「……はい、できました。こんな感じでどうですか?」

「ありがとう! どれどれ……、うん。いいじゃん!」

 バッグから取り出したコンパクトを開いて出来映えを確かめると、スーツ姿のシンプルなVネックのインナー、その胸元に銀色のチャームがすっきり収まっていた。

「わたし、このネックレス、一生の宝物にするね」

「そんな大げさな……」

 彼は呆れぎみに笑ったけれど、わたしは至って大真面目だった。


「――貢、今日はごちそうさま。いい誕生日になったよ。ホントにありがとね」

 彼はこの時の夕食を、本当に(おご)ってくれた。わたしが「割り勘にしよう」と言っても譲らなかったので、最終的に折れたのだ。

「今度お礼しないとね。――あ、そうだ。貢の誕生日って確か来月だったよね?」

「ええ、十日です」

「十日は……えっと、平日か。じゃあ大型連休の間にお祝いしようよ。貴方の部屋で、わたしがお料理作って。どうせなら一緒にプレゼントとケーキも買いに行く? わたし、それまでに自分名義のクレジットカード作っとくから」

「ええっ!? ぼ、僕の部屋で……ですか!?」

 わたしの何気ない提案に、彼は激しく取り乱した。

「うん、そう言ったけど。……どうしたの?」

「……そろそろ次のステップか」

「ん? 何か言った?」

「いえ、何でもないです」

「じゃあ、欲しいもの、考えておいてね。値段は気にしなくていいから」

「分かりました。絢乃さんの財力があれば、何でも気前よく買って頂けそうなのでちょっと怖いですが。そうか、クレジットカードって満十八歳から申請できるんでしたよね」

「……まあねぇ♪」

 彼はわたしの経済力に舌を巻いた。何せわたしの役員報酬は、月に五千万円(そのうち二千万円は母に渡しているけれど)。それプラス、何十億円という父の遺産もあるのだから。

「あと、お料理なんだけど。何食べたい?」

「そうだなぁ……、カレーですかね。色気ないかもしれませんけど」

「ううん、そんなことないよ。じゃあカレーね。お肉ゴロゴロのビーフカレーにしよう♪」


 その後も車内では彼の誕生日についての話題で盛り上がったけれど、わたしは彼がポツリと漏らした「次のステップ」という言葉が気になって仕方がなかった。