「貢の父、篤です。息子がいつもお世話になっております」
「貢の母の、美智枝です。――あ、絢乃さんから頂いたお土産のケーキ、お出ししますね。お飲み物はコーヒーでいいかしら? ウチにはあいにく紅茶は置いてなくて」
「はい、コーヒー大好きです。ありがとうございます」
「あ、じゃあ俺手伝うよ。会社でいつも淹れてるし。――絢乃さん、僕はちょっと席外しますね」
美智枝さんと貢がキッチンへ行き、わたしは篤さんと二人でリビングに取り残された。
「――絢乃さん……いや、会長さんとお呼びした方がいいのかな。貢は、会社でご迷惑をおかけしていませんか? 不器用な子なので、心配していまして。親バカですね」
篤さんはとても温厚そうなお父さまで、なるほどあの兄弟の父親だわ、という感じを受けた。お母さまと同じくらいご子息二人に愛情を注いでいて、きっと育児にも積極的に参加していたんだろうなと思う。
「いえ、彼は本当によく気が利く人で、何事にも一生懸命なので、わたしは助けられてばかりです。ミスもたまにありますけど、そんなの誰にだってあることですから。わたしがまだ社会のことをあまりよく知らないので、彼を通して色々と学ばせて頂いている感じですね」
「そうですか。それを聞いて安心しました。絢乃さんも大変でしたね。お父さまが亡くなられてから、何もかもが変わってしまわれて。ウチの次男があなたの支えとなれているなら、親としても誇らしい限りです」
「そうですね。父が倒れた時から、貢さんはずっとわたしのことを気にかけて下さって、いつもわたしの気持ちに寄り添って下さっています。彼がいなかったら、わたしはきっと今ごろ父を失った絶望感から立ち直れていなかったでしょうね」
そんな彼だからこそ好きになったのだと、わたしはお父さまに打ち明けた。
「そうですか……。絢乃さん、これからもウチの貢をよろしくお願いします。ふつつかな息子ですが」
「はい、もちろんです」
これじゃ完全に結婚の挨拶だ。そう思うと何だかおかしかった。
「――お待たせしました。絢乃さん、お持たせですけどどうぞ」
そこへ、それぞれ大きなお盆を抱えた貢とお母さまが戻ってきた。貢がコーヒーカップを、お母さまがケーキのお皿を配膳していった。
「貢の母の、美智枝です。――あ、絢乃さんから頂いたお土産のケーキ、お出ししますね。お飲み物はコーヒーでいいかしら? ウチにはあいにく紅茶は置いてなくて」
「はい、コーヒー大好きです。ありがとうございます」
「あ、じゃあ俺手伝うよ。会社でいつも淹れてるし。――絢乃さん、僕はちょっと席外しますね」
美智枝さんと貢がキッチンへ行き、わたしは篤さんと二人でリビングに取り残された。
「――絢乃さん……いや、会長さんとお呼びした方がいいのかな。貢は、会社でご迷惑をおかけしていませんか? 不器用な子なので、心配していまして。親バカですね」
篤さんはとても温厚そうなお父さまで、なるほどあの兄弟の父親だわ、という感じを受けた。お母さまと同じくらいご子息二人に愛情を注いでいて、きっと育児にも積極的に参加していたんだろうなと思う。
「いえ、彼は本当によく気が利く人で、何事にも一生懸命なので、わたしは助けられてばかりです。ミスもたまにありますけど、そんなの誰にだってあることですから。わたしがまだ社会のことをあまりよく知らないので、彼を通して色々と学ばせて頂いている感じですね」
「そうですか。それを聞いて安心しました。絢乃さんも大変でしたね。お父さまが亡くなられてから、何もかもが変わってしまわれて。ウチの次男があなたの支えとなれているなら、親としても誇らしい限りです」
「そうですね。父が倒れた時から、貢さんはずっとわたしのことを気にかけて下さって、いつもわたしの気持ちに寄り添って下さっています。彼がいなかったら、わたしはきっと今ごろ父を失った絶望感から立ち直れていなかったでしょうね」
そんな彼だからこそ好きになったのだと、わたしはお父さまに打ち明けた。
「そうですか……。絢乃さん、これからもウチの貢をよろしくお願いします。ふつつかな息子ですが」
「はい、もちろんです」
これじゃ完全に結婚の挨拶だ。そう思うと何だかおかしかった。
「――お待たせしました。絢乃さん、お持たせですけどどうぞ」
そこへ、それぞれ大きなお盆を抱えた貢とお母さまが戻ってきた。貢がコーヒーカップを、お母さまがケーキのお皿を配膳していった。