========== この物語はあくまでもフィクションです =========
============== 主な登場人物 ================
南部(江角)総子・・・大文字伝子の従妹。南部興信所所長の妻。EITOエンジェルのチーフ。
大前英雄管理官・・・EITO大阪支部の管理官。コマンダー。総子からは『兄ちゃん』と呼ばれている。
足立祐子・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。
石動悦子・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。
宇野真知子・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。
丘今日子・・・EITO大阪支部メンバー。看護担当。元レディース・ホワイトのメンバー。
河合真美・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。
北美智子・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。
久留米ぎん ・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトの総長。
小峠稽古 ・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。
和光あゆみ・・・元レディース・ブラック7のメンバー。EITO参加予定
中込みゆき・・・元レディース・ブラック7のメンバー。EITO参加予定。
海老名真子・・・元レディース・ブラック7のメンバー。EITO参加予定。
来栖ジュン・・・元レディース・ブラック7の総長。
愛川いずみ・・・EITO大阪支部メンバー。通信担当。
白井紀子・・・EITO大阪支部メンバー。資材・事務担当。
芦屋一美(ひとみ)警部・・・三つ子の芦屋三姉妹長女。大阪府警からの出向。総子からは『ひとみネエ』と呼ばれている。
芦屋二美(ふたみ)二曹・・・。三つ子の芦屋三姉妹の次女。陸自からの出向。総子からは『ふたみネエ』と呼ばれている。
芦屋三美(みつみ)・・・芦屋財閥総帥。総合商社芦屋会長。EITO大阪支部のスポンサー。総子からは『みつみネエ』と呼ばれている。
南部寅次郎・・・南部興信所所長。総子の夫。
横山鞭撻警部補・・・大阪府警の刑事。
幸田所員・・・南部興信所所員。総子のことを「お嬢」と呼ぶ。
花菱所員・・・元大阪阿倍野署の刑事。今は南部興信所所員。
友田知子・・・南部家の家政婦。
小柳警視正・・・警視庁から転勤。大阪府警テロ対策室室長。
真壁睦月・・・大阪府警テロ対策室勤務の巡査。
藤島一郎・・・藤島病院院長。
藤島ワコ:::藤島病院看護師。院長の娘。
横沢きみ・・・南部興信所所員。事務をしている。
倉持悦司・・・南部興信所所員。
==================================================
= EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す =
==EITOエンジェルズとは、女性だけのEITO大阪支部精鋭部隊である。==
午前11時。藤島病院。一美の病室。
女性警察官達が見舞いに来ている。そこにやってくる、大前とEITOエンジェルの面々。
「一美ネエ。私、何て言うたらいいのか・・。」「アホやナア、総子。ウチらは一美ネエの分も頑張るさかい、ちゃんと養生してや。そう言うたらエエねん。」
大前が総子の後ろから言った。「うん。」
「可愛い。こんな可愛い子が第一線で悪と闘うEITOエンジェルのリーダーやなんて。」
「可愛い?んまあ、可愛いかな。この子、これでも24歳よ。人妻よ。見えないでしょう、睦月。総子。この子、真壁睦月。今度転勤してくる、小柳警視正の下で働くことになっているテロ対策室付けの巡査よ。よろしくね。」と一美が紹介すると、「え?24歳?17歳位に見えますヤン。私、22歳。私よりおねえさんやわ。よろしくお願いします。」と、睦月は無理矢理の大阪弁で言った。
「よろしく。EITOエンジェルス行動隊長の南部総子です。テロ対策室?小柳警視正?って、何のこと?」と一美に総子は尋ねた。
「済まん済まん。一昨日、辞令来とったわ。総子に言うの、忘れてたわ。ごめんな。」
