ふたりでごそごそとバッグの中身を探る。
「せーの、はい!」
声を揃えてプレゼントを贈り合った。
侑希からのプレゼントは有名メーカーのワイヤレスイヤホンだ。
「こんな高いのもらっていいのか?」
「値段のこと言うなよ。俺は誕生日にもプレゼントもらったしさ。ほらこれ、俺と同じものの色違い。欲しいって言ってたじゃん」
「……サンキュ……ああ、なんか俺の、恥ずかしい。超ガキくさい」
皓斗はワイヤレスイヤホンを大事に手で包みながら、目をつむってプレゼント選択を恥ずかしんだ。
侑希はそんな皓斗にかまうことなく、カサカサと音を立てながら包みを開いていく。
「……ハンカチと、文房具?」
中身を取り出したようで、侑希がプレゼントの内容を声にしたので瞼を開ける。
侑希は大きな目をぱちくりと開けているが、嫌そうな顔はしていない。
「うん。本当はリングとか憧れだけど、やっぱ自分で稼げるようになってから買いたいし。でも一年中侑希が身に着けてくれるものを考えたらこれかなって……」
ハンカチは侑希のイメージのブランドのハンカチを三枚。毎日どれかは侑希のポケットに入っていられる。
文房具は皓斗と同じペンケースに、シャープペンと定規。毎日侑希が手で握ってくれる。
「ガキっぽい……、よな?」
侑希がどんぐり目のままじっとつめてくるので尻込みしながら言うと、侑希はクスクスッと笑って、最後には吹き出した。
「やっぱ皓斗、斜め上すぎる、サイコー。なるほどね。確かにずっと使うね。ん? ペンケースの中にも、一本シャーペン入ってる?」
「うん。それ、さ、中学から俺が使ってるやつ。それがメインだったりして……」
皓斗が少し身を縮めてちらりと侑希を見ると、侑希はすぐに察したようだ。
「……これって、皓斗の身代わり、的な?」
「正解! って、やっぱ引くよな……」
大雨に濡れた犬のようにしょんぼりしてしまうが、侑希は屈託なく笑ってくれた。
「まあ、もう最初から距離感バグってるし、今さらだよ。ありがと」
続いて、皓斗が使ってきたシャープペンシルの両端を指で持って、優しい笑みを浮かべる。
「すごく嬉しい……そうだ、今度俺のペンも渡そっか」
――すごく嬉しい、だって! 俺の身代わりを押し付けられてるってわかってて嬉しい、って!
それも、「俺のペンもくれるとまで言ってくれた。
胸のつっかえが取れたような気持ちになり、皓斗は侑希の前で両手を広げる。
「侑希、抱きついていい!?」
ワンワンワン。皓斗犬は期待の目をご主人様に向ける。ご主人様はクスっと笑って、いいよ、と頷いた。
「侑希ぃ~~」
気を遣ってやんわりとは抱き締めるが、グリグリと頭をすり付ける。ビーグルになった気分で。
「くすぐったい、くすぐったいって皓斗」
これも功を奏したらしい。侑希はアハハハと弾んだ声で笑って、頭をワシャワシャとかき混ぜてくれる。
そのままふたりで重なって、ソファに倒れ込んだ。
「……キスもしたいのですが」
殊勝におねだりすると、少しの間はあったが、侑希は答えてくれる。
「……あんまり、強いのと長いのは禁……んんっ!」
侑希の言葉半分でもOKだとわかった途端、皓斗は侑希の唇をぱくっと食べる。
侑希は一瞬身体を硬くしたが、逃げずに受け入れてくれた。
――好きだ。侑希が好きだ。
思いが唇を動かす。
薄いけれど柔らかい侑希の唇を何度も啄む。
舌を入れるのは許してもらえていないから、何回も何回も啄んだ。禁止だと釘を刺されたのに、今日のキスはいつもより長くしてしまう。
「は、んんっ……」
そうすると息継ぎができなかったらしく、侑希の唇が結びを解いた。
空間が生じたそこに、皓斗は無意識のうちに舌を差し込んでしまう。
「ん、ん、んっ」
侑希は皓斗の服を掴んでいた手を離し、手のひらを広げて腕を叩いてきた。体格差がある皓斗が上に乗っているので力では押し返せないらしく、足もバタバタさせる。
「……あっ、俺」
我にかえり、皓斗はキスを止めて上体を起こした。謝ろうと侑希を見ると、苦し気に息を切らして涙目になっている。
――やってしまった!
