1、傷ついた恋を、ただ、続けたかった
☆さよなら、君がすべてだった私
君のおかげでこれまで、
数え切れないほどの涙をこぼしたんだよ。
私は君の理想に近づこうと、
色々、頑張ってみたけど、
その頑張りなんて君には、1ミリも伝わらなかったんだね。
さよなら。
そう君に告げて、よかったと思ってるよ。
だけど、なぜか、君の無邪気な笑顔だらけの思い出が重いよ。
☆好きだったのに。
好きだった日々が、
心に傷を作るとは思わなかったよ。
「いつも心配してくれてたのは嬉しかった」
と君が言ってくれてよかったと思ったけど、
違うよ。
私はどこにいても君のことを純粋に思ってたんだよ。
それだけ、君のことが好きだったのに。
君が好きだったのが思い出になっていく。
☆まだ君が自然と目に入ってしまう。
君とそれぞれの道を歩み始めたことを実感したのは、
君のLINEのアイコンが付き合っていた頃と、
違うアイコンに変わっていたからだよ。
忘れないで。
私は君のことをしっかり見ていたことを。
☆君との恋は。
君との恋は「がんばらないで」と言われて始まり、
「もっとがんばればよかった」と言われて終わった。
☆君の名前を書いても。
夏が始まったばかりの砂浜をゆっくり歩いている。
君が隣にいてくれたら、
きっと楽しかったんだろうなって、
未だに思うのは君とまだ一緒にいたかった証拠だよ。
だけど、その証拠を突き出す君との恋はもう終わったから、
枝で砂浜にハートと君と私の名前を書き記し、
それが波にさらわれ、消えるのを眺めても、
気持ちはまだ収まらなかった。
☆君は夢をあきらめないで。
「ありのままでいいよ」
って言って、
ココアを淹れてくれた君は本当に優しい人だった。
だけど、私はありのままになる勇気がなかったし、
君も夢半ばで私に構う暇なんてなかった。
そして、結局、私は弱くて、
社会に順応できなくて、
実家に引き上げることになった。
別れの5日前なのに、
いつものようにココアを淹れてくれる君が、
夢を諦めて私と一緒になってくれるって、
言ってくれたらいいのにって、
また甘い気持ちが出てきた。
ココアを飲むと、
なぜかわからないけど、
また君の前で涙が溢れてしまった。
☆雨がきっかけで深まったのに。
教室で君とふたりきりで、
プールに降り注ぐ、
にわか雨のしぶきを眺めた日を思い出した。
「ずっと雨が降り続けばいいのに」
という言葉で君と付き合うことになったのに、
君はもう、その言葉を忘れてしまったのかな。
☆嘘つき。
もう君のこと以外考えられないと言われ、
それを鵜呑みにして日々を過ごしていたのに、
先週、君は簡単にそれを撤回した。
シャワーを浴びても、
未だに君のこと、私は忘れられないのに。
☆君の些細な言葉が私を励ましていた。
急に孤独のボールプールに飛び込んでも、
寒色系の青いボール郡はプラスチックの冷たさを感じるよ。
そんな想像ができるくらい、
「頑張らなくていいよ」って言ってくれていた
君が私の前から消えた事実は、
動揺してマーブルチョコを床に撒き散らすくらい、
つらいことだよ。
☆君の所為で眠れなかったよ。
苦しい気持ちのまま夜が明けてしまった。
ちょうど休みでよかったと思いながら、
寝るのを諦めて、
コーヒーゼリーを一口食べると、
過去の大好きだった君の笑窪が急に浮かび、
甘さを感じる前に胸が痛んだ。
☆君を大切にしたかった。
私のわがままを聞いてくれる君はただの最高の人だったよ。
私のわがままが過ぎた所為で、
きっと、君を傷つけてしまったのかもね。
無自覚にひどいことをしたんだと思うと、
君に対する後悔ばかりが胸に積もるよ。
だから、君がいなくなったあと、
私は甘えとわがままの違いを
日々、気をつけているよ。
☆閃光は消えても、優しさは胸に残る。
バイトの帰り道、最後の花火の端が少しだけ見えた。
1か月前、本当はあの花火を間近で見る予定だった。
だけど、あなたと致命的な言葉を交わしてしまい、