大前が言うと、「兄ちゃん、忘れたらアカンやんかあ。」と、総子は膨れた。
睦月は、「ご兄弟でしたか。そしたら、結婚される前は、大前さんでしたか。」と言った。
「ちゃうちゃう。」と、大前と総子は異口同音に反応した。
「睦月。『ぎきょうだい』よ。戸籍上のきょうだいじゃなくて、『兄弟仁義』のぎきょうだい。」「親の血を引くぅ、ですか。」と。睦月は歌った。
「やーさんみたいですね。」一美は大笑いしたが、「たたったった!!」と顔をしかめた。
「傷口塞がる迄は、吉村新喜劇はやめときやあ。」と、藤島院長は言った。
「そう言えば、総ちゃんの従姉は『ぎきょうだい』多いらしいな。池上先生の話によると。」と、院長は言った。
「うん。なぎさちゃんも。あっちゃんも、みちるちゃんも、伝子ねえちゃんのこと『おねえさま』って言うてる。」と、総子は頭を撫でる藤島院長に言った。
「それだけ慕われてるっちゅうことやな。それで、警視正は?」と、大前は睦月に尋ねた。
「今日中、って聞いてますけど。総子さん、テロ対策室来ますか?」と、今度は睦月から総子に尋ねた。
「あ。行く行く。兄ちゃん、エエやろ?」「エエやろ?って、行く気やろ?」と、大前は、にっこり笑って言った。
正午。南部興信所。
「たまには、蕎麦もええなあ。」と、南部は、あっと言う間に平らげた。
「そやろ?」と言った総子も、もう器が空だ。
「みんな早いなあ。」と言ったのは、定年退職した社員の後釜に最近入った、横沢きみだった。
よく見ると、花菱調査員も幸田調査員も器が空だ。
「上手いけど、少ないな、ここ。きみちゃん、後でおにぎりこうてきて。」と、総子は言った。「まだ、食うンかい、お嬢。」と幸田がチャチャを入れた。
「ウチ、育ち盛りやねん。」「もう充分・・・育ってないとこもあったな。」と、幸田は言った。
「あんた、それ、セクハラちゃうん?ペチャパイって言いたいんやろう?」
「幸田。言い過ぎ。そのペチャパイに惚れたんは俺や。」と、南部が仲裁に入った。
睦月は、食べ終えると、黙って出て行った。
その時、電話がかかってきた。南部が出た。「はい・・・はい。」
「総子。お座敷や、EITOから。」「ウチは、売れっ子の舞妓どすか?」
皆、知らん顔をした。
午後1時。EITO大阪支部。会議室。
大前が、新顔を皆に紹介していた。
「今後の事を考えて、色々と新体制が進みつつある。まずは大阪府警テロ対策室が正式発足して、その対策室の室長に就任された小柳警視正や。」と、大前は小柳に席を譲った。
「こんにちは。芦屋一美警部の提言で、テロ対策室が発足しました。今までは仮の体勢で警部が受け持っていましたが、ご存じの通り、マフィアは大阪にも魔の手を伸ばすようになりました。警部が負傷されたので、ご一緒にご挨拶出来ないのが非常に残念です。テロ対策室は、EITO大阪支部と常に連携、連絡を取り合って、その魔の手から大阪府民や近隣他府県の平和の為に、不逞の輩と闘っていきます。また、必要に応じてEITO東京本部とも連携します。皆さん、よろしくお願い致します。」
拍手が起こった。「兄ちゃんとは違うなあ。」と思わず呟く総子に「そんなに褒められると照れるなあ。」と大前は返した。
「次に、馬場3佐や。この間はバタバタしてて正式な挨拶まだやったからな。」大前は言い、馬場を紹介した。
「馬場力(ちから)です。仲間には、クソヂカラって呼ばれています。火事場のクソヂカラからのあだ名ですね。まあ、名前の通り、力はあります。アームレスリング得意ですから。」
ぎんは、馬場に質問した。「東京本部みたいな、ホバーバイク乗る人ですか?」
「その通り。来月、中部方面隊から、私のように出向する者が2名参加します。都合3名のEITO男性隊員ですね。」
「コマンダー。ホバーバイク、足りへんのチャイますのん。」と、悦子が言った。
「うん。今日の夕方、見学会する予定の正式支部が今月中に出来るやろ。そこに3台のホバーバイク駐輪場も出キルンや。ええやろ?あ。オスプレイもな。正式支部に引っ越しや。オスプレイは、総子とこのマンションの緊急用と2台体勢は維持や。」
「兄ちゃん、女子の隊員は?ヘレン、抜けたし・・・。」
「元レディース・ブラック7から3名入る。来栖さん。」大前が呼ぶと、白井紀子が来栖を連れてきた。
