翌日、登校すると十島が席にきた。
 父親の顔が頭に浮かび、思わず緊張する。
「どうだった?」
「どうって……。ああ、芦川か。そういえば、まだ返事がないな」
 横浜で夕食をともにしたとき、隙があれば携帯をいじっていた。圭太からのメッセージに気づいていないとは考えにくい。
 十島からは、次のホームルームではみんなに話したい、とすがるような目を向けられてしまった。
 果たして、催促に意味はあるだろうか。そもそも、どうして返信をしないのだろう。
 授業中、送ったメッセージをもう一度確認する。要件は完璧に伝わっているはずだ。
 いや――。完璧とは圭太の価値観においてだ。
 しばらく考え、もう一度送った。冒頭に一文、「先日は夕食をありがとう」とつけて。
 そして、五秒後に、返事が届いた。
「こっちはもう夏休みだから、ずっとスタジオにいる。十五分とかそれくらいなら、いつでも時間は取れると思う」
 相手の態度にあきれるのと同時にほっとして、顔を上げると、目の前で教師の目が光っていた。