その予定は消えてしまった。
「君は君らしく生きればいいよ」
最後、あなたにそう言われたことを思い出すと、
あの日、余計なこと言わなければよかった。
って、今更思っても、
もう遅いよね。
☆あなたとの思い出は永遠。
すれ違ったままの日々はメッセージで埋まらなかったね。
もう、壊れた日々は過去のプリズムに包まれた思い出補正だけじゃ、
もう、疲れた日々は埋まらなくなっていて、
あなたのことが信じられなくなったね。
ただ、あなたとの楽しい思い出は色褪せないから、
どんな気持ちがあっても、
あなたに言いたいことは、
「ありがとう」だけだよ。
☆さよなら東京。
君にさよならを告げた日は雪が降っていた。
列島が寒気に包まれた日に私はひとりぼっちで、
東京に投げ出された。
去年、君と一緒に歩いた隅田公園の桜は、
今年も綺麗に咲いていて、
私は君のことを思い出しながら、
ピンクの間を貫くスカイツリーを眺めながら、
東京での最後の一週間を今、しっかり楽しんでいる。
☆パステルの日々には戻れない。
君への想いを
パステルカラーのタイプライターキーボードで
打ち込むと急に私が軽くなったような気がした。
4000文字の君への気持ちは、
ぐちゃぐちゃだけど、
君がたくさんくれた甘い思い出は、
私の中で消えないよ。
☆ティファニーで朝食なんて食べられなかった。
駅の中心のストリートピアノでムーン・リバーを弾いて、
君とティファニーで朝食を食べようと約束した甘さを忘れるために
精一杯、たくさんの人たちを立ち止めるよ。
☆この街は君の思い出が重すぎる。
夜のシャッターが閉まった商店街を自転車で駆け抜ける。
ドラマチックに頭の中で過去が再生されるけど、
もう君との思い出を捨てることに決めたんだ。
だけど、君が「無理しないで」と言って、
大好きなモンブランをあのカフェで買ってくれたことは、
きっと、いつまで経っても忘れられないよ。
☆君の夢を未だに応援している。
本当は君とずっと過ごしたかった。
だけど、ずっと過ごす選択肢はもうなくなったよ。
君と離れてから季節は夏へ向かっているけど、
まだ、心は冷たいままだよ。
だから、今日も雨の街を見ながら、
ホットコーヒーを飲んで、
君が昔語っていた夢のことについて考えてるよ。
☆来週から新しい暮らしが始まる。
前を向くために夕日に染まった築堤の上を走っている。
いつもの大きな川はオレンジ色していて、
ふたりでよく手を繋いで歩いた日々をまた思い出した。
この街は君との思い出が重すぎるから、
来週、引っ越すことにしたよ。
☆遠距離の愛は不条理。
薄暗いカウンター席にひとりきりで
カシスオレンジを飲むのは、どうして寂しいんだろう。
物理的な距離感やすれ違うくらいお互いに忙しすぎて、
意味を見いだせなくなったのはつらいね。
結局、別れ話もオンライン上で完結してしまったから、
私はまだ、君と別れてしまった実感がわかないよ。
君に好きな人ができなら仕方ないよね。
君を支えられなかった私に落ち度があると、
私自身も思っているよ。
胸が痛み続けたままだから、
カシスオレンジの酸味が今日はよく染みるよ。
☆さよならは胸の中。
派手に振られた胸の痛みは、
ワンルームの私の部屋まで帰ってきても
鈍く響き続けているよ。
君との別れはずっと忘れられなさそうだけど、
君の夢はひっそり応援するよ。
君は君の人生を生きてね。
私もそうするから。
☆表面張力が今、揺れている。
目覚めてすぐに涙が溢れたことに
自分でも驚いてしまった。
だから、今日はすべてを休むことにした。
とりあえず、
コーヒーを淹れて、
ぼんやりNetflixを見ることにした。
涙の理由に心当たりはあるけど、
今はすべてが嫌で探したくない。
2、君との恋を、このまま続けたい
☆答えはわからない。
答えなんて見つかりやしないのに、
いつも社会は答えを求めようとする。
だから、その答えをすっと言えるように、