「みんな、久しぶりやな。天王寺動物園で暴れて以来やな。今日は連れて来てないけど、大前さんの推薦で、来月からウチの元メンバーも3人参加することになった。残念ながら、私は3人の子育てで忙しいから遠慮するけどな。よろしゅう頼むわ。大前さん、大総長・・・あ、チーフやったな。」
元総長の来栖の挨拶の後、大前は「他にも中部方面隊の自衛隊参加者が来月増える。大増員や。総子の腕の見せ所や。それと、まだある。アメリカ陸軍から2人、オスプレイの操縦士が来る。二美も操縦士から解放されるから、EITOエンジェルス参加や。」と、言った。
「兄ちゃん、大好きや。1回くらいやったら、チューしてやってもエエで。」「その後でピコピコハンマーか。堪忍してくれ。」と、大前は総子を拝んだ。
皆は笑った。
午後4時。EITO大阪支部建設予定地。
予定より早く、現場に着いた、大前達は、一瞬頭が真っ白になった。事務所予定スペースの一部が燃えている。
大前は、建設作業員に声をかけたが、返答はない。川はすぐ側を流れている。
「皆、バケツリレーや!」大前は叫んだ。幸い、工事に使っているバケツは沢山あった。文字通り、バケツリレーが始まった。総子は、警察と消防、三美に連絡をした。
1時間後。火は鎮火した。
馬場が走って来た。「コマンダー、これを。既に大阪府警に送って、手配をして貰っています。」
馬場は、消火作業には参加せず、野次馬を撮影していた。これは、筒井に教示された、男性隊員の遊軍支援行動だ。
「早速、ご苦労やったな、3佐。こいつが放火犯か。あ。消防には?」「府警から送ってくれています。」
覗き込んだ、総子は、「これ、学生やな。徹が通っていた高校の制服かも。」と言った。
「お前が潜入捜査した時のか。よし、学校に確認してみる。」大前は、件の学校に問い合わせ始めた。
三美が近寄って来た。「ありがとう、三美ネエ。」「間に合って良かったわ。少しだけど、積んでいた、消火弾、役に立ったわね。しかし、もう新しい支部がばれてるとはねえ。でも、大丈夫よ、総子。かえって、今の瞬間の方が良かったかも。何故なら、セキュリティーは本部より堅固よ。今、バケツリレーした、この川底から火事の時の消化システムで消化出来るから。」
「工事関係者も、一時的に眠らされただけのようです。本部の方なら100%自衛隊で工事するんですが、一部建設会社に外注していたので、隙を突かれましたね。」
馬場が、三美達と話していると、「学校から、色んな角度の制服の写真を府警に送ってくれるそうや。皆で一旦帰ろうか。」と、大前は言った。
午後3時。作戦室。
総子は、紀子に揺り動かされ、目を開けた。
「総ちゃん、大丈夫?」「のりちゃん。ウチ、寝てたん?」
横から、大前が言った。「大きないびきかいてな。どんな夢見とった?」
「みんなで、新しいEITOの基地見に行ったら、火事になっててな。バケツリレーで消したけど、現場から逃げたんが、徹の行ってた学校の制服に似てて・・・。」
「徹って、潜入捜査の時の。もう転校したんやろ?」「北海道の高校に。大学も、そっち行くって言うてた。」
「徹の事はともかく、新しい基地は無事や。ただ、ダミーで建設中やった建物にボヤが出た。その話をわしらが話してたのを寝ながら聞いてたんやな。お前、疲れてるねん。南部さんと三美で話し合って、三美の会社から、調査員用の人員が派遣されることが決まった。あっちもこっちもでは、お前も集中出来んやろ。お前はこっちがメインや。調査員は誰でも出来るが、行動隊長はおまえしか出来ん。来栖から、詳しいことは聞いた。敵対していたホワイトとブラック7を平定して、解散、更生までさせたのは、お前や。斉藤理事官は、伝子さんの従妹やから縁故採用したんとチャウで。お前の統率力に賭けたんや。」
総子は黙って頷いた。紀子は、黙って濃いコーヒーと煎餅を総子の前に置いた。
「新しい基地はなあ。もう9割以上出来てるんや。後は内装や。今月中に間に合う。もしもの時は、仮の体勢で出発するで。」
3人が寛いでいると、男性女性の警察官が10数名入って来た。会議室に3人が移動すると、かなり窮屈そうだった。
「チーフ。これから皆で新基地に向かう。万一のことを考えて、三美の案で、隠密行動を取る。」「隠密って、時代劇みたいやな。」「ああ。相手は忍者やさかいにな。今、三美に用意して貰ったマイクロで警察官がやって来た。万一の為の警備や。入れ替わりに、我々は新基地に向かう。さっき言うてた、ダミーの建物は実はEITOの倉庫にする予定やった。そこに火イ点けられたんや。新基地もここも警戒をせんとアカンねん。」
