――時計店を何軒か回って貢のプレゼントを購入し、代々木にある彼のアパートに到着したのは午後三時半ごろだった。

「へぇ……。貢ってけっこういいところに住んでるんだね」

 重いエコバッグを提げた彼に先導されて、彼の部屋がある二階への外階段をゆっくり上がりながら、わたしは初めて訪れた彼の住まいの感想を言った。
 築二十年だというコンクリート二階建てのアパートは白を基調としたモダンな造りで、全部で八部屋入っているらしい。彼の部屋は二〇四号室で、間取りは(ワン)K。代々木という土地柄もあって、家賃は月十二万円ということだった。

「ありがとうございます。このアパートには社会人になった年から住んでるんですよ。家賃は高いですけど、その分住み心地はいいんで」

「そうなんだ……。ウチの会社、経理に申請したら家賃補助も出るからね。家計が苦しいなら一考の余地はあると思うよ」

「そうですね、家賃補助を受けられたら生活もだいぶ楽になるでしょうね。考えてみます。――さ、狭い部屋ですがどうぞ」

 彼は鍵を開けて、わたしを住まいへ招き入れてくれた。

「おジャマしまーす。……へぇ、キレイに住んでるね。慌てて片付けたようには見えないなぁ。普段から片付いてるって感じ」

 わたしはまじまじと室内を見回してみた。リビング兼寝室兼ダイニング、という感じのお部屋には座卓とベッドが置かれているだけだったけれど、収納スペースに恵まれているおかげで物が散らかっておらず、広々と感じられた。
 キッチンとトイレ・洗面所・お風呂が一体となったユニットバスはそれぞれ居住スペースから独立した形で配置されていて、使い勝手もよさそうだった。

「男の人のお部屋って、もっとゴチャゴチャしてるイメージしかなかったから。さすがは()(ちょう)(めん)なA型って感じだね」

「…………お褒め頂いて恐縮です」

 彼は照れたようにボソッと言って、「バッグはベッドの上にでも置いといて下さい」とわたしに荷物の置き場所を伝えた。

「キッチンはこっちです。エプロンもちゃんとありますからね。兄のなんでちょっと大きいかもしれませんけど」

「うん、分かった。ありがと」

 キッチンは玄関を入ってすぐ右側にあって、IHで調理するタイプの二口コンロがついていた。調理器具も意外と揃っていて、圧力鍋まであったのにはわたしも驚いた。