もう流瑠ちゃん、なにとんでもないことをしてくれちゃったわけ!
今朝の出来事がフラッシュバックしてきて、胃がきしむ。
登校後の教室でビックリしたんだから。
心停止寸前、魂が天に召されるかと思ったんだから。
奏多くんのキャップを深くかぶりなおし、僕は記憶を蒸し返さずにはいられない。
今朝教室に入ったら、ニマニマ嬉しそうな流瑠ちゃんが黒板に大きな文字を書き連ねていた。
僕だけじゃない、クラスのみんなも黒板に大注目。
チョークを置いた流瑠ちゃんは、キラキラ顔で黒板を叩いて。
「変更になったよ、みんなよろしくね」と、ポニーテール大振りでニコリ。
ルンルン跳ねる琉留ちゃんの声同様、黒板の文字も浮かれていた。
でも僕の肝は瞬間冷凍。
北極に行って白熊とかき氷でも食べたんですか?というくらいの、冷え冷えのガチガチさ。
【諸事情により、霞くんと輝星くんでテニスの試合に出ることになりました!】
黒板に書いてある文章を見て、ドッキリだと思い込みたかった僕が失望したのは
『はいみんな、ナイスタイミングで登校してきたテラっちに拍手~』と僕を手のひらで指した流瑠ちゃんに加え、拍手パチパチでクラスメイト達が僕を取り囲んできたから。
『萌黄って、調理部だけど運動神経いいもんな』
小6まで軟式テニスに打ち込んでいたおかげか、たいていのスポーツはそこそここなせるけど。
『県大会優勝の霞と組むわけだし、絶対いい結果残せるって』
待って、期待しないで、勝手に話を進めないで。
僕はいま、テニスに出るって聞いたばかりなんだよ。
『男テニの試合は球技大会の花形じゃん。校長も毎年楽しみにしているよね』
体育大会は体育館でやる種目がほとんどだけど、唯一男子テニスの試合だけは外。
雨なら高校の近くの室内テニス場を貸し切ってまでテニスの試合をするし、決勝戦は全生徒が見れるように会場までのバスも手配してくれるという熱のいれよう。
球技大会に女子テニスの試合はない。
昔はあったらしいが、男子テニスの試合を絶対に見逃したくない女子たちの強い要望でなくなったんだとか。
『輝星くん、霞くんと組んで絶対に優勝してね』と控えめなクラスメイトにまで期待され、僕の胃がさらに縮こまる。
霞くんは高校1のイケメンといっても過言ではない。
見目麗しくて優しい王子様だって、同級生にも下級生にも大人気。
一緒にダブルスを組んだら、僕まで注目されてしまう。
それ以上の問題は、霞くんは僕なんかとテニスをしたくないはずってこと。
中1から避けられてきたわけだし。
あれ? そういえば昨日のバスの中で、霞くんが『テニスするの?』って言ってたけれど、もしかして球技大会のことだった?
霞くんは僕とテニスの試合に出るってことを、昨日の帰りには知っていたんだ。
僕たちが組んでテニスの試合に出るのは決定事項なの? 覆らないの? なんでこんなことに……
そのあと登校してきた体育委員の堀北くんから事情を聴き、一連の犯人が発覚した。
黒板書き書きと拍手誘導の時点で、親友の腐女子ちゃんに目星をつけてはいたが大当たり。
脳も心もだいぶ落ち着いた2限目の授業中、机に立てた教科書で顔を隠し『僕をはめたな!』と流瑠ちゃんを睨んでみた。
……ものの、流瑠ちゃんへのダメージはゼロだった。ただただ僕の疲労が蓄積されただけ。
流瑠ちゃんは悪びれもせず、満面の笑みで僕に両手ピースを送ってきて。
――腐女子ちゃんの行動力を見くびっていた……
自分が甘すぎだったと、気力プシューで僕は片ほっぺを机に押し当てたのでした。
今朝の出来事がフラッシュバックしてきて、胃がきしむ。
登校後の教室でビックリしたんだから。
心停止寸前、魂が天に召されるかと思ったんだから。
奏多くんのキャップを深くかぶりなおし、僕は記憶を蒸し返さずにはいられない。
今朝教室に入ったら、ニマニマ嬉しそうな流瑠ちゃんが黒板に大きな文字を書き連ねていた。
僕だけじゃない、クラスのみんなも黒板に大注目。
チョークを置いた流瑠ちゃんは、キラキラ顔で黒板を叩いて。
「変更になったよ、みんなよろしくね」と、ポニーテール大振りでニコリ。
ルンルン跳ねる琉留ちゃんの声同様、黒板の文字も浮かれていた。
でも僕の肝は瞬間冷凍。
北極に行って白熊とかき氷でも食べたんですか?というくらいの、冷え冷えのガチガチさ。
【諸事情により、霞くんと輝星くんでテニスの試合に出ることになりました!】
黒板に書いてある文章を見て、ドッキリだと思い込みたかった僕が失望したのは
『はいみんな、ナイスタイミングで登校してきたテラっちに拍手~』と僕を手のひらで指した流瑠ちゃんに加え、拍手パチパチでクラスメイト達が僕を取り囲んできたから。
『萌黄って、調理部だけど運動神経いいもんな』
小6まで軟式テニスに打ち込んでいたおかげか、たいていのスポーツはそこそここなせるけど。
『県大会優勝の霞と組むわけだし、絶対いい結果残せるって』
待って、期待しないで、勝手に話を進めないで。
僕はいま、テニスに出るって聞いたばかりなんだよ。
『男テニの試合は球技大会の花形じゃん。校長も毎年楽しみにしているよね』
体育大会は体育館でやる種目がほとんどだけど、唯一男子テニスの試合だけは外。
雨なら高校の近くの室内テニス場を貸し切ってまでテニスの試合をするし、決勝戦は全生徒が見れるように会場までのバスも手配してくれるという熱のいれよう。
球技大会に女子テニスの試合はない。
昔はあったらしいが、男子テニスの試合を絶対に見逃したくない女子たちの強い要望でなくなったんだとか。
『輝星くん、霞くんと組んで絶対に優勝してね』と控えめなクラスメイトにまで期待され、僕の胃がさらに縮こまる。
霞くんは高校1のイケメンといっても過言ではない。
見目麗しくて優しい王子様だって、同級生にも下級生にも大人気。
一緒にダブルスを組んだら、僕まで注目されてしまう。
それ以上の問題は、霞くんは僕なんかとテニスをしたくないはずってこと。
中1から避けられてきたわけだし。
あれ? そういえば昨日のバスの中で、霞くんが『テニスするの?』って言ってたけれど、もしかして球技大会のことだった?
霞くんは僕とテニスの試合に出るってことを、昨日の帰りには知っていたんだ。
僕たちが組んでテニスの試合に出るのは決定事項なの? 覆らないの? なんでこんなことに……
そのあと登校してきた体育委員の堀北くんから事情を聴き、一連の犯人が発覚した。
黒板書き書きと拍手誘導の時点で、親友の腐女子ちゃんに目星をつけてはいたが大当たり。
脳も心もだいぶ落ち着いた2限目の授業中、机に立てた教科書で顔を隠し『僕をはめたな!』と流瑠ちゃんを睨んでみた。
……ものの、流瑠ちゃんへのダメージはゼロだった。ただただ僕の疲労が蓄積されただけ。
流瑠ちゃんは悪びれもせず、満面の笑みで僕に両手ピースを送ってきて。
――腐女子ちゃんの行動力を見くびっていた……
自分が甘すぎだったと、気力プシューで僕は片ほっぺを机に押し当てたのでした。