大前の言葉を引き受けて小柳は、「芦屋一美警部が襲撃されたことも鑑みて、こういう作戦は必要なことです。チーフに先に話を通す前に我々で決める場合もあります。勘弁して下さい。」と言って、頭を下げた。
「そんな、頭上げて下さい。ウチはそんな事は気にしません。さ、皆、見学にゴウ!や。」
午後4時。EITO大阪支部・新基地。
マイクロバスは色んな所を迂回して、到着した。出入り口は、運送会社ビルという建前になっている。総子達は、その従業員を装って、出勤する。ある者は普段着で、ある者は事務服で。
マイクロバスの中で、大前は簡単に説明した。隣接する建物は工場風で、運送会社ビルと中で繋がっている。
通路を渡ると、広い会社のオフィス風のパーティションになっていた。
「東京本部と違い、初めから男性隊員も考慮してあるの。だから、トレーニングルームもロッカールームも宿直室も別々にあるわ。もうプロレス会場に格闘練習しに行く必要もないわ。倉庫予定の建物はもう使えないから、武器保管庫は、ここと、別の場所に用意するわ。あ。ここは馬場さんが入る宿直室ね。」
馬場が目を丸くして、「アパートで充分ですが・・・。」と言うので、「普段はアパート住まいよ、馬場さん。ここは宿直室。後で、社員にアパートを案内させるわ。今日中にホテルから移って頂戴。」と、三美は言った。
「三美ネエ。これ何?お風呂?」と、覗き込んでいた総子がはしゃいだ。
「そう。シャワールームとお風呂。機材は、全て廃業したお風呂屋さんから頂戴したから、リフォーム建築ね。あ。馬場さんは・・・時間決めてね。混浴はNGよ。」
「あ、はい。」「ゴメンね、馬場ちゃん。女子優先で。」と横から総子が言った。
「馬場ちゃん・・・。了解しました。、チーフ。」
「ここが、肝心な作戦室。」と三美が言うと、「いろんな機材ありますねえ。」と稽古が言った。
「EITO本部も、もうすぐ本稼働する。その本部とここは直接繋がる。電話もホットラインがあるわ。ああ、それと、大阪府警にも総子のマンションにもね。」
午後7時。総子のマンション。
とんかつライスが用意されていた。家政婦の知子はもう、いない。
「そうか。いたれりつくせりやな。全部、総子の夢の通りやな。」
「あ。どうした、総子。」「あんた、ウチのホッペタ、つねってみてや。」
南部は、総子に言われた通り、頬をつねった。
「たたたたたたったた!!痛い!!」「夢ちゃうわな。夢やったら、こんな上手いとんかつの筈はない。」
南部のスマホが鳴った。
南部が電話に出ると、花菱からだった。「何やて?」
電話を切ると、南部は放心した顔だった。「どないしたん?なあ、あんた。」
「総子。幸田が怪我した。あおり運転に見せかけた、殺人未遂や。」
総子は、白いホットライン電話で三美に電話した。
「分かった。二美がクルマ出すから、駐車場に降りて。」
南部と総子が駐車場に降りると、既に二美が待機していた。
ランボルギーニを発車させると、「一美と同じ病院で助かったわ。」
午後8時。藤島病院。
診察室から、院長が出てくる。「芦屋一族用にワンフロアあけとこかあ?」と、皮肉を言って、院長は去って行った。後ろから続いた看護師が院長に『アカンベエ』をして、総子達にウインクをして去った。
花菱と、包帯を巻いた幸田が出てきた。
「骨は折れてないようです。それより、所長、お嬢、これを。」と、花菱は紙片を出した。
《EITOに協力するのは止めろ。さもないと、こんな程度じゃ済まなくなる。お前らは浮気調査してればいいんだ。》
「犯人の顔は分かっています。カイシャに電話して、新人の倉持に、書類を警察に渡すように言ってあります。横ヤンが取りに来てくれます。」
「どういうことですか?」と、小柳が駆けつけ、幸田と花菱に尋ねた。
「偽の、浮気調査やったんです。たまたま、所長が大前さんと話しているのを聞いた可能性があります。」と、幸田が言った。
件の紙片を見た小柳は、「大胆だな。警告か。南部さん、当面、EITO、府警、興信所は別行動を徹底しましょう。連絡方法は幾らでもありますから。」と言った。
「それがいいですね。」と、駆けつけた大前が言った。
「総子。充分気イつけや。」「分かった、兄ちゃん。」
その夜は、三者三様に分かれて帰宅した。
幸田は、一美に挨拶してから帰った。
「池上さんにも連絡しとくか。」と、見送りながら、藤島院長は呟いた。
「お父さん、元カノには直接電話する?」と、看護師のワコは言った。
