**無職39日目(10月9日)**

妊娠後期に入って、澄麗のお腹はさらに大きくなっていた。心太朗はそのお腹を見ながら、毎日頭の中でツッコミを入れる。「いや、赤ちゃん、そこまで大きくなるのは外出てからでいいよ!」って何度も思った。澄麗の体は小柄で、明らかに妊婦の中でも細い方なのに、赤ちゃんだけは順調にどころか、どんどん成長している。

胃が押し上げられてるせいか、澄麗はご飯を食べた後、毎晩苦しそうにしていた。心太朗はその度に「何かできないか?」とソワソワするが、実際にできることと言えば、お腹を摩るくらい。いや、これでどうにかなるわけじゃないんだけど…。「でもやらないよりはいいか?」と、自分に無理やり納得させながらお腹をさする姿は、もはや儀式みたいになっていた。

澄麗のお腹をさすりながら、時には赤ちゃんに向かって話しかける。「お前、そろそろ出てきた方がいいんじゃない? いや、まだ早いか。いや、でもそろそろさ、ママが大変だからさ…」とか、何の効果もない独り言をブツブツと。もちろん赤ちゃんには届くはずもなく、「やべぇ、これで赤ちゃんに嫌われたらどうしよう…」なんて新たな心配が増えていく。

「大丈夫?」と毎回聞くと、澄麗は「大丈夫」と言うが、その表情からして絶対大丈夫じゃない。
調べに調べて、どうやら胃の不快感を和らげる方法がいくつかあるらしい。まあ、ネットの情報って正しいかどうかは謎だけど、とりあえず試してみることにした。


  1.少量で頻繁に食事を取る
一度に大量に食べると胃が圧迫されて不快感が増すことがある。少量の食事を頻繁に取ることで胃に負担をかけずに食事ができる。
2.食べる速度をゆっくりにする
早食いをすると消化が遅れ、胃が膨らんで苦しくなりやすい。よく噛んで、ゆっくり食べることで消化がスムーズに進む。
3.高脂肪や辛い食事を避ける
脂肪分が多い食べ物や辛い食べ物は消化が遅く、胃の不快感を引き起こすことがある。軽い食事を心がける。
4.食後に軽い運動をする
食後に軽く散歩やストレッチをすると消化が促進され、胃の不快感が和らぐ。ただし、激しい運動は避ける。
5.寝る前の食事を控える
寝る前に食事をすると消化不良が起こりやすく、苦しさが増す。食事は寝る少なくとも2時間前に済ませる。



まずは、少量で頻繁に食事を取る。一度に大量に食べると、胃が圧迫されて不快感が増すらしい。だから、一日五食くらいに分けて食べるようにした。これで澄麗の胃がラクになる…はずだと思って。


次に、食べる速度をゆっくりにするというアドバイスがあった。会話をしながら食べることで、澄麗もつい早食いを抑えられると思って、話題を次々と投げかけた。とはいえ、彼の「今日の天気ってさ、結構いい感じじゃね?」というポンコツな話題に対して、澄麗は「そうでもないし…」と冷めた反応。あれ、これで消化が良くなるのか?

そして、高脂肪や辛い食事を避ける。澄麗は辛いものが大好きだが、妊婦には辛いものがきついらしい。だから心太朗は彼女の好物を一時的にお粥やあっさりしたものに変えようと決意。澄麗が「辛いの食べたい」と訴えてくるも、「ちょっと待って、今はお粥だ!我慢して!」と心太朗はしぶしぶ答える。

さらに、食後に軽い運動をすることが効果的らしいが、心太朗は「軽く散歩とかならいけるだろう」と思っていた。しかし、澄麗は散歩をしながら、どんどん遅くなっていく。「これ、歩いてるんだか寝てるんだか分かんねぇな…」と思いながら、心太朗は彼女のペースに合わせて、ただ歩くしかなかった。

最後に、寝る前の食事は控える。寝る前に食事を取ると消化不良が起きやすいと知った心太朗は、「今日も夜ご飯を2時間前に食べなきゃ!」と念入りに計算しつつ、澄麗に「さ、早く食べよう!」と促す。澄麗は「さっき食べたばっかりじゃない」と不満気な顔をしていたが、心太朗は「でも、今から寝るから!胃に優しいお粥だよ!」と強引に盛り付けた。

そんなこんなで、実際にこのルーチンを試した日。食後に澄麗の胃がガチガチに張っていたのが、今日はなんと!少し楽そうな顔をしていた。「お、効いてる!これ、効いてるんじゃね?」と心太朗はお腹を触りつつ、内心ガッツポーズ。お腹が柔らかい感触に、「よっしゃ!これで俺、救世主じゃん!」と自己満足。

「よかったな、今日は調子いいみたいだぞ。」と心太朗が言うと、澄麗は「うん…でもまだお粥はイヤ…」とぼやきながらも、ちょっとだけ笑った。心太朗は自分が役に立てたことを実感し、少し満足していた。いや、これ、実際は全部自己満足のようにも見える…でもま、役に立てたってことで読者には温かい気持ちで迎えていただきたい。