しっかりと予習するけど、
たまにその努力に疲れてしまうことがあるんだ。
本当は窓越しに広がる青空や
風に乗る雲をぼんやりと眺めていたい。
だから、
昨日、君に「無理しないで」って言ってくれたこと、
現実はなにも変わらないけど、
なぜかすごく嬉しかった。
☆君との深度は深まる。
冗談を言いあえる君は最高だね。
僕は君とたくさんの思い出を共有したいから、
今、笑っている君の笑顔を守りたい。
☆たまに頑張りすぎると君の涙があふれるのは知っている。
泣いている君は君らしくないと、
僕はありきたりなことを言ってしまったことを少しだけ後悔した。
君の頬を濡らす涙は疲れている証で、
僕は君の悩みを消したいと強く思った。
だから、
君の悩みと苺をミキサーで混ぜて、
甘酸っぱいストロベリームースを作ろう。
☆君と夏を超えられそう。
夏の始まりの中で始まった君との恋は、
ひまわりが綺麗になっても、
まだお互いに緊張がとれないくらい、
ふたりはシャイなままだけど、
君の優しさはしっかり受け取っているよ。
だから、君と僕との緊張が取れたら、
僕は君にこう言いたい。
僕は君のことが好きだ。
☆冬の君が見れなくなのは寂しい。
来週から急に暖かくなるみたいで、
もしかしたら、今日が冬の終わりで、
君のマフラー姿が見れなくなるのは少しだけ寂しいよ。
だから、僕は冬の君のことを忘れないように、
マフラー似合うねって、今更だけど伝えた。
☆憂鬱な君を溶かしたい。
憂鬱そうな表情の君とレモネードを飲む午後は、
甘酸っぱさで満ちていて、
僕は胸が締め付けられる気持ちになるよ。
だけど、君はまだそんな表情をしたままだから、
君と一緒に時間を溶かして、
氷みたいに冷たくなった悩みを僕が溶かしてあげる。
☆君の迷いを消したい。
イチョウで黄色く染まった並木道の下で、
君と手を繋いで歩く時間は単純に嬉しいよ。
君の迷いが消える魔法を唱えるために、
僕は少しだけ冷たい君の手を強く握った。
☆話を止めないで。
公園のブランコに座ったまま、
夢中で君の話を聞いているうちに夜は更けていったね。
君が話したかったことを
僕はしっかり受け止められたかわからないけど、
真剣に君のことを知りたいと強く思った。
☆いつまでも笑いあえるのは、君が魅力的だからだ。
君も僕も出会ったときよりも、
すっかり変わってしまったように思うけど、
お互いにコーヒーを飲みながら語るたびに、
大人になったような気がするよ。
ただ、今でも少年少女のまま、
笑いあえるのは君のおかげだから素直に感謝したい。
☆秘めた気持ちを教えて。
君の小指のピンキーリングが、
夏の始まりの日差しでイエローゴールドに輝いている。
テラス席で僕と向かい合って座る君は涼しげなのに、
たまに寂しく微笑む君は何かを秘めているような気がした。
だから、僕は素直に悩みを聞くと、
君は少し驚いた表情をした。
☆夕立が止んだら生まれ変われる。
胸が痛んでいる君と一緒に教室から、
外の世界をぼんやり眺めている。
君が泣き止んだのと同じころに、
夕立は一気に止み、
濡れたアスファルトがオレンジ色に輝いていた。
最近、ついていない君だけど、
きっと、これからいいことがある予兆だよと、
ありきたりに励ましたけど、
君の頬は淡いオレンジをわずかに反射したままだった。
☆真面目な君が好きだよ。
「真面目ってよく言われるのけど、好きじゃないんだ」
そう言ったあと、君は僕の数歩先を歩き、
そして、立ち止まった。
夜空を見上げて、
君はそっと両手を広げた。
僕はそんな君をただ眺めることにした。
別に何かが降ってくるわけではないのはわかっている。
だけど、君は何かを受け取ろうとしているように見えた。
夏に雪乞いをするような君は真面目すぎるよ。
☆君の言葉が耳に残ったままだ。
この気持ちが破裂しそうなくらい、
君のことが忘れられないよ。
夜更けに君のことを思いながら、
