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「さて、全グループ休憩に入ったようだな。ここまでの経過報告だが——今田くん、何かあるかい?」

『温泉旅館はまや』の三階会議室で、人事部の長、岩崎優希が今田に問いかける。Dグループを担当していた今田は「はい」と立ち上がる。

「高学歴の学生が集まっているからか、なかなかに白熱した議論を繰り広げています。昨日から何か話が進むかと不安でしたが、今日、具体的に犯罪者だと思う人間を言い合う場面がありました」

「ほう、それはいいね。頭の良さは諸刃の剣でもあるからな。確かDグループには()もいるんだったね?」

「はい、そうです。珍しい課題で混乱している様子ですが、前向きに議論していますよ。彼の表の一面が、少しずつ剥がれているような気がしますが」

「はは、そうか。それは逆にいいことじゃないか。この課題では、いかに人間の根っこの部分を引き摺り出すかが重要だからね。ちょっと心配だったけど、大丈夫そうだね。引き続き審査を頼むよ」

「承知しました」

 優希は今田から他の人事部のメンバーへと視線を移す。それぞれのグループに経過報告をしてもらい、その場はお開きとなった。
 今回のインターンは、参加する学生を選ぶのにかなり労力を費やしている。なんて言ったって、過去に犯罪を犯したことのある学生を六人も捕まえる必要があったのだから。だが、優秀な部下たちのおかげで、無事に学生たちを集めることができたと思っている。このインターンで必ず優秀(・・)な人材を獲得する。そのためにかけた時間とお金だった。

「さて、どうなるかな」

 明日の議論が終われば、特別選考に進むことのできる優秀な学生が決まる。

 優希はすでに楽しみで仕方がなかった。