『数百年ぶりですね、十六夜』

翡翠(ひすい)と呼ばれ、先ほどまで亀だった人型の男性の姿になった。
玄武とも呼ばれた男性は十六夜と同じような和装と洋装が混じった不思議な服装に、胸元まである黒い髪を1つに結い、ミントグリーンの瞳に眼鏡を掛けている。声も立ち姿も綺麗。

『なんだ…嫌味でも言いに来たなら帰れ』
恩神(おんじん)に向かって失礼ですね。…勘違いしないで下さい。(わたくし)は貴方など興味ありません。興味があるのは貴方の神子です』

『榛名に?』
ちょっとイラつく十六夜。
『その榛名殿にです。神が興味を持ちはじめましてね、見てこいと。私も希少な癒やしの力を持つ神子には大変興味があり、貴方の住処に行ったのですが行き違いだったようです。帰る途中に十六夜を見かけたからついでに助けただけですよ』

『そりゃどうも…』
十六夜は不貞腐れてしまった。他の奴が俺の榛名に興味持って欲しくないのだ。

『で、榛名殿はどこですか?』
『…わからん。』

「あの〜お話し中ゴメンナサイなの〜ムクによると天狗の当主の敷地内の牢屋らしい場所に閉じ込められて今は気を失って目を覚まさないらしいなの〜」

『天狗…ですか。なるほど癒やしの力を持つ者は価値が高いですからね』

『あの小僧か…』

「十六夜様。昨日の報告から十六夜様が来るまでの間の報告がまだでしたわん。ワタクシは傷が治っておりませんから喋るの辛いのでコチラをご確認くださいますわん」
葵は羽根を渡す。