―完―
============== 主な登場人物 ================
南部(江角)総子・・・大文字伝子の従妹。南部興信所所長の妻。EITOエンジェルのチーフ。
大前英雄管理官・・・EITO大阪支部の管理官。コマンダー。総子からは『兄ちゃん』と呼ばれている。
足立祐子・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。
石動悦子・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。
宇野真知子・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。
丘今日子・・・EITO大阪支部メンバー。看護担当。元レディース・ホワイトのメンバー。
河合真美・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。
北美智子・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。
久留米ぎん ・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトの総長。
小峠稽古 ・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。
和光あゆみ・・・元レディース・ブラック7のメンバー。EITO参加予定
中込みゆき・・・元レディース・ブラック7のメンバー。EITO参加予定。
海老名真子・・・元レディース・ブラック7のメンバー。EITO参加予定。
来栖ジュン・・・元レディース・ブラック7の総長。
愛川いずみ・・・EITO大阪支部メンバー。通信担当。
白井紀子・・・EITO大阪支部メンバー。資材・事務担当。
芦屋一美(ひとみ)警部・・・三つ子の芦屋三姉妹長女。大阪府警からの出向。総子からは『ひとみネエ』と呼ばれている。
芦屋二美(ふたみ)二曹・・・。三つ子の芦屋三姉妹の次女。陸自からの出向。総子からは『ふたみネエ』と呼ばれている。
芦屋三美(みつみ)・・・芦屋財閥総帥。総合商社芦屋会長。EITO大阪支部のスポンサー。総子からは『みつみネエ』と呼ばれている。
南部寅次郎・・・南部興信所所長。総子の夫。
横山鞭撻警部補・・・大阪府警の刑事。
幸田所員・・・南部興信所所員。総子のことを「お嬢」と呼ぶ。
花菱所員・・・元大阪阿倍野署の刑事。今は南部興信所所員。
友田知子・・・南部家の家政婦。
小柳警視正・・・警視庁から転勤。大阪府警テロ対策室室長。
真壁睦月・・・大阪府警テロ対策室勤務の巡査。
藤島一郎・・・藤島病院院長。
藤島ワコ:::藤島病院看護師。院長の娘。
横沢きみ・・・南部興信所所員。事務をしている。
倉持悦司・・・南部興信所所員。
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= EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す =
==EITOエンジェルズとは、女性だけのEITO大阪支部精鋭部隊である。==
午前11時。藤島病院。一美の病室。
女性警察官達が見舞いに来ている。そこにやってくる、大前とEITOエンジェルの面々。
「一美ネエ。私、何て言うたらいいのか・・。」「アホやナア、総子。ウチらは一美ネエの分も頑張るさかい、ちゃんと養生してや。そう言うたらエエねん。」
大前が総子の後ろから言った。「うん。」
「可愛い。こんな可愛い子が第一線で悪と闘うEITOエンジェルのリーダーやなんて。」
「可愛い?んまあ、可愛いかな。この子、これでも24歳よ。人妻よ。見えないでしょう、睦月。総子。この子、真壁睦月。今度転勤してくる、小柳警視正の下で働くことになっているテロ対策室付けの巡査よ。よろしくね。」と一美が紹介すると、「え?24歳?17歳位に見えますヤン。私、22歳。私よりおねえさんやわ。よろしくお願いします。」と、睦月は無理矢理の大阪弁で言った。
「よろしく。EITOエンジェルス行動隊長の南部総子です。テロ対策室?小柳警視正?って、何のこと?」と一美に総子は尋ねた。
「済まん済まん。一昨日、辞令来とったわ。総子に言うの、忘れてたわ。ごめんな。」