「一度立ち止まってみようよ」って言われた意味を
ベッドの中で考えると眠れないや。
☆弱いところを出す君は新鮮。
私は君のことを理解しているつもりだよ。
ただ、君の浮かない顔にシルバーのピアスは似合わないから、
ただ、堂々としてほしいと伝えると、
君はありがとうと言って、微笑んでくれた。
☆海を眺める。
絶望癖を発動しやすい私のことを
いつも笑ってくれる君は優しいよね。
海岸線を描く道路から、
さざなみを眺めながら、
お互いに口数少ないまま、
儚く時が流れていく。
君は私の次の言葉をしっかり待ってくれているから、
私はそれだけで十分だよ。
☆ダメな私を全肯定してくれる君はネ申だけじゃ収まらない。
恋に迷いやすく、
しくじることが多かった私のことを、
全肯定してくれる君に出会えたのは
奇跡だったと今でも思うんだ。
こんなダメな私でも、
「君のすべてを愛しているよ」って、
こっちが照れるくらいの言葉でしっかり伝えてくれる人は、
もう、これ以上現れないような気がしているよ。
3、もっと、自分を大切にしてほしい
☆休日は昔から好きなことをして、現実逃避する。
夢でたくさん詰まった景色は一瞬で崩壊した。
現実は上手くいかないのは当たり前だけど、
受け入れられない自分がいるのが嫌だ。
やりたいことをやって生きていきたいから、
とりあえず、来週に向けて、
気を紛らすためにクッキーの生地をこねる。
☆キャラメルを握りつぶす。
自分を大切にしなかった日々は不毛だった。
頑張ったって、世界は変わらないと絶望癖になっていた。
だけど、頑張ったんだ。
その間に夏は過ぎ去り、秋の涼しい風に包まれた。
黄色で鮮やかなイチョウ並木の下で、
ふと、無力な自分がに嫌になった。
だから、開き直るきっかけに、
ポケットに入っていたキャラメルを取り出し、
右手でそっと握り潰した。
☆張った糸を切りたい。
追い詰められて、張り詰めた気持ちは、
目隠ししてアイスクリームを食べているときみたいだね。
現実、そんなに笑っていられないのはわかっているけど、
こんなどうしようもないことを考えないとやってられないや。
☆忘れてしまったよ、自分のことを。
他人に合わせるようになったのは、
もう、小さい時からの癖で、
それを続けた今、
自分の存在が消えてしまいそうなことに気がついた。
人にあわせて、
好きなことをずっと選ばなかったから、
これからは自由に生きてみたい。
涙で濡れたパフェを食べながら、
そう心の中で誓った。
☆もし、今、君が壁の前に立っていたら
すべてのことは上手くいくに決まっている。
君のために困難は用意されているし、
コンクリート製の灰色の壁は
容易に超えることができるはずだよ。
もし、その壁が高すぎたら、
壁に個性を爆発させたハートをスプレーで描いて、
君の力でフォトスポットにしてしまおう。
☆もし、時間の前に心が破綻しそうになったら。
人間関係なんて、どうせ一時的なものに過ぎないよ。
だから、言われたことも、
傷をつけられたことも、
すべて、忘れてしまおうって、
言うだけなのは簡単なのはわかっているよ。
時計の針に未来を預けても解決しそうもなければ、
計画的に逃げてしまおう。
空を飛ぶように泳ぐペンギンのように、
海の中で羽を広げよう。
君の時間は他人のものじゃない。
君だけのものだ。
☆今は頭の中のごちゃごちゃした悩みを忘れよう。
もっと、自分はできるはずだと思うけど、
もう、これ以上、
頑張ることができないくらい疲れてしまったよ。
夏の微温い雨の中、
傘をささないで立つ勇気なんてないから、
ただ、今日もティラミスを食べに行くためだけに
雨に濡れた商店街を歩いている。
駅ビルの中にあるカフェに着いたら、
雨の街を眺めながら、
苦味を楽しんで一旦何も考えないようにしよう。
☆君だって頑張ってるんだ。
社会にでるようになってから、
慣れないことばかりで、
ここ最近、
いつも夜になると泣いてしまっている。
