「豆腐ハンバーグ。眞由の作るやつ、美味しいから好き」


好きだと言われているのは豆腐ハンバーグだ、そんなことはわかっている。わかっていても、胸がきゅんと甘く疼く。


「景くん好きだよね、豆腐ハンバーグ」

「うん。ふわふわしてて食べやすい」

「わかった」


笑顔で頷いて、奥野は先ほど食べそこなったプチトマトをようやく口に入れる。


「今日のご飯は、焼きうどんがいい」


突然聞こえてきたリクエストに、奥野は「ん?」と若菜の方を向く。


「今日おばさんいない日だっけ?」

「夜勤。父さんは昨日から出張。眞由にもお土産買ってくるって言ってた」


そっか、と答えながら、奥野は必死で今朝見た冷蔵庫の中身を思い出す。
うどんは買ったばかりだからあるのは確実で、確かキャベツと豚肉も使いかけのものがあった気がする。人参はなかったように思うが、その代わり玉葱ときのこが数種類あるので、まあなんとかなるだろう。