大前が言うと、「兄ちゃん、忘れたらアカンやんかあ。」と、総子は膨れた。
睦月は、「ご兄弟でしたか。そしたら、結婚される前は、大前さんでしたか。」と言った。
「ちゃうちゃう。」と、大前と総子は異口同音に反応した。
「睦月。『ぎきょうだい』よ。戸籍上のきょうだいじゃなくて、『兄弟仁義』のぎきょうだい。」「親の血を引くぅ、ですか。」と。睦月は歌った。
「やーさんみたいですね。」一美は大笑いしたが、「たたったった!!」と顔をしかめた。
「傷口塞がる迄は、吉村新喜劇はやめときやあ。」と、藤島院長は言った。
「そう言えば、総ちゃんの従姉は『ぎきょうだい』多いらしいな。池上先生の話によると。」と、院長は言った。
「うん。なぎさちゃんも。あっちゃんも、みちるちゃんも、伝子ねえちゃんのこと『おねえさま』って言うてる。」と、総子は頭を撫でる藤島院長に言った。
「それだけ慕われてるっちゅうことやな。それで、警視正は?」と、大前は睦月に尋ねた。
「今日中、って聞いてますけど。総子さん、テロ対策室来ますか?」と、今度は睦月から総子に尋ねた。
「あ。行く行く。兄ちゃん、エエやろ?」「エエやろ?って、行く気やろ?」と、大前は、にっこり笑って言った。
正午。南部興信所。
「たまには、蕎麦もええなあ。」と、南部は、あっと言う間に平らげた。
「そやろ?」と言った総子も、もう器が空だ。
「みんな早いなあ。」と言ったのは、定年退職した社員の後釜に最近入った、横沢きみだった。
よく見ると、花菱調査員も幸田調査員も器が空だ。
「上手いけど、少ないな、ここ。きみちゃん、後でおにぎりこうてきて。」と、総子は言った。「まだ、食うンかい、お嬢。」と幸田がチャチャを入れた。
「ウチ、育ち盛りやねん。」「もう充分・・・育ってないとこもあったな。」と、幸田は言った。
「あんた、それ、セクハラちゃうん?ペチャパイって言いたいんやろう?」
「幸田。言い過ぎ。そのペチャパイに惚れたんは俺や。」と、南部が仲裁に入った。
睦月は、食べ終えると、黙って出て行った。
その時、電話がかかってきた。南部が出た。「はい・・・はい。」
「総子。お座敷や、EITOから。」「ウチは、売れっ子の舞妓どすか?」
皆、知らん顔をした。
午後1時。EITO大阪支部。会議室。
大前が、新顔を皆に紹介していた。
「今後の事を考えて、色々と新体制が進みつつある。まずは大阪府警テロ対策室が正式発足して、その対策室の室長に就任された小柳警視正や。」と、大前は小柳に席を譲った。
「こんにちは。芦屋一美警部の提言で、テロ対策室が発足しました。今までは仮の体勢で警部が受け持っていましたが、ご存じの通り、マフィアは大阪にも魔の手を伸ばすようになりました。警部が負傷されたので、ご一緒にご挨拶出来ないのが非常に残念です。テロ対策室は、EITO大阪支部と常に連携、連絡を取り合って、その魔の手から大阪府民や近隣他府県の平和の為に、不逞の輩と闘っていきます。また、必要に応じてEITO東京本部とも連携します。皆さん、よろしくお願い致します。」
拍手が起こった。「兄ちゃんとは違うなあ。」と思わず呟く総子に「そんなに褒められると照れるなあ。」と大前は返した。
「次に、馬場3佐や。この間はバタバタしてて正式な挨拶まだやったからな。」大前は言い、馬場を紹介した。
「馬場力(ちから)です。仲間には、クソヂカラって呼ばれています。火事場のクソヂカラからのあだ名ですね。まあ、名前の通り、力はあります。アームレスリング得意ですから。」
ぎんは、馬場に質問した。「東京本部みたいな、ホバーバイク乗る人ですか?」
「その通り。来月、中部方面隊から、私のように出向する者が2名参加します。都合3名のEITO男性隊員ですね。」
「コマンダー。ホバーバイク、足りへんのチャイますのん。」と、悦子が言った。
「うん。今日の夕方、見学会する予定の正式支部が今月中に出来るやろ。そこに3台のホバーバイク駐輪場も出キルンや。ええやろ?あ。オスプレイもな。正式支部に引っ越しや。オスプレイは、総子とこのマンションの緊急用と2台体勢は維持や。」
「兄ちゃん、女子の隊員は?ヘレン、抜けたし・・・。」
「元レディース・ブラック7から3名入る。来栖さん。」大前が呼ぶと、白井紀子が来栖を連れてきた。
「みんな、久しぶりやな。天王寺動物園で暴れて以来やな。今日は連れて来てないけど、大前さんの推薦で、来月からウチの元メンバーも3人参加することになった。残念ながら、私は3人の子育てで忙しいから遠慮するけどな。よろしゅう頼むわ。大前さん、大総長・・・あ、チーフやったな。」
