君と二度目の恋をする  あやかし屋敷

それから、真白たちは桜咲家の代々の巫女について調べた。

「みんな何してるの?」

そこに結奈と天音がやってきた。

「結奈!天音!もう大丈夫なの?」

真白が気づいて声をかけた。

「うん。紫音と花蓮もあとでくるって」

ずいぶん顔色も良くなっているようだ。

「よかった」

「心配かけてごめんね。何かできることがあったら手伝うから、何でも言って」

そこに湊と渚もやってきた。

「今、晶にあの勾玉をみてもらった。どうやら私が封じ込めたのは、綾女の負の感情らしい」

真白はようやく腑に落ちた。

桜咲家の屋敷で話していた時とは話し方が少しではあるが、穏やかになっていたのが気にかかっていたのだ。

屋敷で話していた時はもっと威圧感があった。

(じゃあ、今の綾女は怨霊になる前の綾女ってこと?)

『そうだな。そうだったかもしれない』

綾女が再び真白に話しかけてきた。

『あの女がくる前は、私もこんな性格だったかもしれない。あの屋敷にいた時より、心が穏やかな気分だ』

あの屋敷は邪気に満ちていた。

あの場所にどれほどの時間いたのだろうか。

(もしかして亡くなってからずっと…?)

それが本当なら、千年以上あそこに縛り付けられていたことになる。

「綾女がどうしてこうなったのか知れたらいいんだけど…」


(ねぇ、何か覚えてることとかないの?)

『そうだな。人間だった頃の記憶はもう忘れかけているが、手鏡を持っていたことは覚えている』

(手鏡?)

『丸い形で、桜の模様が彫られている手鏡だ』

「あの、桜の模様が入った手鏡って見たことありますか?」

「それなら旧校舎にあった姿見と化粧道具に桜の模様があったよ」

湊が答えた。

「それ、見せてもらってもいいですか?」


真白は姿見が置いてある部屋に行った。

それは真白が和室で見た鏡と同じだった。

あのときは布がかけられていたのと、襖の隙間からだけだったので気がつかなかった。

「後は、本条さんが旅館の廊下で拾ったっていう化粧道具」

真白は姿見と化粧道具を見た途端、ズキンと頭痛がした。

『これは…私の使っていた手鏡と同じものだ。形は変わっているようだが…』

真白は前に湊が姿見は霧人の母親が使っていたものを加工して作られたものだと言っていたことを思い出した。

(まさか…綾女が霧人の母親?)

真白は、隣にいた湊に言った。

「あの、綾女が霧人の母親かもしれないです」

「なんだって⁉︎」

湊も知らなかったらしく、驚いている。

「昨日、本条さんと桜咲家の歴史について書かれた本を読んでたんだ。でもそこには綾女の名前はなかったんだよ」

書かれていたことは、巫女のことと、当主のこと、そしてその子供たちのことだけだったと言う。