「あの、俺、ごめん。つい、可愛くて。侑希が好きで、それで」
情けない。今までなにに対しても余裕でやってきて、こんなふうに焦ったことなんかないのに、皓斗は侑希の前では今までの自分じゃなくなってしまう。
「……可愛いって言うな」
「え」
「俺は男だ。可愛いとか言うな」
怒るところはそこなのか。身勝手なキスをしたことを怒られると思ったのに、拗ねたように言ってきたのは、侑希にとってのコンプレックスの部分だ。
「ごめん……俺にとっての可愛いは好きと同義語で。あの、それよりキス……怒ってない?」
親指で侑希の目の端の涙を拭いた。侑希は反射的に目を閉じて、反対の目から零れた一粒の涙は自分で拭った。
「……クリスマスだし、特別。俺も、皓斗を……可愛いと思うから」
「……へ……?」
皓斗は自分は「可愛いは好き」と伝えたが、侑希の発言の意味はすぐにわからなくてぽけっとしてしまう。
「皓斗も可愛いから、今日は、許す」
侑希の手が伸びてくる。皓斗の前髪をわしゃわしゃわしゃとかき混ぜて、皓斗が目を閉じてしまうと、頬を包んで唇を当ててくれる。
「……侑希~~!」
大大大、大感激だ。
――可愛いイコール好き。侑希は俺を好きで、今夜はキスを許してくれる、ってこと!
皓斗は今度は苦しくさせないように、注意を払いながら優しく優しくキスをした。
その後はなんと、侑希は一緒のベッドで眠るのまで叶えてくれて、抱きしめて眠るのはさすがに却下だったけれど、隣同士で手を繋いで眠った。
穏やかな寝息を立てる侑希の手の甲にキスをしながら、皓斗はつぶやく。
「好きだ。侑希が心から好きだ」
何度言っても物足りない。こんなに他人を求めたことなんかない。ずっとずっと一緒にいたい。絶対に失いたくない。
だから聖夜に誓った。
――俺は侑希を守る存在になる。絶対に怖がらせたり傷つけたりしない。
「せーの、はい!」
声を揃えてプレゼントを贈り合った。
侑希からのプレゼントは有名メーカーのワイヤレスイヤホンだ。
「こんな高いのもらっていいのか?」
「値段のこと言うなよ。俺は誕生日にもプレゼントもらったしさ。ほらこれ、俺と同じものの色違い。欲しいって言ってたじゃん」
「……サンキュ……ああ、なんか俺の、恥ずかしい。超ガキくさい」
皓斗はワイヤレスイヤホンを大事に手で包みながら、目をつむってプレゼント選択を恥ずかしんだ。
侑希はそんな皓斗にかまうことなく、カサカサと音を立てながら包みを開いていく。
「……ハンカチと、文房具?」
中身を取り出したようで、侑希がプレゼントの内容を声にしたので瞼を開ける。
侑希は大きな目をぱちくりと開けているが、嫌そうな顔はしていない。
「うん。本当はリングとか憧れだけど、やっぱ自分で稼げるようになってから買いたいし。でも一年中侑希が身に着けてくれるものを考えたらこれかなって……」
ハンカチは侑希のイメージのブランドのハンカチを三枚。毎日どれかは侑希のポケットに入っていられる。
文房具は皓斗と同じペンケースに、シャープペンと定規。毎日侑希が手で握ってくれる。
「ガキっぽい……、よな?」
侑希がどんぐり目のままじっとつめてくるので尻込みしながら言うと、侑希はクスクスッと笑って、最後には吹き出した。
「やっぱ皓斗、斜め上すぎる、サイコー。なるほどね。確かにずっと使うね。ん? ペンケースの中にも、一本シャーペン入ってる?」
「うん。それ、さ、中学から俺が使ってるやつ。それがメインだったりして……」
皓斗が少し身を縮めてちらりと侑希を見ると、侑希はすぐに察したようだ。
「……これって、皓斗の身代わり、的な?」
「正解! って、やっぱ引くよな……」
大雨に濡れた犬のようにしょんぼりしてしまうが、侑希は屈託なく笑ってくれた。
「まあ、もう最初から距離感バグってるし、今さらだよ。ありがと」
続いて、皓斗が使ってきたシャープペンシルの両端を指で持って、優しい笑みを浮かべる。
「すごく嬉しい……そうだ、今度俺のペンも渡そっか」
――すごく嬉しい、だって! 俺の身代わりを押し付けられてるってわかってて嬉しい、って!