元総長の来栖の挨拶の後、大前は「他にも中部方面隊の自衛隊参加者が来月増える。大増員や。総子の腕の見せ所や。それと、まだある。アメリカ陸軍から2人、オスプレイの操縦士が来る。二美も操縦士から解放されるから、EITOエンジェルス参加や。」と、言った。
「兄ちゃん、大好きや。1回くらいやったら、チューしてやってもエエで。」「その後でピコピコハンマーか。堪忍してくれ。」と、大前は総子を拝んだ。
皆は笑った。
午後4時。EITO大阪支部建設予定地。
予定より早く、現場に着いた、大前達は、一瞬頭が真っ白になった。事務所予定スペースの一部が燃えている。
大前は、建設作業員に声をかけたが、返答はない。川はすぐ側を流れている。
「皆、バケツリレーや!」大前は叫んだ。幸い、工事に使っているバケツは沢山あった。文字通り、バケツリレーが始まった。総子は、警察と消防、三美に連絡をした。
1時間後。火は鎮火した。
馬場が走って来た。「コマンダー、これを。既に大阪府警に送って、手配をして貰っています。」
馬場は、消火作業には参加せず、野次馬を撮影していた。これは、筒井に教示された、男性隊員の遊軍支援行動だ。
「早速、ご苦労やったな、3佐。こいつが放火犯か。あ。消防には?」「府警から送ってくれています。」
覗き込んだ、総子は、「これ、学生やな。徹が通っていた高校の制服かも。」と言った。
「お前が潜入捜査した時のか。よし、学校に確認してみる。」大前は、件の学校に問い合わせ始めた。
三美が近寄って来た。「ありがとう、三美ネエ。」「間に合って良かったわ。少しだけど、積んでいた、消火弾、役に立ったわね。しかし、もう新しい支部がばれてるとはねえ。でも、大丈夫よ、総子。かえって、今の瞬間の方が良かったかも。何故なら、セキュリティーは本部より堅固よ。今、バケツリレーした、この川底から火事の時の消化システムで消化出来るから。」
「工事関係者も、一時的に眠らされただけのようです。本部の方なら100%自衛隊で工事するんですが、一部建設会社に外注していたので、隙を突かれましたね。」
馬場が、三美達と話していると、「学校から、色んな角度の制服の写真を府警に送ってくれるそうや。皆で一旦帰ろうか。」と、大前は言った。
午後3時。作戦室。
総子は、紀子に揺り動かされ、目を開けた。
「総ちゃん、大丈夫?」「のりちゃん。ウチ、寝てたん?」
横から、大前が言った。「大きないびきかいてな。どんな夢見とった?」
「みんなで、新しいEITOの基地見に行ったら、火事になっててな。バケツリレーで消したけど、現場から逃げたんが、徹の行ってた学校の制服に似てて・・・。」
「徹って、潜入捜査の時の。もう転校したんやろ?」「北海道の高校に。大学も、そっち行くって言うてた。」
「徹の事はともかく、新しい基地は無事や。ただ、ダミーで建設中やった建物にボヤが出た。その話をわしらが話してたのを寝ながら聞いてたんやな。お前、疲れてるねん。南部さんと三美で話し合って、三美の会社から、調査員用の人員が派遣されることが決まった。あっちもこっちもでは、お前も集中出来んやろ。お前はこっちがメインや。調査員は誰でも出来るが、行動隊長はおまえしか出来ん。来栖から、詳しいことは聞いた。敵対していたホワイトとブラック7を平定して、解散、更生までさせたのは、お前や。斉藤理事官は、伝子さんの従妹やから縁故採用したんとチャウで。お前の統率力に賭けたんや。」
総子は黙って頷いた。紀子は、黙って濃いコーヒーと煎餅を総子の前に置いた。
「新しい基地はなあ。もう9割以上出来てるんや。後は内装や。今月中に間に合う。もしもの時は、仮の体勢で出発するで。」
3人が寛いでいると、男性女性の警察官が10数名入って来た。会議室に3人が移動すると、かなり窮屈そうだった。
「チーフ。これから皆で新基地に向かう。万一のことを考えて、三美の案で、隠密行動を取る。」「隠密って、時代劇みたいやな。」「ああ。相手は忍者やさかいにな。今、三美に用意して貰ったマイクロで警察官がやって来た。万一の為の警備や。入れ替わりに、我々は新基地に向かう。さっき言うてた、ダミーの建物は実はEITOの倉庫にする予定やった。そこに火イ点けられたんや。新基地もここも警戒をせんとアカンねん。」
