学校でも柚原が気になるようになった。

 柚原と俺は隣のクラスだった。今までそんなにすれ違うことはあんまりなかったのに、不思議なことに、想い始めた時から何回もすれ違うように。

 そういえば、親が前に「ご無沙汰だった人と頻繁にスーパーや出かけ先で偶然会うようになって、これも縁だからとお茶したりするようになったら人生が少し豊かになった。きっと、魂レベルでお互いがお互いを必要になって、引き寄せられたんだわ」と語っていた。

 そこまでではないけれど、ふとそんな話を今思い出した。

 廊下ですれ違うたびに、本当に柚原としばらく目が合っていた。いつもは何となく柚原がいるなと思っている感じだったけれど、今日はがっつりと柚原の姿を目で追っていた。柚原はどんな顔で、どんなふうに過ごしているのかが気になりすぎて――。

 笑顔で友達と話をしている柚原。
 そういえば柚原は、近所ですれ違う時も学校でも……いつも笑顔でいるイメージだな。

 そして周りからも好かれているイメージ。柚原と、もしもずっと一緒にいられたら色々楽しそうだな。 

 柚原の妹たちが言っていた通りに、ずっと俺のことが大好きだった柚原。目が合うということは、あっちも見ていたからだろう。

 多分、今日だけではなく、ずっと――。

 眠る時までずっと、頭の中が柚原でいっぱいになっていた。

 それから一週間ぐらい手袋を忘れずにいた柚原。
 すれ違うたびにずっと目で追ってしまう日々だった。


 柚原、毎日手袋を忘れてこればいいのにと、ふと思う。

 だけど、5回目に手が繋げるチャンスの時に、慌ててしまう出来事が起こる。