう意味だよ……」

固まった咲良の耳元でそっと囁くと、ヒュ――という音が上がり、ドンッと弾けた。

「花火大会、始まっちゃったな。咲良を見つけたら合流するって言ってたんだけど……」
「……り」
「え?」
「無理……。動けない……」
「……俺も無理だな。そんなかわいい顔、あいつらには見せられない」

にやりといたずらな顔で笑うと、頬を赤く染めた咲良の顔は、茹で蛸のように真っ赤になった。どちらともなく、笑みが零れる。

そしてもう一度、吸い寄せられるように口付けを交わした。

月は見えるが、木々が邪魔して花火はよく見えないこの場所で、二人寄り添いながら夜空に打ち上る音だけを聞いていた――。