それも、「俺のペンもくれるとまで言ってくれた。
胸のつっかえが取れたような気持ちになり、皓斗は侑希の前で両手を広げる。
「侑希、抱きついていい!?」
ワンワンワン。皓斗犬は期待の目をご主人様に向ける。ご主人様はクスっと笑って、いいよ、と頷いた。
「侑希ぃ~~」
気を遣ってやんわりとは抱き締めるが、グリグリと頭をすり付ける。ビーグルになった気分で。
「くすぐったい、くすぐったいって皓斗」
これも功を奏したらしい。侑希はアハハハと弾んだ声で笑って、頭をワシャワシャとかき混ぜてくれる。
そのままふたりで重なって、ソファに倒れ込んだ。
「……キスもしたいのですが」
殊勝におねだりすると、少しの間はあったが、侑希は答えてくれる。
「……あんまり、強いのと長いのは禁……んんっ!」
侑希の言葉半分でもOKだとわかった途端、皓斗は侑希の唇をぱくっと食べる。
侑希は一瞬身体を硬くしたが、逃げずに受け入れてくれた。
――好きだ。侑希が好きだ。
思いが唇を動かす。
薄いけれど柔らかい侑希の唇を何度も啄む。
舌を入れるのは許してもらえていないから、何回も何回も啄んだ。禁止だと釘を刺されたのに、今日のキスはいつもより長くしてしまう。
「は、んんっ……」
そうすると息継ぎができなかったらしく、侑希の唇が結びを解いた。
空間が生じたそこに、皓斗は無意識のうちに舌を差し込んでしまう。
「ん、ん、んっ」
侑希は皓斗の服を掴んでいた手を離し、手のひらを広げて腕を叩いてきた。体格差がある皓斗が上に乗っているので力では押し返せないらしく、足もバタバタさせる。
「……あっ、俺」
我にかえり、皓斗はキスを止めて上体を起こした。謝ろうと侑希を見ると、苦し気に息を切らして涙目になっている。
――やってしまった!
「あの、俺、ごめん。つい、可愛くて。侑希が好きで、それで」
情けない。今までなにに対しても余裕でやってきて、こんなふうに焦ったことなんかないのに、皓斗は侑希の前では今までの自分じゃなくなってしまう。
「……可愛いって言うな」
「え」
「俺は男だ。可愛いとか言うな」
怒るところはそこなのか。身勝手なキスをしたことを怒られると思ったのに、拗ねたように言ってきたのは、侑希にとってのコンプレックスの部分だ。
「ごめん……俺にとっての可愛いは好きと同義語で。あの、それよりキス……怒ってない?」
親指で侑希の目の端の涙を拭いた。侑希は反射的に目を閉じて、反対の目から零れた一粒の涙は自分で拭った。
「……クリスマスだし、特別。俺も、皓斗を……可愛いと思うから」
「……へ……?」
皓斗は自分は「可愛いは好き」と伝えたが、侑希の発言の意味はすぐにわからなくてぽけっとしてしまう。
「皓斗も可愛いから、今日は、許す」
侑希の手が伸びてくる。皓斗の前髪をわしゃわしゃわしゃとかき混ぜて、皓斗が目を閉じてしまうと、頬を包んで唇を当ててくれる。
「……侑希~~!」
大大大、大感激だ。
――可愛いイコール好き。侑希は俺を好きで、今夜はキスを許してくれる、ってこと!
皓斗は今度は苦しくさせないように、注意を払いながら優しく優しくキスをした。
その後はなんと、侑希は一緒のベッドで眠るのまで叶えてくれて、抱きしめて眠るのはさすがに却下だったけれど、隣同士で手を繋いで眠った。
穏やかな寝息を立てる侑希の手の甲にキスをしながら、皓斗はつぶやく。
「好きだ。侑希が心から好きだ」
何度言っても物足りない。こんなに他人を求めたことなんかない。ずっとずっと一緒にいたい。絶対に失いたくない。
だから聖夜に誓った。
――俺は侑希を守る存在になる。絶対に怖がらせたり傷つけたりしない。