誰かに頼りたいし、甘えたい。
だから、頼れる君に「頑張ってるね」って、
先に私が言われたいメッセージを送って、
今の気持ちを共感してもらおう。
☆忙しいのに情報は溢れすぎている。
QOLを維持するために、
テラス席でランチにBLTバーガーを食べている。
ただ、それだけじゃ栄養は足りないのはわかっている。
じゃあ、プロテインやビタミン剤を大量に飲めばいいのかな。
いいことだらけの情報で目がまわるから、
今、しっかりと夏になったばかりの心地よい風を感じながら、
レタスの水々しさをしっかりと味わおう。
☆どうしても一人になりたかった。
自分を守るためにつき慣れた嘘を言って、
今日もなんとかひとりの時間を作った。
遠くの街のカフェまで行き、
ようやく嘘をついた罪悪感から一息ついた。
友達と居ると楽しいこともあるけど、
疲れることのほうが多い。
理由はわかってるんだ。
自分が他人に気遣いすぎだってことも。
だから、今は気にせずひとりで、
クリームブリュレの表面を
スプーンでそっとつついた。
☆歩き続けるには甘さが必要。
イオンまで来たのに、
ひとりでいるとぐるぐると日々のことが頭の中で回る。
嫌われたくないから、
必死でアンバランスな人間関係を
頑張ってバランスを取っている。
この頑張りなんて誰にも評価されないのかもしれない。
自分を守るために仕方なくやってるにすぎない。
☆ネガティブが回る。
真夜中に湧き上がったネガティブが我慢できなかったから、
冷蔵庫からコーヒー牛乳を取り出して、
それをグラスに入れて、一気に飲み干した。
自分に足りたいことはたくさんある。
だけど、あんなにその未熟さを責めなくてもいいのに。
もし、これから先もずっと歩き続けると、
きっと、血糖値が下がりすぎるから、
今後どうするかを考えながら、
とりあえず、
フードコートのサーティーワンで、
ラブポーションをひとつ注文した。
☆甘えられるうちに自分を甘やかそう。
甘さを濃縮する方法はたくさんあるけど、
自分を簡単に甘やかす魔法なんてないよ。
☆昔から一人でなんでもするのが得意だった。
出会った人に比例して、
相手にあわせることが増えていった。
だから、別れを選んだり、
距離を取るようになった人も増えていった。
ただ、新しい人との出会いの中で、
確かに自分は頑張っているけど、
人に少しずつ、
心を開いて、
頑張りすぎて重荷になっていたことが、
任せられるようになったよ。
4,勝手にソーダ水のように透明な君との未来を想像して
☆遅刻魔の君は今日も遅れている
秋雨で深まる街を
カフェの中からぼんやりと眺めている。
遅刻魔の君は今日もまだ来なくて、
お気に入りの文庫を読み返しているけど、
あまり読み進まないや。
ガラスにあたり、雫となった無数の線は
なぜか気持ちを切なくする。
冷めかけたコーヒーはすでに半分以下で、
一瞬、今日は君がいない世界で終わる気がするからさ。
早く来て。
楽しさで時間を忘れさせてよ。
今日も。
☆君とすれ違ったまま、季節は進む。
ビルに反射する柔らかい朝日が眩しくて、
爽やかに見える。
地下鉄の出口から、
いつものように寝起きの朝を歩く。
君に会えない日々が続いていて、
メッセージはすれ違っている。
街路樹はいつの間にか黄色が混じり、
気持ちが追いつかないまま、季節は巡る。
ただ、今は冷たい海を泳ぐ、
ザトウクジラみたいに突き進むしかない。
君にわかってほしいなんて、
言わないけど、
今は少しだけ待ってほしい。
☆君と僕は、今日、世界から取り残された。
悩んでいる君の表情は幼くて可愛いから、
深刻そうな悩みも、なぜかポップに見えてしまうよ。
学校に行かなかった僕たちは、
手を繋いだままベンチに座った。
誰もいない午前中の公園は秋の風が吹き、
木々が音を立てて揺れている。
君のショートボブも弱く揺れて、
僕は思わず、君の頭を撫でた。
君は音もなく泣き始め、
