「でも、そう落ち込むなよ奥野!お前だって可愛い顔してんだし、年上のお姉さんとかにモテると思うぞ」

「ありがとう……」


よくわからない慰めを貰ってまた苦笑していると、クラスメイトがノートを写し終えたようで「ふぇーい、終わったー!」と声を上げながら両手を上げた。


「ありがと奥野!助かったわ」

「どういたしまして」

「これ、お礼の気持ち」


そう言ってにかっと笑ったクラスメイトは、閉じたノートの上に飴を一つ置いた。


「なんかあったらまた頼む!」


くるっと前に向き直ったクラスメイトは、時計で休み時間の残りを確認すると、さっと席を立って賑やかな友人の輪の中に飛び込んでいく。
残された奥野は、ノートの上の飴を手に取って眺めた。
奥野にとって若菜は、一つ年上の先輩で、物心ついたころから一緒にいる幼馴染み……――それと同時に、初恋の人でもあった。