大前の言葉を引き受けて小柳は、「芦屋一美警部が襲撃されたことも鑑みて、こういう作戦は必要なことです。チーフに先に話を通す前に我々で決める場合もあります。勘弁して下さい。」と言って、頭を下げた。
「そんな、頭上げて下さい。ウチはそんな事は気にしません。さ、皆、見学にゴウ!や。」
午後4時。EITO大阪支部・新基地。
マイクロバスは色んな所を迂回して、到着した。出入り口は、運送会社ビルという建前になっている。総子達は、その従業員を装って、出勤する。ある者は普段着で、ある者は事務服で。
マイクロバスの中で、大前は簡単に説明した。隣接する建物は工場風で、運送会社ビルと中で繋がっている。
通路を渡ると、広い会社のオフィス風のパーティションになっていた。
「東京本部と違い、初めから男性隊員も考慮してあるの。だから、トレーニングルームもロッカールームも宿直室も別々にあるわ。もうプロレス会場に格闘練習しに行く必要もないわ。倉庫予定の建物はもう使えないから、武器保管庫は、ここと、別の場所に用意するわ。あ。ここは馬場さんが入る宿直室ね。」
馬場が目を丸くして、「アパートで充分ですが・・・。」と言うので、「普段はアパート住まいよ、馬場さん。ここは宿直室。後で、社員にアパートを案内させるわ。今日中にホテルから移って頂戴。」と、三美は言った。
「三美ネエ。これ何?お風呂?」と、覗き込んでいた総子がはしゃいだ。
「そう。シャワールームとお風呂。機材は、全て廃業したお風呂屋さんから頂戴したから、リフォーム建築ね。あ。馬場さんは・・・時間決めてね。混浴はNGよ。」
「あ、はい。」「ゴメンね、馬場ちゃん。女子優先で。」と横から総子が言った。
「馬場ちゃん・・・。了解しました。、チーフ。」
「ここが、肝心な作戦室。」と三美が言うと、「いろんな機材ありますねえ。」と稽古が言った。
「EITO本部も、もうすぐ本稼働する。その本部とここは直接繋がる。電話もホットラインがあるわ。ああ、それと、大阪府警にも総子のマンションにもね。」
午後7時。総子のマンション。
とんかつライスが用意されていた。家政婦の知子はもう、いない。
「そうか。いたれりつくせりやな。全部、総子の夢の通りやな。」
「あ。どうした、総子。」「あんた、ウチのホッペタ、つねってみてや。」
南部は、総子に言われた通り、頬をつねった。
「たたたたたたったた!!痛い!!」「夢ちゃうわな。夢やったら、こんな上手いとんかつの筈はない。」
南部のスマホが鳴った。
南部が電話に出ると、花菱からだった。「何やて?」
電話を切ると、南部は放心した顔だった。「どないしたん?なあ、あんた。」
「総子。幸田が怪我した。あおり運転に見せかけた、殺人未遂や。」
総子は、白いホットライン電話で三美に電話した。
「分かった。二美がクルマ出すから、駐車場に降りて。」
南部と総子が駐車場に降りると、既に二美が待機していた。
ランボルギーニを発車させると、「一美と同じ病院で助かったわ。」
午後8時。藤島病院。
診察室から、院長が出てくる。「芦屋一族用にワンフロアあけとこかあ?」と、皮肉を言って、院長は去って行った。後ろから続いた看護師が院長に『アカンベエ』をして、総子達にウインクをして去った。
花菱と、包帯を巻いた幸田が出てきた。
「骨は折れてないようです。それより、所長、お嬢、これを。」と、花菱は紙片を出した。
《EITOに協力するのは止めろ。さもないと、こんな程度じゃ済まなくなる。お前らは浮気調査してればいいんだ。》
「犯人の顔は分かっています。カイシャに電話して、新人の倉持に、書類を警察に渡すように言ってあります。横ヤンが取りに来てくれます。」
「どういうことですか?」と、小柳が駆けつけ、幸田と花菱に尋ねた。
「偽の、浮気調査やったんです。たまたま、所長が大前さんと話しているのを聞いた可能性があります。」と、幸田が言った。
件の紙片を見た小柳は、「大胆だな。警告か。南部さん、当面、EITO、府警、興信所は別行動を徹底しましょう。連絡方法は幾らでもありますから。」と言った。
「それがいいですね。」と、駆けつけた大前が言った。
「総子。充分気イつけや。」「分かった、兄ちゃん。」
その夜は、三者三様に分かれて帰宅した。
幸田は、一美に挨拶してから帰った。
「池上さんにも連絡しとくか。」と、見送りながら、藤島院長は呟いた。
「お父さん、元カノには直接電話する?」と、看護師のワコは言った。
―完―