**無職53日目(10月23日)**

心太朗は、澄麗と交際して2年2ヶ月、入籍して1年2ヶ月の記念日を迎えていた。中途半端な記念日だが、二人は毎月、スーパーでケーキを買ったり、外食する程度のお祝いをしている。この日は軽く外食をしようと澄麗にどこに行きたいか聞くと、彼女は嬉しそうに考え始めた。まるで食べ物のことだけを考えるコンピュータが動き出したかのように。

澄麗は、パソコンに向かってお店を探し始める。食べることが本当に好きな彼女にとって、これはまさにハッピーなミッションだ。しばらくの間、心太朗は彼女の背後で、何やらキーボードを叩く音を聞いている。

すると、しばらくして澄麗は声を上げた。「お寿司がいい!」彼女の声は、まるで子供がクリスマスプレゼントをもらったときのように輝いていた。記念日に寿司と聞くと高級店をイメージするかもしれないが、澄麗はそうではない。候補は、くら寿司、かっぱ寿司、スシロー、そしてはま寿司の4つ。

「おいおい、これ、回転寿司の四天王じゃん!」と心太朗は思わず笑った。最近、くら寿司とスシローは制覇したが、かっぱ寿司とはま寿司は未踏の地。どうせなら4つ全て行って、ランキングを決めるのも面白いかもと思い、今回ははま寿司に決定。

心太朗の家の近くにははま寿司がなかったため、車で30分かけて隣の市まで向かう。到着すると、なんと9組待ち。これには心太朗も「繁盛してるな、はま寿司」と感心する。初めてのはま寿司体験だ。記念日なのに、待ち時間の長さに不安が募る。

ようやく席に着くと、そこに待っていたのは……流れていない寿司レーン!心太朗は目を丸くした。まさか、はま寿司は流さないスタイルなのか?回転寿司といえば、流れる寿司を見ながら直感で選ぶ醍醐味があるのに、これでは…。

確かに、最近の回転寿司はこの傾向があるのだが、やっぱり心太朗は流れてくるネタを見て選ぶのが好きだ。寿司の流れに身を任せるのが、回転寿司の楽しみだと思っている。

しかし、はま寿司は液晶画面を用意していた。実際の寿司は流れていないが、画面の中で寿司が流れている。「デジタル回転寿司」とでも呼ぶのだろうか?すごい時代になったものだ。

一方、妊娠中の澄麗は生魚を食べることができず、「なんで回転寿司を選んだんだろう?」と思いつつも、揚げ物やラーメン、炙り系を楽しんでいた。彼女の楽しそうな姿を見て、心太朗は微笑んだ。「記念日だって言ってるのに、寿司が食べられないとか…」と内心でツッコミながらも、澄麗の幸せそうな顔を見るのはやはり嬉しい。

ささやかな記念日だが、これもまたいい思い出になるのだろう。心太朗は、こうして二人の笑いと共に少しずつ年を重ねていくことを思い描いた。今後の記念日はどんな形になるのだろうかと考えながら、デジタル寿司の前で二人、笑い合う。

記念日を祝い、寿司を選び続ける心太朗と、食の探求を楽しむ澄麗。この日もまた、二人の特別な瞬間として記憶に残ることだろう。こんな中途半端な記念日でさえ、心太朗の心にはしっかりと刻まれるのだから、まさに「記念日」って素晴らしい。