「おっ、小中学生の部が終わったところか。そろそろ出てくるな」

にやにやと笑う友人たちに、一体何が出てくるのか全くわからず首を傾げる。

「まあまあ、見てのお楽しみ!」

父の転勤でこの土地に越してきて数か月。都会から来た奴は垢抜けてるわ――! と揶揄いながらも、右も左もわからない隼人をかまってくれる気のいい友人たち。どちらかというと寡黙で仏頂面、一見ちょっと怖い……とよく言われる隼人に、友人たちは気さくに接してくれる。

屋台で買ってきたたこ焼きや焼きそばを皆で頬張っていると、雅楽の音色が変わり、またぞろぞろと四人の巫女が出てきた。先ほどの子供たちと装いはほとんど同じだが、手には鈴ではなく扇を持っている。

四方の配置についた巫女たちのあとに続き、そろりそろりと巫女がもう一人、中央に進んで止まった。他の四人と異なり、狐の面を付けた彼女は、その場の空気が凛と張り詰めるような、荘厳な気配を身に纏っていた。


制止した彼女の動きに合わせ、雅楽の音色も止まる。

一瞬の静寂。

巫女たちが同時に天に掲げた扇がゆらりと振り下ろされ、笙の音色で雅楽の演奏が始まった。

周りの喧騒も、暑さも気にならず、ただ目の前で舞う彼女に目が釘付けになった。ドンドンという楽太鼓、雅楽器の音色と歌に合わせた足使い、腕の動き、絹擦れの音。指の先まで滑らかで艶やかで、すべてが優美だった。先ほどまでじゃれ合い、ふざけ合っていた友人たちも、巫女舞に集中しているのか誰一人口を開かない。


曲の終盤、扇で顔を隠した彼女が、流れるような美しい動きで、狐の面を外した。

「…………え」

舞の流れでこちらを向いた彼女と、目が合った。
向こうも、少し驚いた顔をした気がした。


面の下は隼人がよく知る顔だった。