今日も朝早くに起きた。あるものを作るため。

 裁縫箱を引き出しから取り出して、針と糸を用意する。

「糸が通らない…」

 まあ、それはいつものこと。

 これを作るために、何回、自分の指に針を刺してしまったのだろう。

 でも、もう終わる。

 ♢ ♢ ♢

「ねえ、次が最後の試合でしょ?」
「うん。」
「——これ、あげる。」

 私は、野球部のある人のことが好き。あっちも、私のことが好きだったらしいから、付き合った。

「これ…」
「いらなかったら、好きにしてくれてもかまわないから。」

 ここの学校の野球ユニフォーム風のキーホルダー。中に綿も詰めたし、その人の背番号も入れた。我ながら、自信作。

「これに、付けて。」
「ここ?」
「うん。」

 付けた場所は、ユニフォームの入ったカバン。丁度良さそう。

「ありがとう。大切にするね。」
「こちらこそ。最後の試合、応援してるからね。」

 愛する人の最後の試合まで、あと3日。

 あなたの放つホームランボール、待っています。