「みんな、いなくなればいいのに」と言った。
僕は思わず、君を抱きしめた。
君が多数から消されないように。
☆黄色い恋は深まっていく。
イチョウ並木の中で二人きりで歩く。
あなたとの素敵な恋はゆっくりと進んでいく。
手を繋いだままでも、優しさは伝わり、
きっとこのまま、深まっていきそうだね。
あなたとの出会いは偶然で、
彗星同士みたいに逢うはずない出会い方をした。
思い出も愛情も自然と深まり、
季節はあっという間に巡っていった。
あなたが、ふと、立ち止まり、
「最高だね」って笑顔で言った。
「最高って、なに?」と聞き返したら、
あなたに思いっきり抱きしめられて、
一瞬、息が止まった。
☆秋は冷たくて、気持ちを置き去りにする。
言いたいことが言えずに昨日が終わり、
今日も日常が始まったから、
カフェのカウンター席から、雨で銀色の街を眺めている。
一気に色づき始めた街路樹も濡れて、
濡れて冷たい青色のビルも
信号を反射する黒色のアスファルトも
すべてが切なくて、
秋はいつも憂鬱になるから好きじゃない。
いつものように少し濃いコーヒーを飲んでも
気持ちはそんなに変わらないし、
あーあ、って自分が惨めに感じるし、
変われない自分だけが置いてかれる。
それでも流星群が降り注ぐように
日常ははやく展開していくから、
窓の雨粒を指でなぞるくらいは許してほしい。
☆たまに、なにかできるじゃないかと思うと、虚しくなる。
秋の海辺は少しだけ寂しくて、
薄い缶コーヒーの苦味が妙に口に残る。
少し前まで沢山の人たちが
夢をつむいでいた日々は嘘みたいだ。
一人で海を眺める時は大抵、
ため息を誰かに集めてほしいときで、
自覚なく、気づいたら、
海を目指しハンドルを握っていた。
つまらない日々は積み重なっていくけど、
しんどく感じるから、
自分はただ、日々を淡々とこなせばいい。
だけど、たまに思うんだ。
もし、何かに熱くなって生きていたら、
ペンギンの群れの中で立ったままのような、
こんなこと、してなかったんだろうね。
☆夏が過ぎて、秋になる。ただ、それだけのことだって、
自分に言い聞かすけど、それが辛くて、胸が締め付けられる。
あてもなくドライブに出たのは
別に日常が上手くいかないからじゃなくて、
君がいない寂しさを紛らすためだよ。
市街地を離れ、
ただ、奥に広がっている秋色の山に向かって、
アクセルを踏む。
寂れた国道と死んだドライブインが
需要の少なさを象徴しているみたいで
たまにつらく感じるけど、
窓をあけて、ラークを吸うと、
少しだけ気持ちがマシになる。
ステレオからはお気に入りのベースラインが
腹の底を打つような心地よさを作っている。
この夏、君がいなくなった事実なんて、
まだ、受け入れられないや。
☆深まる秋の中でも、あなたは世界の中心みたい。
冷たい空気の屋上から
あなたと二人で街を見下ろしている。
指につけているピンキーリングが反射して、
空間を柔らかくしている。
白いセーター越しに弱い日差しを感じ、
右手からはあなたの体温を感じている。
高く突き抜けた青空は秋の深みになって、
もうすぐ冬が来るのを告げている。
「ずっと、こうしていよう」
あなたはポツリとそう言って、
水晶みたいな空を仰いでいた。
すべてのこの瞬間を真空にして、
胸に詰め込みたくなった。
☆君は素直じゃない
雨上がりで冷たい街を二人で歩いている。
LEDの青を反射するアスファルトは
君の黒色マッシュと相まって、すごくクールだよ。
そして、君はいつものように口数が少ない。
夜のこの街は人が多くて、
浮足立つから、
君の冷たい手をぎゅっと握って、
いつもの店まで行く。
そんな君が好きだって、強く思った。
☆朝から憂鬱なのは、君の所為だよ。
嫌いだった君のことが好きになったのは、
ありきたりなことで
君のことを誤解していたからだ。
日に日に冷たくなる朝の空気を思いっきり吸っても、
どうして憂鬱は晴れないの?
