放課後の帰り道に、2人きり。

「僕と…付き合ってくれませんか…?」

 何度、この言葉を飲み込んだのだろうか。

 何度、この言葉を放つのを躊躇ったのだろうか…

「え…?」

 まあ、これが常人の反応。僕なんかが、誰かと付き合えるわけがない。

「その…本気っていうか…本当に?」

 ああ、やっぱり。後々ゴシップにでもされてクラス中…いや、学年中に晒される感じだ。

「う、うん。」

 一応、真面目に答えてみる。これで笑われたら振られるのは確定。

「——え⁈」

 その子は、泣いていた。

 鼻水が垂れそうな勢いで泣いている。

「あ、ご、ごめんなさい…その…嬉し、くて…」

 泣きながら話しているからか、少しばかり途切れていた言葉は、僕の脳に思い切り刺さった。

「こんなこと、言われるの…初めてだし…好きな人に言われた、から…」
「え…?」

 脳に言葉が刺さった部分から、徐々に温かさとドキドキが流れてきた。

「こんなので…良ければ…」

 これが、僕と愛する人の”始まり”だった。