色々と聞きたいことがあった。
 私は誰になんで狙われているのか。どうして助けてくれるのか。

 だけど、誰かが聞いているのかもしれないと思うと聞けない。
 
 発車ベルが鳴り響く中、また耳元で来夢さんがささやいた。

「履歴書も全部、君の情報はシュレッターにかけて削除してある。家から遠い場所で、手紙を抜いてそれは捨てるんだ」

 ルイを指差された。手紙のことも知っている――――?
 だけど、ルイは小さい頃からの大切な友達だった。
 それを汲み取ったのか、鋭い目で私を見てからもう一度ささやく。

「あれだけでも捨てろ」

 盗聴器と発信機のことだろう。私はようやく「わかった」と答えた。

「大丈夫そうだな」

 誰も追いかけて乗ってこなかったのを確認すると、来夢さんがいつになく優しい目でわたしを見た。

「次の駅で降りる」

「うん」

「念のため、降りる駅では扉が閉まるギリギリで降りろよ」

「……うん」

 各駅停車の電車だけど、次の駅に着くまでがヤケに長くかかっている気がした。

 駅に停車すると、降りる人たちのざわめきの中でもう一度来夢さんに耳元で囁かれた。

「〝あれ〟は俺が警察に持って行く。俺に万が一のことがあったら、キミが届けてくれ」

「えっ?」

「摘発されたら大丈夫だ。捨てていい。しばらくは報道をチェックして見ていろ」

 そう言い残して、扉が閉まる寸前にすり抜けるように出て行った。

〝あれ〟って? 摘発――――?

 彼の言う警察に届ける〝あれ〟というのは、ミナが言っていた物と同じだろうか?
 ミナがなにか盗った物?

 摘発というのは、つまり、松村の悪事を暴くとか?
 いや、実の親だからそれは無いだろう。

 じゃ、なに――――?
 黒幕がほかにいるとか?

 ゴチャゴチャ考えても仕方がない。とにかく盗聴器と発信機をどこかで捨てないと。

 それを付けたのは、ママか来夢さんということだろうか?
 内縁の妻や息子という便宜上つけなければいけなかったの?
 
 まだまだ聞きたいことだらけだけど、もう誰にも聞くことは出来ない。
 
 とにかく真樹紅から少し離れた駅でルイに仕掛けられたという盗聴器と発信機を探して捨てよう。