友達以上、恋人未満になった今、
昨日送ったメッセージが未読のままで
そわそわしたまま朝を迎えた。
「もういいよ」って、
誰にも聞こえないようにつぶやいたけど、
心の隙間が広がっただけのように感じた。
君なんてって思うほど、
気になんて仕方ないから、
早く、既読くらいつけてほしい。
☆秋雨の朝、いつもの憂鬱で、自分らしさが見つからない。
いつものように電車は踏切を通り過ぎる。
ドアの窓から眺める街は今日も雨だ。
イヤホンからお気に入りの曲が
アップテンポで流れるけど、気分が乗らない。
きっと昨夜から降り続くこの雨の所為だね。
もし、このまま、誰にも邪魔されずに、
星図を作るように自分の世界に潜って、
最近、自分でも、よくわからない本音を見つけてみたい。
きっと、そうすれば、
上手くいかない今を変えることができて、
もっと自分らしく生きれるのかな。
☆今しかないなら、一瞬を楽しむしかない。
制服にトレーナーを着込む君は
朝の誰もいないバス停を背景に似合っている。
君は今日も朝からマシンガンのように
話題が止まらないし、笑顔も絶好調で、
無限にバスなんて来なくていいように思える。
秋が過ぎ去れば、
君とこうして居られるのも、
だんだんと非現実に近づく。
今、この一瞬がすでに思い出になるのなら、
この瞬間を楽しめば、それでいい。
思わず、君の手を繋いだら、
君との会話は一瞬、止まった。
「待ってたよ」と
君は静かにそう言って、ゆっくり微笑んだ。
☆忙しい秋が過ぎる前に、君に会いたい。
口の中にキャンディを入れて、
人で溢れているホームの中で一人きりを作る。
臆病な性格だけど、すっかり人混みに慣れた。
機械的に日々は進んでいくけど、
何も積み上がらない気持ちはそのままで。
君とのLINEのトークを指先で遡っても、
すれ違いは続いている。
もし、君と次にあったら何があるのかな。
モンブランのように甘くしてしっかりと、
ゆっくり過ごしたい。
週末、君からの誘いがあればいいな。
☆臆病なのは変えられないや。
夜のカフェで閉店ギリギリまで
さっき本屋で買った文庫本を読んだけど、
ぐるぐるした気持ちは晴れなくて、
結局、一日が終わりそうだ。
淡々と過ぎる毎日に過ごしだけ嫌気がさして、
文句ばかりが胸に積もって息ができない。
明日は休みだから、
すべて忘れ去るために
電球色で遮断しようと思っていたのに。
変えれないままの自分が怖いけど、
昔から臆病だから、誰かにそっと、
「そのままでいいよ」って言われたい。
☆決意は急にやってくる。
君とは親友のままがよかった。
二人でじゃれ合う曖昧なままで、
秋の枯れ草で覆われた堤防をゆっくり歩いて、
話しているだけで十分だった。
君の告白を受け入れないまま、
夏は過ぎていったけど、
以前のように心の底からお互いに
笑えなくなっている気がする。
今日も惰性で君と歩いているけど、
楽しい訳じゃない。
秋の乾いた匂いで妙に切なくて、
なぜかわからないけど、
君を大切にしたいと思った。
とっさに君の手を繋いで、
君に告白し直した。
☆秋になると君を思い出す。
懐かしい気持ちになったのは、
ビル街の下でも秋の香りがしたからで、
あのとき、君がイチョウ並木で言ったことを
ふと思い出した。
君は消耗していたじきだったみたいで
少しだけ疲れた顔をしていた。
僕はそれを見て見ぬふりをして、
そのまま過ごしてしまった。
あのとき、君の話を真剣に聞いていたら、
きっと、山の中でマシュマロを焼きながら、
ゆっくり君と過ごす世界線があったかもね。
だけど、そんなのは炭酸のように抜けて、
夢は覚めたまま色は消えていって、
優しくない自分だけが残っていた。
☆君を好きになった理由はわからない。
コーヒーをゆっくり飲み込んで、
君を好きになった理由を考えてみた。
だけど、理由なんて思いつかず、
iPhoneに表示されたタイムらいを指でなぞる。
胸のときめきは瓶詰めされた
キャンディを揺さぶるようにポップする。
普段の憂鬱は簡単に忘れてしまうくらい、
朝から浮かれすぎている。
君と話すと時間が溶けてるのは、なぜなの?
