首を傾げた彼に対して、わたしは思いっきり直球を投げた。

「どう……って。そりゃあ僕にだって結婚願望くらいはありますよ。その相手が絢乃さんなら言うことなしですけど……。まだ早すぎるんじゃないかと。絢乃さんはまだ高校生ですし、喪中でもあるわけですし」

「うん、それはわたしも分かってる。もちろん今すぐにどうこうっていう話じゃないけど、なるべく早い方がいいな、って」

「…………それは、分かりましたけど。僕でいいんですか? 自分で言うのもナンですけど、僕の家はそんなにいい家柄というわけでもないですよ? ……まぁ、そこそこ裕福ではありますけど」

「別に家柄で結婚するわけじゃないもん。そこは気にしなくていいよ。それに、貴方はもうすでに、わたしのお婿さん候補の筆頭にいるから」

 初めて言葉を交わしたあの夜、彼が「自分を婿候補に入れてほしい」と言った時点で、もう候補には入れていた。それが半年経ったその時点では、他の候補がいなかったということもあって彼が婿候補のトップになっていたのだ。

「わたし、本気だよ」

 その言葉に嘘いつわりがないことを証明するため、わたしは初めて自分から彼にキスをした。それまでのわたしはただ受け身でいるだけだったけれど、そろそろ自分からそういう行動に出るべき段階に来ていると思ったのだ。

「……これで分かってもらえた? わたしが本気だってこと」

「はい。ですが…………すぐには結婚とか考えられないんで、少し考える時間を下さい」

「…………うん、分かった」

 彼がすぐに結婚に踏み切れない理由は、わたしの年齢や家柄の違いだけじゃない。もしかしたら彼自身にもあるのかもしれない、とわたしは思った。
 やっぱり悠さんがおっしゃっていたとおり、彼はまだ過去の恋愛で起きた()()をまだ引きずっているんだろうか、と。