「隼人~~! 終わったぞ~~!!」
「これは完全に固まってるな……」

茶化す友人たちの声で我に返った隼人は、「びっくりした」とだけ呟いた。

「さすがの隼人も驚いたか!! 何をしても動じない隼人も、これにはビビるよな!!」

爆笑する友人たちにばしばしと肩を叩かれるが、隼人はまだぼんやりとしていた。

「あれは……」

この二人とともに、隼人にはいつも一緒につるんでいる友人がもう一人いる。その彼が、あの狐面の彼女にそっくりだったのだ。同じクラスで、隼人の目の前に座る鳥居咲良(とりいさくら)に。

「咲良だよ。咲良本人。あいつ、ここの神社の三男坊だからな。それは隼人も知ってるだろ」
「あ……ああ、でも今日はお祭りの手伝いだから一緒に行けないって……」
「あれが手伝い。妹か姉貴でもいればいいんだろうけど、咲良のとこ男三兄弟だから、昔からの成り行きで毎年巫女舞に出てるんだよ」
「そう……、だったのか」

化粧をしていたのか、伏せられた瞼から伸びる長い睫毛と、紅を引かれた薄い唇が、妙に目に焼き付いて離れない。

「それで……、今咲良はどこに……?」
「巫女舞が終わったら、もうお役御免だと思うぜ。社殿横の社務所で着替えてるはずだから、着替え終わったら出てくるんじゃないか」
「……そうか。ありがとう!」

友人の言葉を聞くやいなや、隼人は気が付いたら、駆け出していた。

「あ、おい! 隼人!! この後の花火大会は!?」

驚く友人たちに、振り返りながら叫ぶ。

「咲良を探してくる。見つけたら合流するから」