出会ったばかりなのに
懐かしいせつなさが眩しすぎるよ。
週末、君と合う約束はすでにされているよ。
そのときが来るまで待ち切れない。
コーヒーをもう一口飲み込んでも、
そわそわは終わらない。
☆君からのメッセージで勝手に熱を帯びる。
奥手な君を待ちきれなくなっている。
夏に君と知り合って、思いを寄せていることに
きっと、気づかれていなくて、
砂浜で二人で踊りたい気持ちは、今も抑えられない。
だけど、君との恋は進まず、
世界は変わらないままだ。
だから、たった今、
届いた君からのメッセージで、
合う約束をされたのは革命的な出来事で、
勝手にソーダ水のように透明な君との未来を想像して、
今、熱を帯びている。
☆砂浜で自分を取り戻すことを誓う。
雨が降るたびに書きが深まり、
そのたびに切なさが胸を占める。
今日も砂浜でビニール傘の下、
波と雨音をしっかりと聞き、頭の中を空にする。
酸素ボンベをつけて深海まで潜るペンギンのように、
毎日なんとか、やり過ごしているけど、
とっくに限界を超えていて、
小さいときの夢から、
かけ離れた今の自分が認められない。
ジェット機の轟音があたりを支配するけど、
真上を見ても冷たい灰色で、
早く、また炎天下になればいいのにって、
思いを込めて、左手を強く握った。
☆君との時間は溶ける。
巡る季節の中で君と手を繋いだまま、
変わらないやりとりを交わしている。
イチョウ並木は世界を黄色に染めて、
少しだけ寂しい公園は冬に進んでいる。
「来年もこのままがいいね」
君はポツリとそう言って、
無敵の笑みを浮かべるから、
僕は思わず照れくさくなった。
純度100%の幼い君と、
お揃いのコンバースで、
こうして歩けるのも残り僅かだから、
今日も結論を求めないで、くだらないことを
時空が溶けて歪むカフェで話そう。
☆日常は惰性で進む。
いつもの川沿いを今日も自転車で通り過ぎていく。
道沿いの並木は色づきが進んでいる。
冷えた空気で鼻先は冷たいし、
吐き出す息は白く、
黄色の朝日に溶けていく。
たまにこのままでいいのかって、
自分に憂鬱で心に膜が纏わりつく。
だけど、休むのは許されないから、
惰性で気持ちを抑え、耐え抜くんだ。
空飛ぶザトウクジラに手を振るように、
軽くなる経験を今日も待っている。
☆君と逃避行。
夜の中、君と手を繋ぎ走っている。
流れる街灯は流星みたいに白く、
住宅街は心臓が止まったように静かだ。
踏切が前触れもなく、けたたましく鳴り、
遮断器の前で急に走るのをやめる。
君は弱く息切れして、そっと微笑む。
「終わる世界から逃げるみたいだったね」
と君がそっと言ったから、
不意だから、少し照れくさくなった。
レールは細く光を反射し、
光源が轟音を立てて近づく。
君と手を繋いだまま、
目の前を通過する黒い貨物列車を見送る。
君のあどけなさで、そっと包んでほしい。
踏切が鳴り止んだら、君に伝えよう。
君が好きだってことを。
この瞬間、強くなった気がした。
☆大嫌いな君を紛らわす。
秋が通り過ぎていく感覚の中で、
公園の並木道の下を自転車で通り抜けていく。
おろしたての白いセーターは、
思った以上に暖かくて、
朝を切り裂けたから、少しだけ安堵する。
大嫌いな君の言葉が胸に刺さったままだよ。
絶望と闇を早く溶かしてほしい。
大好きなロックを口ずさむけど、
気持ちは沈んだままで、
君は言葉の影響力を理解したほうがいい。
悲しみはブロックの彼方へ、
銀河連合体に出会うように、
価値観を勝手に決めつけないよ。
とりあえず駅まで自転車を飛ばし、日常を始めるよ。
つらいことはそうやって、紛れさせるんだ。
【初出】
1~3章
完全書き下ろし
4章
蜃気羊X(@shinkiyoh)
https://twitter.com/shinkiyoh
2022.10.1~10.26